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           ◇接 触◇
 
   接触
       [1] 触る・触れる  
       [2] 擦る・擦れる  
       [3] 掻く  
       [4] 当たる・ぶつかる  
 
     二つのものが接触した状態で動く/動かすこと。
    接触が点的な「掻く」と、面で接触する「なでる、擦る、こする」などがある。
    「さわる」はどちらもある。
    かすかに接触する、あるいは接触しそうになることを「かする、かすめる」で表す。
    「なする」は、別の目的のために面を接触させること。
    「当たる・当てる」「ぶつかる・ぶつける」は、強い勢いで接触することを表す。
   
   
  
 [1] 触る・触れる

   触る      接触する タッチする  
      触れる
      なでる    なであげる なでおろす なでつける なでまわす
      いじる    いたずらする
      接する

[2] 擦る・擦れる

   擦る      すり下ろす すり替える 擦り切る 擦り切れる すり込む すりつける  
          すりつぶす すり取る 擦り抜ける すり減らす すり減る すりむく
          すりむける すり寄る
      擦れる    擦れ合う すれ違う
      こする   こすり合わせる こすり落とす こすりつける  なすりつける
      こすれる   こすれあう
      さする
      かする  かすめる

[3] 掻く

  掻く     掻き上げる 掻き集める 掻き合わせる 掻き消える 掻き切る 掻き消す 
          掻き込む 掻き出す 掻き立てる 掻き鳴らす 掻き退ける 掻き混ぜる
          掻き回す 掻き乱す 掻きむしる 掻き寄せる 掻き分ける
          かいくぐる  かっさらう かっ飛ばす かっ払う 引っかく 引っかき回す

[4] 当たる・ぶつかる

   当たる  当たり散らす  突き当たる  
          衝突する 直撃する 直面する 追突する 的中する 当選する ヒットする
          命中する 八つ当たりする
      当てる  打ち当てる 押し当てる 引き当てる    たたきつける
      ぶつかる
      ぶつける
      あてがう
 

[1]触る・触れる
                                                               
◇さわる
 「触る」は、体の一部、特に手や指を他のものに軽くつけること。対象をニ格で示すのが一般的だ
が、ヲ格も可。意志的な動作。
   人・動物ガ 人・ものニ/ヲ (ものデ) さわる
    顔・足・雪・土に触る
    箱の内側をさわってみた
 体の一部がガ格に来る場合は、無意志的な動作。
  (人の)ものガ ものニ さわる
    穴の中で手が何かに触った
 逆に、ものがガ格に来る用法もある。「ふれる」のほうが一般的。
   ものガ 人(のもの)ニ さわる 
    こたつの中で何かが私の足に触った
 「接触」以外の用法で、「悪い影響を与える」意味の「さわる」がある。
   ものガ ものニ さわる
    飲み過ぎが健康に障る    
◇ふれる
 「触れる」は、「触る」と同じ用法では、やや文章語的。
   人ガ ものニ (手ヲ/デ) ふれる
    彼女の髪に手を/で 触れる
   ものガ ものニ ふれる 
    彼女の手が私の髪に触れる
 「さわる」とは違って、抽象的なものを対象としてとることができる。
   人ガ ものニ ふれる
    旅行で 土地の文化・人の心に触れる
 接触以外の用法として、「法律・規則を破る」という意味になる。
   人・ものガ ものニ ふれる
    行動が法律に触れる
 また、「そのことに言及する・関係を持つ」などの意味でも使われる。
    授業で少し触れる   核心に触れる質問
・複合動詞「ふれあう」は、互いに触れること。
◇なでる
 「なでる」は、軽くさわって手を動かすこと。
   人ガ ものヲ なでる
    子供の頭をなでる  テーブルの表面をなでる
・複合動詞
 「なで上げる」は、上のほうへなでること。
 「なで下ろす」は、下の方へなでること。「胸をなで下ろす」は、安心したことを表す。
 「なでつける」は、なでて押しつけること。特に、乱れた髪を手やくしで押さえて整えること。
 「なで回す」は、手を回すようにしてなでること。あちこちをなでること。
◇いじる
 「いじる」は、(特に目的もなく)手で触ったり、なで回したりすること。ひゆ的に、しっかりした
目的・方針もなく、制度や機構に部分的な(重要でない)改変を加えること。興味のためだけに、もの
を調べたり使ってみたりすること。
   人ガ ものヲ いじる
    手でオモチャをいじる  楽器をいじる  会長が会則をいじりたがる
・スル動詞
 「接触する」は、近づいて触れること。ふれあうこと。ひゆ的に、他人と交渉を持つこと。
 「タッチする」は、手で軽く触れること。ひゆ的に、そのことに関与すること。
 「いたずらする」は、遊びの気持ちでいじったり、からかうつもりで悪いことをすること。
◇せっする
 「接する」は、二つのものが(重なり合わず、また、間をおかず)隣り合い、ついていること。ひゆ
的に、何らかの関係を持つこと。


さわる(触る・障る)五(さわらない・さわります・さわって・さわれば・さわろう)
[1]〔人ガ 人・ものニ/ヲ〕
 △さわりかける  さわってみる  さわってしまう  さわってはいけない
  さわらないようにする  さわらせる  さわられる  さわるな! 
 △[ちょっと/軽く/強く/そっと/さっと/何度も/しつこく/らんぼうに/ぺたぺた]~。
 △[人のもの/スイッチ/作品(さくひん)]に~。
 ・ぬれた手で電気のコードなどに触るとあぶないですよ。
 ・このベンチはペンキをぬったばかりですから、触らないで下さい。
 ・展示品(てんじひん)に触らないように。
 ・そのかばんは私のです。人の物にかってに触らないで下さい。
 ・日にやけた背中(せなか)に触られると、とても痛(いた)い。
〔人のものガ〕
 ・穴の中を手で探ってみた。手の先が何かにさわった。
〔ものヲ〕
 ・手首(てくび)の内側(うちがわ)を触ってみた。脈(みゃく)を打っているのを感じた。
 ・箱(はこ)の中をあちこち触って、中に何もないことを確(たし)かめた。
[2]〔ものガ 人・ものニ〕
 ・電灯をつけようとスイッチをさがしていたら、何か柔らかいものが手に触った。
 ・そんなに勉強ばかりしていると、体に障りますよ。(=体によくない)
 ・私をてつだってくれるのはうれしいが、あなたのしごとにさわる(=じゃまになる)といけない。
 ・私の言ったことが気に障ったら(=あなたをいやな気持ちにさせたら)、どうか許して下さい。
 ・家のへいにスプレーでいたずら書きをされた。まったくしゃくに障る。(=ふゆかいだ)

<スル動詞>
[接触(せっしょく)する]  人・ものガ 人・ものト
 ・棒の先が何かと接触したようだった。
 ・病人と接触した人も必ず隔離して下さい。
 ・狭い道ですれ違うときに、対向車と接触してしまった。
   抽象的な例を
[タッチする]  人ガ ものニ
 ・町内駅伝では、たすきは使わず、次の走者にタッチ(を)するだけでいいことになった。
 ・そのパネルにタッチ(を)してください。ソフトが作動します。
 
ふれる(触れる)一(ふれない・ふれます・ふれて・ふれれば・ふれよう)
[1]〔人ガ 人・ものニ (ものヲ/デ)〕
 △ふれそうだ  ふれてみる  ふれてしまう  ふれてはいけない  ふれないようにする
  ふれさせる  ふれられる  ふれるな! 
 △[ちょっと/軽く/強く/そっと/さっと/何度も/繰り返し/うっかり]~。
 △[人のもの/スイッチ/作品(さくひん)/ピアノ/彼女の髪(かみ)/ねこのひげ]に~。
 ・展示会(てんじかい)では作品に手を触れないでください。
  ・彼女の髪にそっと手を触れた。それが恋の始まりだった。
 ・手を伸ばして、花びらに触れた。花びらは冷たかった。
 ・手のひらで赤ん坊の頭に触れてみた。とても柔(やわ)らかく、暖(あたた)かかった。
[2]〔人ガ ものニ〕
 ・世界を旅(たび)して、いろいろな文化・風俗(ふうぞく)に触れることができたのはよかった。
 ・この村を訪(たず)ねてみて、人の心の優(やさ)しさに触れた思いがする。
 ・ボランティア活動を通じて、社会の厳(きび)しい現実の一端(いったん)に触れることができた。
 ・先生は、現在問題になっていることにも授業で触れてくださった。
 ・最後に、試験の内容にも一言(ひとこと)触れておきましょう。
  ・今回のエッセイでは、政治問題だけでなく文化にも少し触れた。
  ・話の中でその事件(じけん)にも触れ、実際にその時代に生きていた人間としての意見を述べた。
[3]〔ものガ ものニ〕
 ・寝返(ねが)りを打った赤ん坊の手が私の頬(ほお)に触れ、小さな暖かみが伝わってきた。
  ・彼女の手が私の肩(かた)にそっと触れた。
 ・そよ風に揺(ゆ)れるカーテンが花瓶(かびん)の花に触れ、花びらが一枚はらりと落ちた。
 ・暗いトンネルの中を歩いていると、何かが私の髪に触れた。
  ・この研究は、問題の核心(かくしん)に触れる研究で、高く評価(ひょうか)されるべきものだ。
 ・記事は、この事件の関係者(かんけいしゃ)のその後についても触れている。
 ・面接(めんせつ)の質問は私的なことにも触れてきて、ちょっと不愉快(ふゆかい)だった。
 ・君がしたことは法律(ほうりつ)に触れる可能性があるから、以後(いご)注意するように。
 ・彼らは神の怒(いか)りに触れる罪(つみ)を犯(おか)した。罰(ばっ)せられるべきである。


