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◇対物4◇

[18] さえぎる

   さえぎる  
   妨げる
   阻む   立ちはだかる 立ちふさがる 差し支える  邪魔する 阻止する

[19] その他

      すくう すくいあげる すくいとる  さらう  まくる  めくる  
      しくじる  そこなう  滞る  長引く  省く  省略する  抜粋する
   ともす  点火する  耕す  耕作する  捌く  裁く  さらす  ふるう 
   鍛える 鍛え上げる  研ぐ 研ぎ澄ます  射る 射とめる  狙う つけ狙う
   掏る 掏り取る  凝る  結う 結いあげる  扇ぐ  あしらう  しのぐ



[18]さえぎる
  物事が進むのをおさえるような行為・状態を表す動詞。物理的な動きから社会的な行動まで。
  ヲ格をとる他動詞だが、「-テイル」の形で状態を表す。

◇さえぎる
  「遮る」は、何かの途中でじゃまをして、移動を止めること。名詞節をとる。
   人・ものガ ものヲ/文ヲ さえぎる
        カーテンが日差しを遮っている  バリケードが道を遮る  係員に遮られる
    日光が入るのを遮る
◇さまたげる
  「妨げる」は、物事の進行をじゃまして、順調に行かないようにすること。名詞節をとる。
 「~の妨げになる」という形もよく使われる。
   人・ものガ ものヲ/文ヲ 妨げる
        ライバルが社長の再任を妨げる  騒音が安眠を妨げる  吹雪が前進を妨げた
    ウイルスが侵入するのを妨げる    騒音が安眠の妨げになる
◇はばむ
  「阻む」は、進もうとするもののじゃまをすること。やや書きことば。
   人・ものガ 人・ものヲ はばむ
        岸壁が行く手を阻む  社会の発展を阻む要因  
・複合動詞
  「立ちはだかる」は、両手両足を広げて、相手の行く手を遮るように立つこと。ひゆ的に、ものが
  前進を阻むように行く手にあること。
 「立ちふさがる」は、前に立って人の行く手を遮ること。
 「差し支える」は、あることを行うのに妨げになること。「~してもかまわない」の意で「~して
  差し支えない」の形が使われる。
・スル動詞
 「邪魔する」は、ものの存在が、何かが順調に進むことを止めようとすること。人が、他の人のす
  ることを順調に行かないようにすること。
 「阻止する」は、人のすることをじゃまして、させないようにすること。


さえぎる(遮る)  五(さえぎらない・さえぎります・さえぎって・さえぎれば・さえぎろう)
[1]〔人・ものガ ものヲ〕
 △さえぎってしまう  さえぎってはいけない  さえぎらないようにする  さえぎられる
  さえぎろうとする  さえぎるな!
 △[大きく/少し/完全に/まったく/わざと/うっかり]~。
  △[光(ひかり)/日光(にっこう)/日差(ひざ)し/視界(しかい)/話/道/前途(ぜんと)]を~。
 ・厚(あつ)いカーテンが日の光を遮っていて、部屋の中は暗かった。
 ・思わず手で強いライトを遮った。
 ・前方(ぜんぽう)のバリケードが道を遮っていて通れそうもない。
 ・ダムが川の流れを遮り、大量(たいりょう)の水を貯(た)めている。
 ・霧(きり)に視界を遮られ、何も見えなかった。
 ・垣根(かきね)で人の目を遮るようにしてある。
  ・人の話をさえぎるようにして質問するのはやめなさい。
  ・警備員(けいびいん)にさえぎられて建物の中には入れなかった
〔文ヲ〕
 ・家の前の木が大きく枝(えだ)を広げ、日差しが入るのをさえぎってくれている。
  ・群衆(ぐんしゅう)が広場に入ろうとするのを軍隊(ぐんたい)が遮った。