なでる(撫でる)  一(なでない・なでます・なでて・なでれば・なでよう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △なでてほしい  なでてもらう  なでてはいけない  なでようとする  なでるな!
 △[そっと/優(やさ)しく/軽く/おずおずと/やわらかく/すっと]~。
  △[頭/髪(かみ)/背中(せかな)/腰(こし)/尻(しり)/柱(はしら)/机(つくえ)の上]を~。
  ・夫は、寝ている小さな娘(むすめ)の髪を何度もそっとなでていた。
 ・子供の頭をなでてやると、子供はにっこりした。
  ・猫をなでていると、猫も気持ちいいんだろうが、こっちも気持ちいい。
 ・彼の手が私の背中を優しくなでた。
  ・窓際(まどぎわ)によると、冷気(れいき)が私の顔をなでていった。
 ・満員(まんいん)の地下鉄(ちかてつ)でだれかが私のお尻をなでている。チカン!と思って下を見
  てみたら、小さな女の子が母親と間違えて手をつなごうとしているらしい。

<複合動詞:なで->          
[なであげる] 人ガ 人ものヲ
 ・課長があの少ない髪の毛をなで上げるのは、何度見てもいいものではない。
 ・電車の中でおしりをなで上げられた彼女が、その手に思いきり爪を立ててやったら、「ギャー!」
  という男の悲鳴が車内に響きわたったそうだ。いい気味だ。
   頭の毛・髪・顔・足・尻・肌を すうっと
[なでおろす] 人ガ ものヲ 
 ・無事だったという知らせを受けて、家族は胸をなでおろした。
 ・後ろの髪の毛が立っていたので、手に水を付けて何度かなで下ろした。
   顔・髪・腹を ひとまず・ほっと・やれやれと胸を 
[なでつける] 人ガ ものヲ 
 ・彼は水にちょっと手をぬらして、髪をなでつけた。
 ・座席に座ると、化粧道具を取りだして、眉をなでつけたり、描き加えたりし始めた。
   髪の毛・髪のほつれ・肌・まゆ・眉毛の先を 丁寧に 髪を後ろに
[なでまわす] 人ガ ものヲ 
 ・子供たちは子猫の体をなでまわした。
 ・医者に腹から脇をなでまわされてくすぐったかった。
   頭・顔・全身・手足を あちらこちらを 陶器・フロントガラス・表面を


いじる(弄る)  五(いじらない・いじります・いじって・いじれば・いじろう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △いじりたい  いじってみる  いじってはいけない  いじらないでおく  いじろうとする
  いじられる  いじるな!
 △[いろいろ/あちこち/ちょっと/いつも/つい/]~。
  △[おもちゃ/人形(にんぎょう)/楽器(がっき)/カメラ/器械(きかい)/文章(ぶんしょう)]~。
  ・子どもがオモチャをいじって遊んでいる。そのうち、分解(ぶんかい)したくなるんだよなあ。
 ・小さいころ、父が作ったプラモデルをいじっていて、壊(こわ)してしまったことがある。
 ・汚い手でいじるんじゃない! 
 ・あちこちのつまみをいじってみたが、テレビの画面(がめん)は元に戻らなかった。
 ・いろいろと楽器をいじるのが好きなんですが、どれも上手にならないうちにあきちゃうんです。
 ・ああいう人細(こま)かい性格の人が会長になると、会則(かいそく)をいじりたがるので困る。

<スル動詞>
[いたずら(悪戯)する]  人ガ ものヲ/ニ   
  ・子供が時計をいたずらしてこわしてしまった。
  ・せっかく育てた花を近所の猫にいたずらされて、ダメにされてしまった。
〔ものニ〕
 ・おじいちゃんの盆栽にいたずら(を)すると怒られるよ。


せっする(接する)  サ変(せっしない・せっします・せっして・せっすれば・せっしよう)
[1]〔ものガ ものト/ニ (ものヲ)〕
 ・フランスはドイツと国境(こっきょう)を接している。
 ・客が互(たが)いにひざを接するほどの込みようだった。
 ・マックがケンタッキーと軒(のき)を接して建っている。
 ・我が家(わがや)の土地(とち)は、南と北で二本の道路に接している。
 ・線分(せんぶん)ABに接し、点Oを中心とする円を描(か)きなさい。
[2]〔人ガ ものヲ ものト/ニ〕
 ・本棚(ほんだな)を壁(かべ)に接して置いたので、その後ろが掃除(そうじ)できない。
 ・二人はひたいを接するようにして語り合っていた。(ひたいをひたいと)
 ・若い恋人(こいびと)がほおを接してむつみ合っている。
[3]〔人ガ 人ト/ニ〕
 △せっしたい  せっしてみる  せっしたほうがいい  せっしようとする  せっしろ!
 △[ほんの少し/じっくりと/じかに/親しく/たまたま/長い期間/一時期(いちじき)]~。
 ・彼女と親しく接する機会(きかい)が持ててよかった。
 ・若い時は、多くの人と接して、その中でさまざまなことを学ぶとよいと思う。
 ・第一に、客に接する態度(たいど)が大事(だいじ)だ。
[4]〔人ガ ものニ〕
 △[文化/風習(ふうしゅう)/名作/名画/知らせ/急報(きゅうほう)/訃報(ふほう)]に~。
  ・さまざまな文化に接したことのある人は、偏見(へんけん)が少ない。
 ・親が音楽好きだったので、若い時に数々(かずかず)の名曲(めいきょく)に接する機会があった。
 ・突然(とつぜん)、親(した)しい友人(ゆうじん)の訃報に接し、ことばを失った。
  ・若いころ、先生の謦咳(けいがい)に接する幸運(こううん)に恵(めぐ)まれました。

[2]する・すれる こする・こすれる
 「こする」が日常的なことば。「する(擦る)」は、複合動詞が多いが、単独では用法の範囲が狭い。
  自他の対がある。人の意志的な動作と、もの自体の動きを表す。
 相互的なト格と、方向性のあるニ格がある。相互的な複合動詞「~合う」をとるものが多い。

◇する
 「擦る」は、ものを他のものの表面に押し当て、表面に沿って何度も動かすことことによって、
ものをけずったり、つぶしたり、変化させること。
   人ガ ものヲ する
    ツメをヤスリで擦る
 ひゆ的な用法で、金をギャンブルなどで失うことをいう。
    競馬でボーナスをする
  慣用句で「ゴマをする」は、偉い人にお世辞を言うことを表す。
・複合動詞:「すり-」の形のものが多い。「擦る/こする」意味のものがほとんどだが、「掏る」の
意味で「とる」ことを表すものがある。
 「すり下ろす」は、野菜などをすっておろすこと。すりつぶすこと。
 「すり切る」は、こすって切ること。金を使い果たすこと。
 「すり切れる」は、こすれて切れたり、減ったりすること。
 「すり込む」は、こすって中に入れること。ある紙面に印刷すること。
 「すりつける」は、こするようにつけること。
 「すりつぶす」は、擦って細かく砕くこと。財産などを下手に使ってなくしてしまうこと。
 「すり抜ける」は、狭い空間をまわりに触れそうになりながら通り抜けること。ひゆ的に、困った
  状況をうまくごまかしてのがれること。
 「すり減らす」は、こすって小さくすること。ひゆ的に、心身を疲れさせること。
 「すり減る」は、こすれて形が小さくなること。ひゆ的に、苦労で心身が疲れてしまうこと。
 「すりむく」は、物に強くこすって外皮を剥くこと。
 「すりむける」は、物に強くこすれて外皮が剥けること。
 「すり寄る」は、体が擦れ合うほど近くに寄ること。
 「すり替える」は、人に気づかれずに、あるものを別の(悪い)ものに取り替えること。
 「すり取る」は、人の物を掏って取ること。
◇すれる
 「擦れる」は、ものが他のものとこすれることによって、表面が荒くなったりすること。
     ものガ すれる
     靴が合わなくて、かかとが擦れる
 ひゆ的に、人の性格が世間慣れして悪くなることを言う。
・複合動詞
 「すれ合う」は、ものとものが互いにこすれること。
 「すれ違う」は、互いに擦れ合うほど近くを通り過ぎること。また、時間がずれて一つの場所で会
  えないこと。ひゆ的に、議論で互いの論点がかみ合わないこと。    
◇こする
 「こする」は、ものを他のものの表面に押し当て、表面に沿って何度も動かすこと。「する」とほ
ぼ同じだが、日常的によく使われる。
   人ガ ものヲ こする
    タオルで体をこする
・複合動詞
 「こすり合わせる」は、ものとものを互いにこすること。
 「こすりつける」は、こすって他のものにつけること。また、強くこすること。
 「こすり落とす」は、こすって(なにかについているものを)落とすこと。
 「なすりつける」は、こするようにして(どろなどを)つけること。ひゆ的に、(自分の)責任や罪を
  人に負わせること。
◇こすれる
 「こすれる」は、ものとものがこすった状態になること。漢字表記は「擦れる」で、「すれる」と
区別がつかない。
   ものガ ものニ こすれる
    セーターのひじがこすれる    かかとが靴にこすれていたい
・複合動詞
 「こすれ合う」は、ものが他のものと互いにこすれる状態になること。
◇スル動詞
 「摩擦する」は、擦れ合うこと。こすり合わせること。
◇さする
 「さする」は、痛みをなくしたりするために(手で)軽くこすること。漢字表記は「擦る」で、「す
る」と区別がつかない。
    人ガ ものヲ  さする
    痛いひざをさする
◇かする
 「かする」は、かすかにふれて、さっと通り過ぎること。
      ものガ ものヲ かする
    ボールが頬をかすった
◇かすめる
 「かすめる」は、もう少しでふれるほど近くを通りすぎること。ひゆ的に、何かの思いが心に一瞬
現れること。また、人のすきを見て、ものをとったり、何か悪いことをすること。 
   ものガ ものヲ かすめる
    ツバメが目の前をかすめて飛んでいった


する(擦る)  五(すらない・すります・すって・すれば・すろう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △すってみる  すっておく  すってしまう  すってはいけない  すれない 
  すらないようにする  すらせる  すろうとする  すれ!  するな!
 △[少し/軽く/力を入れて/シュッと/ごりごりと/すっかり/全部]~。
  △[マッチ/つめ/ごま/みそ/墨(すみ)/金/財産(ざいさん)]を~。
  ・暗いへやの中でマッチを擦って、あたりを見回した。
 ・ゴマをする時の香(こう)ばしい香(かお)りは何とも言えない。
 ・墨(すみ)で字を書く前に、ゆっくりと墨をすって気持ちを整(ととの)える。
 ・つめを切って、ヤスリで軽く擦っておいた。
 ・競馬(けいば)でボーナスをすっかりすってしまった、という話をよく聞く。バカだねえ。
 ・父は株(かぶ)で財産をすってしまったため、小説を書き始めたのだが、これで金持ちになった。
 ・同僚(どうりょう)が上司(じょうし)にゴマをすっているのを聞くのはたまらなくいやだが、そう
  しないと出世(しゅっせ)しないのだろうか。

<複合動詞:すり->
[すりおろす]  人ガ ものヲ
 ・サンマとすり下ろした大根の組み合わせは最高だね。
 ・そこの山芋、すり下ろしておいてくれない?
[すりかえる] 人ガ ものヲ ものト
 ・手品師は誰にも気づかれないようにうまくカードをすりかえた。
 ・彼は、一瞬のうちに、本物と偽物をすりかえた。
   薬・手紙・報告・問題・本質・論理・名を 偽物と 涙を笑いに 見事に
[すりきる]  人ガ ものヲ
 ・糸ヤスリで鉄格子を擦り切って脱獄した。
   小学館:ロープを岩で擦り切る 明鏡:ヤスリで鎖を 身代を
[すりきれる] ものガ
 ・いつもすり切れた服を着ているあの人は、実はすごい学者だそうだ。
 ・こんな会社に長く勤めていると、心の大事な部分がすりきれてしまいそうだ。
   糸・衣類・絨毯・ズボン・ひも・軸・毛・生命・思考能力・神経・意志が
[すりこむ] 人ガ 人・ものニ ものヲ
 ・かさかさになった肌にクリームをたっぷり擦り込んだ。
 ・あの団体は若者に危険な思想を刷り込もうとしている。              
   クリーム・香水・軟膏・にんにく・塗り薬・レモンの汁を 肌に
[すりつける] 人ガ ものヲ ものニ
 ・家に帰ると、犬が私のズボンに鼻をすりつけた。何かにおうらしい。
 ・子供は顔を母親の胸に擦りつけながら、泣きじゃくった。
   頭・顔・体・唇・鼻・額・頬を 塩・吸い殻・マッチの火を 畳・床・胸に
[すりつぶす] 人ガ ものヲ 
 ・ゴマをすり鉢ですりつぶすと、いい匂いがあたりに広がった。
   胡麻・ジャガイモ・梅干し・魚・葉・豆・身を
[すりとる] 人ガ ものヲ 
 ・刑事の手帳をすり取るとは、おまえは大胆な男だ。
 ・駅で誰かとぶつかったとき、財布をすりとられたらしい。
   金・財布・懐中物を
[すりぬける]  人ガ ものヲ
 ・群衆の間をすり抜けて、演壇のすぐ下まで行くと、演説している彼の顔がよく見えた。
 ・のら猫は私と建物の間の狭い空間をすり抜けて、すばやく逃げていった。
 ・役人が収賄の容疑で警察に調べられたが、何とか追及をすり抜けて起訴されなかった。
   足元・網・生け垣・茨・後ろ・傍ら・危機・渋滞・狭い空間・そば・谷間・縄・窓を
   危ういところを 巧妙に 小走りに すばやく なんとか ぬらりくらりと 追及を
[すりへらす] 人ガ ものヲ 
 ・神経をすり減らすような現代社会の競争を抜け出したい。
 ・刑事が靴の底をすり減らして調べ上げた事実の前に、男は罪を認めざるをえなかった。
   かかと・角・靴の底・生命・寿命・身心・精神を 仕事・人間関係に神経を
[すりへる]  ものガ
 ・毎日歩き回っていると、靴の底がすり減ってきた。
 ・細かい作業を何時間も続けていると、神経がすり減ってしまい、大声で叫びたくなる。
   かかと・下駄・タイヤ・歯ブラシ・命・感覚・気力・神経・魂・母性本能が
[すりむく] 人ガ ものヲ 
 ・幼児が転んでひざをすりむいた。
 ・自転車でスピードを出して派手に転び、ももから脇腹のあたりをひどくすりむいた。
   足・くるぶし・ひざ・膝頭・ひじ・指先を はでに
[すりむける] ものガ
 ・転んですりむけたひざにばんそうこうを貼った。
 ・久しぶりに木に登ったら手の皮がすりむけた。
   手の皮・肌・鼻の頭・ひざ・皮膚が
[すりよる] 人ガ 人ニ
 ・会場を出ると、週刊誌の記者が彼女にすり寄って来た。
 ・部屋に入ると、飼い猫が足にすり寄ってきて、ニャアと鳴いた。
      権力に 猫が主人に べったり 相手に~ていく 猫なで声で


すれる(擦れる)  一(すれない・すれます・すれて・すれれば)
[1]〔ものガ〕
 △すれそうだ  すれてしまう  すれないようにする
 △[少し/すっかり/ひどく/いつも]~。
  △[ひじ/靴下(くつした)/ズボンの裾(すそ)/性格(せいかく)]が~。
 ・靴(くつ)が合わないらしく、かかとが擦れて痛い。
 ・セーターのひじが擦れて穴(あな)が空きそうだ。
  ・カーペットの中央が擦れてしまって、色が薄れている。
  ・こんな業界に長くいると、性格がすれてしまっていけない。

<複合動詞:すれ->          
[すれあう] ものガ ものト 
 ・ガラスとガラスが擦れ合ってキーッといういやな音がした。
 ・部品をグラインダーに押し付けると、互いに擦れ合って火花が出た。
[すれちがう] 人・ものガ 人・ものト 
 ・対向車とすれ違ったとき、何かが光ったような気がした。
 ・さっき入り口ですれ違った男がいたろう? あれが妹の亭主だよ。
 ・夫婦の話というのは、どうもすれ違ってしまうことが多く、誤解の種になる。
   車・男女・列車・心・話が 道路・横・通りを 道・廊下で 女性と 対向車と