さまたげる(妨げる)  一(さまたげない・さまたげます・さまたげて・さまたげれば・さまたげよう)
[1]〔人・ものガ ものヲ〕
 △さまたげがちだ  さまたげてしまう  さまたげないようにする  さまたげられる
 △[大きく/ひどく/少し/かなりの程度(ていど)/まったく]~。
  △[前進(ぜんしん)/進展(しんてん)/出世(しゅっせ)/昇進(しょうしん)/勉強/結婚(けっこ
   ん)/就任(しゅうにん)/安眠(あんみん)/発育(はついく)]を~。
  ・吹雪(ふぶき)が探検隊の前進を妨げていた。
 ・夜間(やかん)のジェット機の騒音(そうおん)が町民の安眠を妨げている。
 ・ライバルが彼の出世を妨げようと、あれこれと策略(さくりゃく)を練(ね)っている。
 ・貧しい生活が子供たちの発育を妨げている現状(げんじょう)を人々は知るべきだ。
 ・
〔文ヲ〕
 ・親は子供が成長するのを妨げるようなことさえしなければ、あとは何もしなくていい。
 ・個人が自由に行動することを妨げる法律があってはならない。
 ・脂肪(しぼう)が体につくのを妨げるお茶というのは、本当に効き目があるんだろうか。


はばむ(阻む)  五(はばまない・はばみます・はばんで・はばめば・はばもう)
[1]〔人・ものガ 人・ものヲ〕
 △はばんでしまう  はばんではいけない    はばまれる  はばもうとする  はばむな!
 △[まったく/完全に/しっかり/巧妙(こうみょう)に]~。
  △[行く手(ゆくて)/帰国/進行(しんこう)/成長(せいちょう)/成立/前進(ぜんしん)]を~。
 ・大きな岩壁(がんぺき)が探検隊(たんけんたい)の行く手を阻んでいた。
  ・軍事政権(ぐんじせいけん)が元首相(もとしゅしょう)の帰国を何とかして阻もうとしていた。
  ・記録の達成(たっせい)を阻むものは、自分の迷(まよ)いだけだ。それを吹(ふ)っ切れ!
 ・我々の前進を阻もうとするものは、徹底的(てっていてき)に粉砕(ふんさい)するだけだ。
 ・荒れ狂う濁流(だくりゅう)に阻まれて、救助隊(きゅうじょたい)は一歩(いっぽ)も進めなかった。

<複合動詞> 
[さしつかえる] ものガ ものニ
 ・明日の仕事に差しつかえるから早めにマージャンを切り上げた。
 ・子供の勉強に差し支えますから、テレビの音は小さくして下さい。
 ・この部屋のものは自由に使っていただいて差し支えありません。
      営業・暮らし・仕事・診察・勉強・輸送・レッスンに
[たちはだかる] 人・ものガ 所ニ
 ・猟犬の目の前に立ちはだかったのは、大きな熊だった。
 ・着々と計画を進める我々の前に大きな問題が立ちはだかった。
      岩・壁・山・障害・バリケード・権力が 正面・目の前・行く手に
[たちふさがる] 人・ものガ 所ニ
 ・部屋をでた我々の前に、人相の悪い男たちが立ちふさがった。
 ・計画の実現には、まだまだ多くの難問が立ちふさがっていた。
      壁・姿・塀・亡霊・山が  入り口・岐路・人生・ドアの前・目の前に
<スル動詞>
[邪魔(じゃま)する] 人ガ 人・ものヲ
 ・私の仕事を邪魔しないで下さい。
  ・一生懸命やっている人を邪魔しては悪いから、あちらへ行こう。
 [~の邪魔をする]
  ・勉強の邪魔をしないように、静かにしていた。
[阻止(そし)する]  人ガ ものヲ
 ・野党は政府の開発計画を阻止して、内閣総辞職に追い込もうとしている。
 ・我々の活動を続けるためには、警察の立ち入りを阻止しなければならない。