こする(擦る)五(こすらない・こすります・こすって・こすれば・こすろう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △こすりすぎる  こすってほしい  こすってもらう  こすってはいけない
  こすったほうがいい  こすらないようにする  こすられる  こするな!
 △[かるく/ゆっくり/強く/ごしごし/乱暴(らんぼう)に/何度も/いたいほど]~。
 △[目/手/足/腕(うで)]を~。手と手を~。
 ・子どもがねむそうに手で目をこすっている。
 ・汚(よご)れた手で目をこすらないほうがいいよ。
 ・さむいので手をこすってあたためた。
 ・乾(かわ)いたタオルで体中(からだじゅう)をこすった。
 ・インクがかわかないうちに手でこすって、書類(しょるい)をよごしてしまった。
 ・かみやすり(=サンドペーパー)でかるくこすって、壁(かべ)についたよごれをおとした。
 ・傷口(きずぐち)をこすらないように気をつけなさい。
 ・子どもがズボンの泥(どろ)を電車の座席(ざせき)にこすって落とした。
 ・この円の中をコインでこすってください。
  ・古びたランプを3回こすると、中から妖精(ようせい)が現れた。

<複合動詞:こすり->
[こすりあわせる] 人ガ ものヲ ものト
 ・手がつめたいので、手と手をこすりあわせてあたためた。
 ・この二つのものをこすり合わせると、静電気が起きる。
 ・ふとんの中で(足と)足をこすり合わせて暖めた。
[こすりおとす] 人ガ ものヲ ものカラ
 ・壁の汚れを乾いたぞうきんでこすり落とした。
 ・このサンドペーパーで機械のさびをこすりおとしてください。
[こすりつける] 人ガ ものヲ ものニ 
 ・子犬がうれしそうに体をこすり付けてきた。
 ・山道でころんでズボンについたどろを帰りの電車で、シートにこすりつけた。
<複合動詞:その他>
[なすりつける] 人ガ ものヲ 人・ものニ
 ・中学生がズボンの泥をバスの座席になすりつけていた。
 ・大臣は罪を部下になすりつけて、自分の地位を守った。


こすれる(擦れる)一(こすれない・こすれます・こすれて・こすれれば)
[1]〔ものガ〕
 ・本の表紙(ひょうし)がこすれていたんで来た。
 ・足のゆびがこすれて、皮(かわ)がむけた。
 ・セーターのひじがこすれて、穴(あな)があいた。
[2]〔ものガ ものト〕
 ・タイヤが路面(ろめん)とこすれて、キキーッとするどい音がした。
 ・運転士が急ブレーキをかけると、電車の車輪(しゃりん)がレールとこすれて、火花(ひばな)がち
  った。
<複合動詞:こすれ->
[こすれあう] ものガ ものト 
 ・強い風で木の枝がこすれあい、ぎしぎしと音を立てた。
 ・ガラスとガラスがこすれあって、いやなおとがする。
 ・物がこすれ合うと静電気が発生することがありますね。

    
  
さする(擦る)  五(さすらない・さすます・さすって・さすれば・さすろう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △さすりたい  さすってみる  さすらないほうがいい  さすろうとする  さするな!
 △[そっと/やさしく/軽く/くり返し/何度も/強く/ごしごしと]~。
  △[足/足腰(あしこし)/腕(うで)/からだ/首のあたり/ひざ/胸(むね)]を~。
  ・背中(せなか)が痛くなったので、さすったりもんだりしてもらったらよくなった。
 ・ベンチに腰かけたおばあさんがしきりにひざをさすっていた。
  ・歩いていると急に腰が痛くなり、立ち止まってさすっていたら楽になった。年は取りたくないも
  のだ。
     

かする(掠る)  五(かすらない・かすります・かすって・かすれば)
[1]〔ものガ ものヲ〕
 △かすりそうになる  かすっていく  かすらないようにする  かすらせる
 △[かすかに/わずかに/少し/さっと/すっと/何度も]~。
  △[弾(たま)が肩(かた)を/球(たま)がバットを/飛行機(ひこうき)が林の上を]~。
 ・相手の出したこぶしが私の顔をかすったが、私は相手の腹(はら)にこぶしをたたき込んだ。
  ・ツバメが私の頭の上をかするように飛んでいった。おいおい、気をつけろよ。
 ・打球(だきゅう)は外野手(がいやしゅ)のグラブをかすって客席(きゃくせき)に飛び込んだ。逆転
  (ぎゃくてん)ホームランだ。
  ・戦場(せんじょう)で、弾丸(だんがん)がほとんど私の肩をかすって飛んでいったことがある。ち
  ょっと間違えれば、あの時死んでいたのかもしれない。

かすめる(掠める)  五(かすめない・かすめます・かすめて・かすめれば)
[1]〔ものガ ものヲ〕
 △かすめそうになる  かすめていく  かすめないようにする  
 △[さっと/すっと/あやうく/すれすれに/ぎりぎり]~。
  △[弾(たま)/弾丸(だんがん)/飛行機(ひこうき)/ボール]が~。
  [頭上(ずじょう)/視野(しや)/鼻先(はなさき)/耳/屋根(やね)/森の上]を~。
  [疑(うたがい)い/不安(ふあん)/予感(よかん)/疑惑(ぎわく)/後悔(こうかい)]が~。
  ・グラウンドの横を通っていたら、野球(やきゅう)のボールが目の前をかすめて飛んでいった。「す
  みませーん」という野球部員(ぶいん)の声が聞こえた。あぶない、あぶない。
 ・ツバメが家の軒(のき)をかすめて飛び去った。
 ・大型ジェット機が高層(こうそう)ビルの上をかすめるようにして空港(くうこう)に着陸(ちゃく
  りく)した。
 ・ドアを開けようとした時、黒い影(かげ)が視野の隅(すみ)をかすめて消えた。
  ・この金を持って逃(に)げようかという考えが、チラッと頭をかすめたが、あわてて打ち消した。
  ・その時、「この人は信用(しんよう)できるのか?」という疑いが胸の奥(おく)をかすめた。
[2]〔人ガ (人・所カラ) ものヲ〕
  △かすめてしまう  かすめてはいけない  かすめさせる  かすめようとする
 △[さっと/ひそかに/こっそり/大胆(だいたん)に/ごっそり]~。
  ・泥棒(どろぼう)は金庫(きんこ)にあった金をかすめて逃げ去った。
 ・今回逮捕(たいほ)された窃盗団(せっとうだん)は、資産家(しさんか)の家から貴金属(ききんぞ
  く)をかすめ、闇市場(やみいちば)で売りさばいていた。

[3]掻く

◇かく
 「掻く」は、ものに手の指先や何か先のとがったものを当て、(強く)動かすこと。そうすることで、
ものを払いのけたり寄せ集めたりすること。
   人・ものガ ものヲ (ものデ) 掻く
    かゆくて頭を掻く   背中を孫の手で掻く 
    おぼれそうになって水を掻く  シャベルで雪を掻く(取り除く)
    氷を掻いて食べる  オールで水を掻く
 慣用的な表現がある。
    汗・いびき・べそ・恥・欲・あぐらを かく
      裏をかく  寝首をかく
・複合動詞:「かき-」のものが多い。音変化して「かい-」「かっ-」の形のものがある。「細いも
のを使って」という意味と、「勢いよく、強く」という意味合いをつけるものが多い。
 「掻き上げる」は、垂れた髪をくしの代わりに手の指を使って上に上げること。
 「掻き集める」は、あちこちから(短い時間で)集めること。
 「掻き合わせる」は、手で寄せ合わせること。
 「掻き消える」は、瞬間的に、全部消えてしまうこと。
 「掻き切る」は、掻くようにして(勢いよく)切ること。
 「掻き消す」は、急に(強く)消すこと。ひゆ的に、精神的なことについても言う。
 「掻き込む」は、手元にかき集めること。急いで食べること。
 「掻き出す」は、手などで掻くようにして外に出すこと。
 「掻き立てる」は、勢いよくかき混ぜること。炭火をつついて火勢を強めること。ひゆ的に、強い
    刺激を与えて、その気持ちを起こさせること。
 「掻き鳴らす」は、弦楽器をつめで掻くようにして弾くこと。
 「掻き退ける」は、手などで押したり払ったして、そこからのけること。
 「掻き混ぜる」は、手や道具を動かして、中のものを混ぜること。
 「掻き回す」は、手や道具を使って中のものを回し動かすこと。また、ごちゃごちゃにすること。
  ひゆ的に、会議や団体の秩序を乱すことを言う。
 「掻き乱す」は、ごちゃごちゃにかき混ぜ、混乱させること。ひゆ的に、抽象的なことにも言う。
 「掻きむしる」は、ひっかいてむしること。むやみに掻くこと。
 「掻き寄せる」は、手などで掻いてある所へ寄せること。
 「掻き分ける」は、手で左右へ分けるようにして、道を開くこと。
 「かいくぐる」は、すばやく(身軽く)くぐること。
 「かっさらう」は、人のすきを見て横からさっと奪い取ること。
 「かっ飛ばす」は、(バットで打って)打球を遠くまで飛ばすこと。
 「かっ払う」は、油断・すきをねらって、人の持ち物を盗み去ること。 
 「引っ掻く」は、爪などで強くかいて傷を付けること。
 「引っかき回す」は、「かき回す」の強調表現。