[19]その他 
  ものに対する動作は数多くある。分類から漏れたものをここにまとめておく。

◇すくう
 「すくう」は、液状・粉末状のものの表面を手やさじなどで軽くかすめるようにしてその表面のも
のを、または中にあるものを下から受けるようにして上に取り出すこと。
 複合動詞「すくいあげる」は、上への動きを強めた言い方。
◇さらう
 「さらう」は、ものの底にたまった土砂やゴミなどをきれいに取り除くこと。
◇まくる
 「まくる」は、覆っているものを端から巻いて上にあげること。「-まくる」は、他の動詞につい
て、そのことを勢いよくし続けることを表す。
 複合動詞「まくりあげる」は、上にまくること。 
◇めくる
 「めくる」は、重なっているものの上の一枚を端から折り返すように持ち上げて、その下のものを
見えるようにすること。

[すくう]  人ガ ものヲ
  ・お玉杓子で味噌汁をすくってお椀に入れた。
  ・アイスクリームを一さじすくって、幼児に食べさせた。
    上澄み・おかゆ・砂糖・スープ・雪を 金魚を 足を バケツで 
[すくいあげる] 人ガ ものヲ 
 ・スープに浮かぶ黒いものをスプーンで掬い上げてよく見てみた。コショウの粒だった。
 ・みそ汁の中のとうふをお玉で掬い上げた。
   とうふ・魚・落ち葉・砂・石炭・液体を ひざを 手のひらに たっぷり
[すくいとる] 人ガ ものヲ
 ・粉が下にたまったら、上澄みをすくい取って下さい。
 ・部員の中にたまっている不満をうまくすくい取って解消するように心掛けている。
      上澄み・黄身・魚・灰・花びら・薬剤を 不満を 匙で 網の中に くまなく
[さらう]  人ガ ものヲ
  ・どぶ川の底をさらってきれいな川にしてほしい。
  ・容疑者の供述にしたがって井戸の底をさらってみると、凶器のナイフが見つかった。
     川底・どぶを  土・落ち葉・雪・残り物を
[まくる]  人ガ ものヲ
  ・小学生のころ、女の子のスカートをまくるといういたずらをよくやった。
  ・ワイシャツの袖をまくって、さあ、今日も仕事だ。
    腕・袖口・着物・ズボンの裾・カーテン・毛布・ふとんを
〔-まくる〕
   食べまくる 買いまくる しゃべりまくる 書きまくる 走りまくる 
[まくりあげる] 人ガ ものヲ
 ・暑くなってきたのでボタンを一つはずし、袖をまくり上げた。
 ・医者は患者のシャツをまくり上げさせて聴診器を胸に当てた。
      腕・上着・シャツ・袖・袖口・前・幕を 高々と 無造作に 着物・ドレスの裾を

[めくる]  人ガ ものヲ
  ・本のページをなんとなくめくっていくと、彼女の字で書き込みがあった。
 ・刑事がシーツをめくると、ふとんに血の跡があった。
  ・どうも仕事をする気がしない。書類をぱらぱらとめくっていると、気になるものがあった。
  ・カレンダーをめくれば、一月だ。さあ、新しい一年の始まりだ。

◇しくじる
  「しくじる」は、しようとしたことが(自分のせいで)思い通りにならず、困った結果になること。
 過失などによって勤め先や仕事の場を失うこと。 
◇そこなう
  「そこなう」は、ものの機能が失われた状態にすること。正常な状態を失うこと。「-そこなう」
の形で他の動詞につき、それを失敗すること、間違えてすること、その機会を逃すことを表す。

[しくじる]  人ガ ものヲ
 ・数学の試験でかんたんな計算をしくじり、合格できなかった。
 ・シュートをしくじり、
 ・女性問題で大事な仕事をしくじった。
 ・酒で会社をしくじってしまった。
   酒浸り・女性(問題)で 得意先・お店・師匠を 
[そこなう]  人・ものガ ものヲ
 ・彼は不規則な生活のために健康を損なった。
 ・企業は公害問題で企業イメージを損なうことを恐れている。
 ・ちょっとしたことで取引先との信頼関係を損なうことがある。
 ・新しいホテルがあたりの景観を損なっている。
 ・不用意な言葉で相手の機嫌を損なわないように注意しないといけない。
 ・過保護が子供の自主性を損なうとよく言われるが、親は自分が過保護だと思っていない。
〔-そこなう〕
  会いそこなう やりそこなう 取りそこなう 見そこなう 食べそこなう

◇とどこおる
  「滞る」は、物事が順調に進まないこと。払うべき金がたまっていくこと。
◇ながびく
 「長引く」は、物事が予定・予想以上に長く続いていること。

[とどこおる]  ものガ
  ・ローンの支払いが滞るようになり、催促の手紙が何度も来た。
  ・議案の資料に不手際があり、審議が滞っている。
 ・インフルエンザで休む社員が多く、事務が滞ってしまっている。
     家賃・払い・返済・事務・流れ・活動・仕事が
[ながびく]  ものガ
  ・混乱が長引かないように、政府は何らかの手を打つ必要がある。
  ・会議が長引いて、そのあとの懇親会の時間が短くなった。
    苦痛・苦しみ・騒ぎ・スランプ・戦争・滞在・対立・沈黙・取り調べ・闘争・内戦・入院
     ・話・病気・不況・返済が

◇はぶく
  「省く」は、ある物事を必要ないものとして除いたり、しないで済ませたりすること。なくても済
むと考えられる時間・費用・労力などを少なくすること。
◇しょうりゃくする
  「省略する」は、なくても済むと考えられる部分をしないこと。
◇ばっすいする
 「抜粋する」は、書物・作品などから必要な部分だけを抜き出すこと。

[はぶく]  人ガ ものヲ
 ・時間が足りないので、細かい説明は省きます。
 ・掲示板に書いて、一人一人に知らせる手間を省いた。
 ・真ん中を省いて、最初と最後だけもう一度練習しよう。
  ・長くなりすぎたので、注は全部省くことにした。
[省略(しょうりゃく)する]  人ガ ものヲ
  ・「アジア・アフリカ諸国」を省略して、「A・A諸国」と言います。
 ・面倒な手続きをもっと省略してやれるように規則を改正してほしい。
 [~の省略をする]
  ・細かいところはちょっとばかり説明の省略をして、わかりやすくした。
[抜粋(ばっすい)する]  人ガ ものカラ ものヲ
 ・雑誌から面白そうな記事を抜粋して、離れ島にいる友人に送った。
 ・長い論文から要点を抜粋してまとめ、ゼミで報告した。
 [~の抜粋をする]
  ・下書きの中から必要な個所の抜粋をして、残りは捨てることにした。

◇ともす
  「ともす」は、明かりをつけて明るくすること。
◇てんかする
 「点火する」は、(ライター、コンロなどの)火をつけること。

[ともす]  人ガ ものヲ
  ・明かりをともすまで、ちょっとそのままで待っていて下さい。 
  ・夕暮れ時、あたりの家々に灯がともされた。
  ・突然、ランプが灯され、へやの中にみんなの顔が浮かび上がった。
     懐中電灯・カンテラ・照明・聖火・たいまつ・ろうそくを
     窓に 仏壇に灯明を 暗い世の中に光を 行灯に火を 

[点火(てんか)する]  人ガ ものニ/ヲ
 ・フライパンに油を引いて、ガスに点火(を)してください。
 ・ライターを点火して、通りの向こうの仲間に合図した。
   ガスを  エンジン・火薬・導火線・ろうそくに

◇たがやす
 「耕す」は、農作物を作るために田畑を掘り返すこと。
◇こうさくする
  「耕作する」は、田畑を耕して穀物・野菜などを作ること。

[たがやす]  人ガ ものヲ
 ・荒れ地を耕して、立派な農園を作り上げた。
 ・この四十年間、田畑を耕し、作物を作って生きてきた。
   農民が 田・畑・土壌・菜園・土地を
[耕作(こうさく)する]  人ガ ものヲ
 ・両親は田畑を耕作し、私たちきょうだいを育ててくれた。
 ・この土地は、祖父と父が何十年も耕作してきた土地だ。手放すわけには行かない。