かく(掻く)五(かかない・かきます・かいて・かけば・かこう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △かいてみる  かいてしまう  かいてはいけない  かいてもらう  かかないようにする
  かかせる  かかれる  かけ!  かくな! 
 △[ちょっと/軽く/強く/そっと/何度も/繰り返し/うっかり]~。
 △[頭(あたま)/おなか/腹(はら)/背中(せなか)/足]を~。
 ・赤ん坊がおなかを掻いている。かゆいのかな?
 ・蚊に刺された所がかゆくて、つい掻いてしまう。
 ・腫(は)れた所は掻かないほうがいいよ。もっと悪くなっちゃうかもしれないから。
 ・背中を掻くのに、孫の手(まごのて)って便利だよねえ。だれが考え出したんだろう。
 ・お前ねえ、洗っていない頭を掻くなよ。ふけが落ちるだろ。
 △[水/雪(ゆき)/波(なみ)/氷(こおり)]を~。
 ・オールでゆっくり水を掻いて、ボートで湖(みずうみ)の上を滑(すべ)るように進んでいった。
 ・暑い夏は、氷をかいて、シロップをかけて、、、これが最高だね。
 ・庭の落ち葉(おちば)を熊手(くまで)で掻いて、集めて燃(も)やして、ついでにイモを焼いて、、、
  秋だねえ。
 ・今のうちに玄関(げんかん)の前の雪を掻いておかないと、通れなくなっちゃうね。
 △[汗(あせ)/冷(ひ)や汗/いびき/べそ/恥(はじ)/裏(うら)]を~。
  ・運動をして汗をかくのは健康(けんこう)にいいけれど、上司(じょうし)に怒(おこ)られて冷や汗
  をかくのは、精神(せいしん)の健康によくないねえ。
  ・年をとっていびきを掻くようになったらしい。妻(つま)がそう言うのだけれど、自分では聞こえ
  ないからわからない。
  ・恥をかかないようにと思っていると、大したことはできない。若い時は、どんどん恥をかいてい
  いのだ。私のように、年をとっても恥をかき続けるのは、まあ、考え物だが。
  ・スポーツの試合は常にだましあいだ。いかに相手の裏を掻くか、それで勝負(しょうぶ)が決まる。

<複合動詞:かき->          
[かきあげる] 人ガ ものヲ
 ・前髪を細い指でかき上げる仕草がたまらなくいい。
 ・「これはね、、、」と老先生は見事な白髪を掻き上げながら説明を始めた。
   後れ毛・髪・髪の毛・白髪・長髪・頭髪・ほつれ毛・前髪を 指先で 無造作に
[かきあつめる] 人ガ ものヲ
 ・家中の金をかき集めて、何とか借金を返した。
 ・辺りに散らばっている落ち葉をかき集めて、たき火をしよう。
   アルバイト・落ち葉・学生・金・現金・ごみ・力・人数・破片・雪を
[かきあわせる] 人ガ ものヲ
 ・父が部屋に入ってくると、姉はあわてて浴衣の前を掻き合わせた。
 ・成人式の写真を撮る前に襟元をちょっとかき合わせた。
   襟・襟元・着物の裾・胸元・胸を  浴衣・寝間着の前を
[かききえる] 人ガ ものニ ものヲ
 ・舞台の上のマジシャンの姿が、一瞬にしてかき消えた。
   消息・姿・笑いが 一瞬にして すっと ふいと まったく
[かききる] 人ガ ものヲ
 ・刀で自分ののどをかき切り、自殺したようだ。
 ・切腹とは、刀で自分の腹を横にかききるのである。
   首・血管・のどを  腹を一文字に
[かきけす] 人・ものガ 
 ・後ろ姿が、かき消すように見えなくなった。
 ・彼女の声は雨の音にかき消されて彼には届かなかった。
   イメージ・嫌な予感・思い・面影・悲しみ・期待・心配・姿・不安を 雨に~れる
[かきこむ] 人ガ ものニ ものヲ
 ・朝寝坊をしてしまい、朝飯を掻き込んで急いでうちを出た。
 ・昼休みが残り少なくなり、弁当をあわただしく掻き込んで午後の仕事にとりかかった。
   朝飯・お茶漬け・ごはん・雑炊・冷や飯・弁当・飯を あたふたと あわただしく
[かきだす] 人ガ ものヲ
 ・穴の中から土を掻き出した。
 ・箱の中の砂を掻きだし、底にあった宝物を見つけた。
   落ち葉・カニ・果肉・木の葉・砂・土・灰・水・雪を
[かきたてる] 人・ものガ ものヲ
 ・黒い雲と強い風が彼の不安をかきたてた。
 ・ライバルの活躍を見ると、闘志をかきたてられる。
   愛情・イメージ・意欲・関心・気持ち・競争心・興味・空想・好奇心・嫉妬心・情熱・世論・
   憎悪・想像力・闘争心・憎しみ・表現欲・不安・炎・夢・欲望を
[かきならす](掻き鳴らす・均す) 人ガ ものヲ    
 ・彼は激しくギターを掻き鳴らし、その音楽に合わせて彼女が踊った。
 ・大勢の奏者が三味線をかき鳴らす様は壮観だった。
   糸・音楽・楽器・ギター・弦・三味線・竪琴を
 ・土を掻き均し、野菜の種をまいた。
 ・火鉢の灰を掻き均しながら、ぼんやり物思いに耽っていた。
   砂・たんぼ・土・灰を
[かきのける] 人ガ 人・ものヲ
 ・人を掻き除けて最前列に出てみると、今まさにパレードが始まったところだった。
 ・深く積もった雪を掻きのけながら、道なき道を進んだ。
   包み紙・屏風・炎・水引・雪・夢を
[かきまぜる] 人ガ ものヲ
 ・溶かしたバターを入れて、よくかき混ぜてください。
 ・卵をはしでよくかき混ぜた。
 ・マージャンが回りにうるさいのは牌をかき混ぜるからだが、あれをしないと気分が出ない。
   落ち葉・記憶の底・空気・クリーム・全体・卵・土・鍋の中・牌・表面を
[かきまわす] 人ガ ものヲ
 ・ボウルに卵とミルクを入れたら、よくかき回してください。
 ・彼はいつも会議をかき回すようなことを言う。
   家の中・粉・汁・卵・秩序・戸棚・泥水・鍋・灰・牌・箱の中・話・湯を
[かきみだす] 人ガ ものヲ
 ・せっかくまとまっているチームをかき乱すようなことを言わないでください。
 ・私の静かな生活をかき乱さないでほしい。
 ・隣から聞こえてくる騒ぎ声に気持ちをかき乱され、イライラしていた。
   男心・感情・気分・気持ち・空気・心・静かさ・生活・精神状態・雰囲気・平和・胸を
   乱暴に むちゃくちゃに
[かきむしる] 人ガ ものヲ
 ・「ああー、わかんねえー!」受験勉強中の兄が頭をかきむしった。
 ・弟はアレルギーがあって、体に合わない物を食べると、体中をかきむしることがある。
   頭・頭の毛・髪・髪の毛・体・首筋・畳・土・手・腹・胸を 爪で
[かきよせる] 人ガ ものヲ
 ・外に出ると冷たい空気が首筋に入り込み、思わずコートの襟をかき寄せた。
 ・砂場で子供が砂をかき寄せ、小山を作ろうとしている。
   襟・髪・空気・小皿のネギ・砂・荷物・ほこり・胸の辺りを
[かきわける] 人ガ ものヲ
 ・草むらをかき分けて、小動物の巣を探した。
 ・バーゲンセールの人混みをかき分けて、狙っていたものを手に入れた。
   間・朝靄・生け垣・茨・衣類・枝・髪・空気・草・群集・雑草・乗客・砂・のれん・人・人垣
   ・人込み・人だかり・人波・幕・水・やぶ・雪・夜の闇を 手で
[かいくぐる] 人ガ ものヲ  
 ・戦場の銃弾の雨をかいくぐって生き延びてきたんだ。こんなところで死ねるか。
 ・法の網をかいくぐって悪事を働く連中を一網打尽にしようという計画だ。
      足元・網の目・枝・銃弾の雨・火の海・炎の下を 巧みに 法・取り締まりの網を
[かっさらう] 人ガ ものヲ
 ・空き巣が部屋に入って、手当たり次第にその辺りのものをかっさらっていったようだ。
 ・ある日若い男が家に来て、私の娘をかっさらっていった。今頃は後悔しているだろう。母親によ
  く似た娘だから。
   衣類・金・掌中の玉・上客を 手当たり次第に
[かっとばす] 人ガ ものヲ
 ・キャプテンは我々の期待通り、満塁ホームランをかっ飛ばした。
 ・かっ飛ばせ! かっ飛ばせ! へなちょこピッチャー、打ちのめせ! 
[かっぱらう] 人ガ ものヲ
 ・近所のガキが店先のリンゴをかっぱらおうと狙っている。そうはさせるか。
 ・ショーウインドーをのぞき込んでいた女のハンドバッグを見事かっぱらってやった。
   売り物・小切手・大金・ハンドバッグを 手当たり次第に 根こそぎ
<複合動詞:-かく>          
[ひっかく] 人ガ ものヲ
 ・壁を釘で引っ掻いて何か書いてある。なになに...「これを読んだ奴はアホ」アホ!
 ・かゆくても傷口を引っ掻いてはいけませんよ。
   顔・首筋・胸・尻・ガラス・壁・ドア・表面・傷を 爪で がりがりと 釘で
[ひっかきまわす] 人ガ ものヲ
・旅行している間に空き巣に入られ、部屋中引っかき回されていた。
・押し入れの中を引っかき回したが、隠したはずのへそくりが出てこない。どこだ?
  箱の中・荷物・部屋中・家・そこらじゅう・頭の中・胸を 気持を 乱暴に 

[4]当たる・ぶつかる
 「当たる・当てる」は用法が広く、抽象的な事柄にも使われる。ただし、「人ガ 人ニ 当たる」と
いうことは少なく、その場合は多く「ぶつかる」が使われる。「ぶつかる・ぶつける」は、具体的な
現象・動作が中心で、ことばや感情に関する用法がある。
 
◇あたる
 「当たる」は、あるもの・人が動いて、他のもの・人に強く接触し、影響を与えること。
   もの・人ガ もの・人ニ 当たる
       投げた球が人に当たる  日が当たる部屋  窓に雨が当たる音  矢が的に当たる  
 逆に、影響を受ける側をガ格にすることができる。身体に異状が出る場合もある。
    飛んできた球に当たる  日に当たってやける  雨に当たると気持ちがいい
       フグ・暑さ・生水に 当たる
 ひゆ的に、ねらったとおり、望んだとおりの結果になること。ニ格は必要ない。
    ねらい・予想・ヤマが 当たる    天気予報が当たる
    宝くじ・一等賞が 当たる   (演劇などで)出し物が当たる 
 積極的に影響を受けようとする場合も言う。また、ひゆ的に、ある任務をすることをいう。
   人ガ ものニ 当たる 
    ストーブに当たる  外の風に当たる   警戒・交渉・説得・指導に あたる
 よい結果を得る場合。すでに述べたように「ものガ」の形でも言える。
    くじ・抽選に 当たる  
 情報を得るために何かを調べたり、人に尋ねたりすることを言う。
   人ガ 人・ものニ 当たる
    辞書に当たる  原文に当たる  関係者に当たる
 人に対して、厳しい態度をとること。不満などを人に向ける。形容詞の「-く」の形もとる。
    いらいらして家族に当たる  人につらく当たる
 スポーツの大会などで、対戦相手となること。ニ格だけでなく、ト格もとれる。
     人ガ 人ト あたる
    準決勝で強敵に/と 当たる 
 何かに対応する関係にあることを表す。
    「you」に当たる日本語  ここは湖の北に当たる  罪・失礼に 当たる行為
    あの人は私の大叔父に当たる
 解釈・批判などが正しい、正当であることを表す。「-ている」の形、または否定で使われる。
    君の解釈は当たっているね      その非難は当たらない
 「~に当たって」の形で、ある特別な状況の際に、という意味を表す。
    出発・実施に 当たって
・複合動詞
 「当たり散らす」は、いらいらした気持ちを、それに責任のないまわりの人に向けて出すこと。
 「突き当たる」は、強い勢いでぶつかること。先をさえぎられてまっすぐ行けなくなること。
・スル動詞
 「衝突する」は、もの・人がもの・人と強くぶつかって、何らかの大きな問題が起こること。
 「直撃する」は、爆弾などが直接に当たること。台風がその地域に来ることも言う。
 「追突する」は、乗り物が前のものに後ろから衝突すること。
 「的中する」は、矢や弾が的に当たること。予想・予言などがその通りになること。
 「命中する」は、矢や弾が目標に当たること。
 「直面する」は、困難な問題・事態に出会って、逃げられないこと。
 「当選する」は、選挙で選ばれること。くじで当たること。
 「ヒットする」は、歌などが人気を得ること。検索で該当すること。
 「八つ当たりする」は、いらいらして、関係のない人にまで当たり散らすこと。
◇あてる
 「当てる」は、「当たる」に対応する他動詞で、人がものを動かし、他のもの・人に強く接触させ、
影響を与えること。
    人ガ ものヲ 人・ものニ 当てる
    ボールを人・壁に 当てる  矢を的に当てる  傷口に手・ガーゼを 当てる
    ブラシ・アイロンを 当てる
 「日に当てる・風に当てる」は、影響を受ける側をヲ格にすることができる。ただし、「×日・風
に ものを当てる」の順では言えない。
    ふとんを日に当てる(ふとんに日を当てる)  着物を風に当てる
 ひゆ的に、ある役割、用途のために人・ものを使うこと。
    人ガ 人・ものヲ 人・ものニ 当てる
    主役に新人をあてる(新人に主役を)    敵の主将に新人を当てる(対戦させる)
    (教室で)先生が学生を当てる(答えさせる)
    その金を急場の用にあてる  予算の二割を教育にあてる
    適当な漢字を当てて使う
 ひゆ的に、ねらった通りの結果を得ること。ニ格はとらない。
       くじを当てる  クイズの答えを当てる  株・新製品で 当てる(もうける)
  郵便物・メールなどをそこへ向けて出す。
    本社にあてて荷物を送る  だれに宛てたメールか
 受身の形で、「仲のいいところを見せつけられる」という意味を表す。
    新婚夫婦にすっかり当てられる
 慣用表現で「目も当てられない」がある。
・複合動詞:「当てる」の意味が生きているのは「-あてる」の形のもので、「あて-」の形のもの
は、別の意味合いになる。    
 「打ち当てる」は、(強く)当てること。 
 「押し当てる」は、押しつけるように強く当てること。 
 「引き当てる」は、くじを引いて運良く当てること。別のものと比べること。
 「あてこする」「あてこむ」「あてつける」「あてはまる」「あてはめる」では、「当てる」の意味は
非常に薄れている。それぞれ後ろの動詞の項参照。
 「たたきつける」は、強く叩くこと。強く投げつけること。雨が強く降ることも言う。
◇ぶつかる
  「ぶつかる」は、激しく当たって、強い力を受けたり与えたりすること。対象としてニ格またはト
格をとる。
   人・ものガ 人・ものニ/ト ぶつかる
       走ってきた人とぶつかる  タクシーがバスに/と ぶつかる
    カバンが机の角にぶつかった  
 抽象的な主体・対象にも言う。
    難問・謎に ぶつかる  理想が現実とぶつかる     調査が壁にぶつかる
    スケジュールがぶつかる  ラッシュ・通勤時間に ぶつかる
 意見などが対立すること。
    意見・主張が ぶつかる   結婚の問題で父とぶつかった
◇ぶつける
  「ぶつける」は、「ぶつかる」に対応する他動詞で、人・ものにものを強く当てること。
     人ガ 人・ものニ ものヲ ぶつける
       人に石をぶつける  頭をドアにぶつける  ガードレールに車をぶつける
 ことばや感情についても言う。
    不満・怒り・意見・疑問を ぶつける
 「対戦させる・相手をさせる」という意味では「人ヲ」をとる。
   人ガ 人ニ 人ヲ ぶつける
    (選挙で)相手の党首に新人候補をぶつける
◇あてがう
 「宛う」は、あるものを他のものにぴったりと当てること。また、ものを(適当に)与えること。
   人ガ 人・ものニ ものヲ あてがう
       受話器を耳にあてがう  子どもに絵本をあてがう


あたる(当たる) 五(あたらない・あたります・あたって・あたれば・あたろう)
[1]〔ものガ もの・人ニ〕
 △あたりそうだ  あたりたい  あたってみる  あたってしまう  あたってはいけない
  あたるべきだ  あたらなければならない  あたらせる  あたられる  あたろうとする
  あたれ!  あたるな!  あたれない  
 △[つよく/かるく/ひどく/思いきり/ちょっと/はげしく/力いっぱい]~。
  [ドンと/ゴンと/コンと/バシッと/パシッと/ボカッと/ゴツンと]~。
 △[光(ひかり)/日(ひ)/日光(にっこう)/西日(にしび)/石/ボール/風(かぜ)]が~。
  [ボールがまどに/雨が顔(かお)に/日光がビルの壁(かべ)に/朝の日がへやいっぱいに]~。
 ・ボールが頭(あたま)に当たって、バッターがたおれた。
 ・子どもが投げた石が当たって、まどガラスがわれた。
 ・ラケットがボールに当たるまで、よくボールを見なさい。
 ・矢(や)は的(まと)のまん中をはずれ、下のほうに当たった。
 ・落ちてきた木の実(み)が頭に当たり、ちょっと痛(いた)かった。
 ・戦争(せんそう)の時、父はおなかに弾(たま)が当たって死にそうになったそうだ。
 ・日の当たっている所はあついが、日かげ(日の当たっていない所)はすずしい。
 ・これは日が直接(ちょくせつ)当たる所におかないでください。
 ・ここは北風(きたかぜ)がじかに当たるからとても寒(さむ)い。(ここに北風が)
 ・せっかく咲(さ)いた花が、雨に当たって散(ち)ってしまった。
  ・本棚(ほんだな)の本に日が当たって、表紙(ひょうし)の色が変わってしまう。(本が日に当たる)
 ・金属(きんぞく)は、潮風(しおかぜ)に当たって風化(ふうか)する。
 ・1万円でいいから、宝(たから)くじが当たらないかなあ。(くじが私に)
[2]〔人ガ ものニ〕
 △[風/火/日/日光(にっこう)/ストーブ]に~。
  [説得(せっとく)/交渉(こうしょう)/経営(けいえい)/指導(しどう)/問題解決(もんだいか
   いけつ)/消火(しょうか)/警戒(けいかい)]に~。
 ・気分が悪いので、外へ出て、つめたい風に当たって来ます。
 ・寒いのなら、もっとストーブのそばに来て、火に当たったらどうですか。
 ・みんなで相談(そうだん)しながら、学生の指導に当たっています。
 ・わたくしどもは誠実(せいじつ)をモットーに、経営に当たっております。
 ・あなたにQ社との話合いの任(にん)に当たってもらいたい。(=あなたが話合いの任に当たる) 
  (=その仕事(しごと)を担当(たんとう)する)
 ・「当たって砕(くだ)けろ。」(=むずかしい問題でも、こわがらないでやってみろ)
 △[くじ/当番(とうばん)]に~。
 ・姉は宝(たから)くじに当たって500万円ももらったそうだ。
 ・私は今週、そうじ当番に当たっているから、すぐには帰れない。
 ・私の好きな女優(じょゆう)が、こんどのドラマでは良い役(やく)に当たった。
 △[食べ物/毒(どく)/キノコ]に~。
 ・A:山田が休みだね。どうしたんだろう。
  B:夕食(ゆうしょく)に食べたさしみに当たったらしい。(さしみが当たった)
 △[遠い親戚(しんせき)/叔父(おじ)/いとこ]に~。
 ・あの男の人は、彼の遠い親戚に当たる人だそうだ。
 ・私の夫は、あの会長の娘(むすめ)の甥(おい)に当たるんだそうです。
 △[辞書(じしょ)/翻訳(ほんやく)の原本(げんぽん)]に~。
 ・わからないことばは、かならず辞書に当たって調べること。
 ・ここのところの翻訳がまちがっているのかもしれない。原本に当たってみよう。
[3]〔ものガ〕
 △[天気予報(てんきよほう)/予言(よげん)/予想(よそう)/カン/ねらい]が~。
  [ドラマ/歌(うた)/商売(しょうばい)]が~。
 ・きのうの天気予報は当たったけれど、今日はまったくはずれた。(今日の天気予報が)
 ・山中さんは、さいきん恋人(こいびと)ができたんですよ、きっと。私のカンはよく当たるんです。
 ・「当たらずといえども遠(とお)からず。」(=だいたい正しい)
 ・みんなの田中さんにたいする批判(ひはん)は当たっていない。
 ・A:とにかく、おくれた川口さんが悪い。
  B:いや、その非難(ひなん)は当たりません。川口さんはみんなのおべんとうを用意(ようい)して
   いたのですからね。
[4]〔もの・人ガ もの・人ト〕
 △[ボールがバットと/強い選手(せんしゅ)と/弱(よわ)そうなチームと]~。
 ・白い球(たま)は、右にころがって、赤い球と当たった。
 ・ラケットの、ボールと当たるところをよく見てください。
 ・きょうはなんとか勝(か)ったけど、次の試合(しあい)では有名な中原チームと当たる(=試合を
  する)らしい。負(ま)けそうだな。
 ・こんどは、もっと弱い相手(あいて)と当たるといいんだが。
 ・一回戦(いっかいせん)で、優勝候補(ゆうしょうこうほ)と当たることになった。

<複合動詞:あたり->
[あたりちらす] 人ガ 人ニ
 ・父は、仕事がうまく行かず、家族や犬に当りちらしている。
 ・部長に叱られてイライラし、自分の部下に当り散らすなんて、最低の課長だね。
<複合動詞:-あたる>
[つきあたる] 人・ものガ 人・ものニ 
 ・くらい部屋に入ったら、テーブルに突きあたった。
 ・あの角をまがって突きあたった所が中山さんの家です。
 ・財布がない。駅で人に突きあたられたが、あれがどうもスリだったらしい。
 ・自分の研究が壁に突きあたって、悩んでいます。
   頭・肩・道が 壁・屋根・海・川・限界・現実・障害物・ジレンマ・難問に
<スル動詞>
[衝突(しょうとつ)する]  人ガ ものニ
  ・スピードを出し過ぎた車が木に衝突(を)した。
 ・両国は、お互いの利害が衝突をし、あわや戦争というところまで行った。 
 〔ものガ ものト〕
  ・車がバスと衝突(を)した。
 ・私の考え方が会社の命令と衝突し、どちらを優先するかを決めなければならなかった。
[直撃(ちょくげき)する]  ものガ ものヲ
 ・相手のパンチがあごを直撃し、彼は床に倒れ伏した。
 ・台風がのどかな南国の島を直撃した。
[直面(ちょくめん)する]  人ガ ものニ
 ・日本は今、重大な危機に直面(を)している。
 ・近い将来に日本が直面(を)しそうな問題は何か。
   課題・危険・現実・困難・死・試練・難局・難題・難問・不幸・予想外の事態に
[追突(ついとつ)する]  ものガ ものニ
 ・居眠り運転の車が停車していたバスに追突(を)した。
 ・渋滞でのろのろ走ってまた止まったとき、後ろの車に追突(を)された。
[的中(てきちゅう)する]  ものガ
 ・見事にカンが的中した。競馬で十万円儲かった。
 ・地震の予報が的中し、被害を少なくすることができた。
[当選(とうせん)する]  人ガ ものニ
  ・妻が市会議員に当選(を)した。娘は生徒会長に当選(を)した。
  私は、宝くじに当選することを願っている。
 〔ものガ〕
 ・冗談で買った宝くじが当選(を)した。
[ヒットする]  ものガ
 ・最近ヒット(を)している歌は、歌詞の意味が分からないものが多い。
 ・アメリカでいちばんヒット(を)した日本の歌は、「上を向いて歩こう」だそうだ。
 ・ネットで検索すると、20件ヒットした。
 〔人・ものガ ものヲ〕
 ・チャンピオンのフックが見事に挑戦者のあごをヒットし、一発でノックアウトした。
[命中(めいちゅう)する]  ものガ ものニ
 ・矢が見事に的に命中(を)した。
 ・砲撃が敵の戦艦に命中(を)し、沈没させた。
[八つ当たり(やつあたり)する]  人ガ 人ニ     感情の「当たる」 
 ・お母さん、競馬で負けたからって、子供に八つ当たりしないで! 
 ・恋人に振られた兄に八つ当たりされた。いい迷惑だ。
   家族に 悔しまぎれに


あてる(当てる・充てる) 一(あてない・あてます・あてて・あてれば・あてよう) 
[1]〔人ガ ものニ ものヲ〕
 △あてたい  あててみる  あててしまう  あててはいけない  あてなければならない
  あてたほうがいい  あてさせる  あてられる  あてようとする  あてろ! あてるな!
 △[強く/軽(かる)く/しっかり/ぴったり/きちんと/そっと/やさしく]~。
 △[ボールを壁(かべ)に/馬(うま)にムチを/暗い所に光を/目にハンカチを/口に手を]~。
 ・どうすればうまくボールを(ラケットに)当てられるのだろうか。
 ・看護士(かんごし)さんが、血(ち)の出ている所にガーゼを当ててくれた。
 ・お母さんはお子どもの額(ひたい)に手を当てて、熱(ねつ)があるかどうか見た。
 ・箱(はこ)にものさしを当てて、大きさをはかりなさい。
 ・医者(いしゃ)は病人の胸(むね)に手を当てて、調べている。
 ・熱気(ねっき)でほてったほおに風を当てた。
 ・おばあさんは耳がよく聞こえないので、話す時は耳に口を当てて大きな声(こえ)を出さなくては
  ならない。
 ・おじいさんは耳が悪いらしい。話をきく時に、耳に手を当てている。
 ・胸(むね)に手を当ててよく思い出してみよう。
 ・フィルムに強い光を当てないように注意(ちゅうい)してください。
 ・部品(ぶひん)のキズを調べるので、わたしの手元(てもと)に光を当ててください。
 ・どうぞざぶとんをお当てください。(おしりに)
〔ものヲ ものニ〕
 △[ぬれた物を火に/古本を日に]~。
 ・てぶくろがぬれてしまった。ストーブの火に当ててかわかそう。
 ・毎週木よう日と土よう日の午後(ごご)をクラブの練習に当てています。
 ・家からおくってもらうお金だけでは足りないので、アルバイトをして、そのお金をへや代に充て
  ています。
 ・みんなで古新聞(ふるしんぶん)やあきビンを売ってクラブの活動費(かつどうひ)に充てました。
 ・通学時間を読書に充てています。
[3]〔人ガ 人・ものヲ〕
 △[答(こた)え/クイズ]を~。
 ・数学の授業(じゅぎょう)で急(きゅう)に当てられたので、答えられなかった。(先生が私を)
 ・山下はクイズの答えを五つ当てたが、私は二つしか当てられなかった。
〔人ガ 文か(ヲ)〕
 ・どちらかの手に十円だまが入っています。どちらの手に入っているか当ててください。
 ・あなたの血液型(けつえきがた)が何型か当ててみましょうか。
  ・あなたの方言(ほうげん)でしゃべってみてください。どこの県(けん)の出身(しゅっしん)か当て
  られると思いますよ。
 
<複合動詞:-あてる>
[うちあてる] 人ガ ものヲ ものニ
 ・体の大きな男が大声を上げ、頭を地面に打ち当てながら、泣いていた。
 ・大きな鉄の球をクレーンでつり下げ、壁に打ち当てて壁を打ちこわそうとしていた。
   石・体を  壁にボールを 右の拳を左の手のひらに
[おしあてる] 人ガ ものヲ ものニ
 ・耳に受話器を押し当てて、彼女の言葉を一言漏らさず聞こうとした。
 ・兄は赤く腫れた腕に濡らしたタオルを押し当て、痛みをじっと我慢していた。
   頭・腕・口・グラス・銃口・先端・聴診器・手ぬぐい・手のひら・鼻・両手を 耳に
[ひきあてる] 人ガ ものヲ 
 ・これからマッチでくじを作ります。この赤い頭のついているのを引き当てた人にこの映画のキッ
  プを上げます。
 ・商店街の宝くじで一等賞を引き当てた。
   当たりくじ・いい亭主・貧乏くじ・同じ番号を  我が身に~て考える
<複合動詞:あて->
 「あてこする」「あてこむ」「あてつける」「あてはまる」「あてはめる」では、「当てる」の意味は
 非常に薄れている。それぞれ後ろの動詞の項参照。
<複合動詞:その他>
[たたきつける] 人ガ ものニ ものヲ
 ・妻はゴキブリにスリッパを思い切りたたき付けた。こわかった。
 ・ちんぴらがかかってきたので、足を払って地面にたたき付けてやった。
 ・課長の机に辞表をたたき付ける、という夢を何度も見た。


ぶつかる  五(ぶつからない・ぶつかります・ぶつかって・ぶつかれば・ぶつかろう)
[1]〔人・ものガ 人・ものニ/ト〕
 △ぶつかりそうだ  ぶつかりかける  ぶつかってはいけない  ぶつからないようにする
  ぶつかろうとする  ぶつからせる  ぶつかられる  ぶつかれ!  ぶつかるな!
 △[軽(かる)く/強く/激(はげ)しく/ドシンと/ガツンと/がんがん/くり返し/何度も]~。
  △[体/足/頭(あたま)/肩(かた)/車/自転車(じてんしゃ)/意見(いけん)]が~。
  [壁(かべ)/岩(いわ)/木/いす/ドア/車/ガードレール/渋滞(じゅうたい)/工事]に~。
  [問題(もんだい)/難問(なんもん)/困難(こんなん)/現実(げんじつ)/抵抗(ていこう)]に~。
 ・自転車でついスピードを出しすぎ、ガードレールにぶつかってしまったことがある。 
 ・人混(ひとご)みで肩がぶつかり、けんかになってしまい、肩をけがをして病院に行った。
  ・スキーで滑(すべ)っていて、木にぶつかりそうになったことがある。怖かった。
 ・研究が大きな壁にぶつかってしまった。どうしていいかわからない。
 ・祖父(そふ)の遺産(いさん)の問題で伯父(おじ)や叔母(おば)が集まったのだが、まあ、欲(よく)
  と欲がぶつかって、大変だった。
 ・展覧会(てんらんかい)に朝早く行きたいのだが、通勤(つうきん)ラッシュにぶつかってしまうの
  はいやだ。
 ・人と議論(ぎろん)をして意見が激しくぶつかったとき、逃(に)げてはいけない。正面(しょうめ
  ん)から本気(ほんき)でぶつかれば、相手もその気持ちを感じて、ぶつかってくるだろう。
  ・実験(じっけん)の結果(けっか)を分析す(ぶんせき)るとき、予想外(よそうがい)の問題にぶつか
  る場合がある。それはまた、大発見(だいはっけん)のチャンスにぶつかるということでもある。


ぶつける 一(ぶつけない・ぶつけます・ぶつけて・ぶつければ・ぶつけよう)
[1]〔人ガ 人・ものニ ものヲ〕
 △ぶつけがちだ  ぶつけかねない  ぶつけてしまう  ぶつけてみる  ぶつけてはいけない
  ぶつけようとする  ぶつけられる  ぶつけさせる  ぶつけろ!  ぶつけるな!
 △[軽(かる)く/強く/激(はげ)しく/ゴツンと/ガンガン/何度も/力(ちから)いっぱい]~。
  △[体/足/頭(あたま)/肩(かた)/車/自転車(じてんしゃ)/疑問(ぎもん)/怒(いか)り]を~。
  [壁(かべ)/岩(いわ)/木/いす/ドア/机(つくえ)の角(かど)/本棚(ほんだな)]に~。
  ・体を思いきり相手(あいて)にぶつけたが、かんたんに跳(は)ね返された。
 ・車が大きくはねた時、頭を車の天井(てんじょう)にぶつけてしまった。 
 ・坂道(さかみち)で自転車のブレーキが壊(こわ)れ、止まっていた車にぶつけてしまった。
  ・大臣(だいじん)に予算(よさん)の根拠(こんきょ)について疑問をぶつけたが、うまくかわされた。
  ・このいらだちを誰(だれ)かにぶつけたいが、目の前のネコにぶつけてもなあ。
 ・学校のことで母に不満(ふまん)をぶつけても、真剣(しんけん)に相手してくれない。


あてがう(宛う)  五(あてがわない・あてがいます・あてがって・あてがえば・あてがおう)
[1]〔人ガ ものニ ものヲ〕
 △あてがっておく  あてがってくれる  あてがったほうがいい  あてがわれる  
 △[そっと/やさしく/軽(かる)く/ぴったり/慎重(しんちょう)に/適当(てきとう)に]~。
  △[タオル/布(ぬの)/おむつ/クッション/座布団(ざぶとん)/枕(まくら)]を~。
  [おもちゃ/絵本(えほん)/部屋(へや)/社宅(しゃたく)/仕事(しごと)/嫁(よめ)]を~。
  ・腰(こし)が痛いので、厚(あつ)いクッションをあてがっていすにそっと座(すわ)った。
 ・熱(ねつ)で熱(あつ)くなっているひたいに母が冷(つめ)たいぬれタオルを当てがってくれた。
 ・医者は傷口(きずぐち)に薬(くすり)を塗(ぬ)り、ガーゼを当てがった。
 ・今いそがしいから、子どもにはおもちゃでも当てがって、あそばせておこう。
 ・現地(げんち)に行ってみると、ここに住めと言って社員寮(しゃいんりょう)の一部屋(ひとへや)
  をあてがわれた。

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