◇さばく
 「捌く」は、取扱いが難しい道具をうまく使うこと。難しい仕事などを上手に処理すること。
  魚や鳥などの食材を解体すること。
 「裁く」は、(法律に従って)事の正しさをはっきりさせること。
[さばく]  人ガ ものヲ
 ・台所で兄が釣ってきた魚を捌いている。
 ・料理長がニワトリをさばいてみせてくれた。
 ・ショートが難しいゴロをうまくさばき、一塁に送って、アウト。
 ・デパートが夏物衣料を早めにさばいた。
 ・売れない商品をいかにさばくかが、商売人の腕の見せ所だ。
 ・てきぱきと仕事をさばく彼の姿は、女子社員のあこがれの的だ。
 ・新しい担当者が書類の山を一日でさばき、皆は驚嘆の目で彼女を見た。
[さばく]  人ガ 人・ものヲ
 ・被告(の罪)を裁くのが裁判官の仕事なのだが、私はこの仕事に向いていなかったようだ。
 ・親が子供のけんかを裁く場合、大事なのは双方の言い分をよく聞くことだ。

◇さらす
 「さらす」は、(外に出して)日や風に当てたり、水につけたりすること。普通は見せるべきでない
ものを人に見えるようにすること。危険な、好ましくない状態に身を置くこと。
  
[さらす]  人ガ ものヲ ものニ
 ・布は日光や水にさらすことで、色や肌触りがよりよくなっていくのだ。 
 ・本は時々外気にさらしたほうがいい。
 ・風雨にさらされた石仏がお堂を囲んで立っていた。
 ・タマネギを水にさらして食べやすくする。
 ・革命軍は王の首を街頭にさらし、王の罪を言い立てた。
  ・被害者の姿をやじ馬の目にさらすことのないようにしてほしい。
 ・肌を炎天にさらしていると、炎症を起こしかねない。
 ・身を危険にさらすようなことはしてくれるな。
  ・彼は何度も酔っ払い、醜態を人前にさらしても、いっこうに反省しない。
 ・長い人生、何度も恥をさらしてきた。
 ・我が国は敵の脅威にさらされている、と政治家が叫んでいる。いつもの手だ。

◇ふるう
 「振るう」は、こぶしや武器を大きく振り動かすこと。力・能力を使うこと。また、勢いが盛んに
なること。

[ふるう]  人ガ 人・ものニ ものヲ
 ・彼は妻に暴力を振るったとされ、警察に逮捕された。
 ・警察がデモ隊に暴力を振るうのを、私は確かに見た。
  ・今日はお父さんが料理に腕を振るうそうだ。
 ・新監督がどう采配を振るうのか、注目が集まっている。
 ・各党の党首が候補者の応援演説に熱弁をふるう姿がニュースで流された。
〔ものガ〕(否定が多い)
 ・彼はこのところ成績がふるわない。
 ・コーチの不祥事で、チームは士気がふるわなかった。
 ・最近、近くに大型店ができたせいで、店の売り上げがふるわない。

◇きたえる
 「鍛える」は、熱した鉄を打ったり冷やしたりして強くすること。厳しい訓練を繰り返して人・能
力を強くすること。
  複合動詞「鍛え上げる」は、鍛えて立派なもの・人にすること。

[きたえる]  人ガ ものヲ
 ・運動部の合宿で鬼コーチにみっちり鍛えられた。
 ・全校マラソンで心身を鍛えようというのが我が校の伝統です。
 ・座禅で忍耐力を鍛えろと、会社が新入社員を研修に送り出した。
 ・計算力は反復練習で鍛えられるが、思考力はどうやったら鍛えられるだろうか。
  ・今年の新人は根性があって、鍛えがいがある。
 ・刀工が刀を鍛える技術は、わが国独自のものだ。
[きたえあげる] 人ガ ものヲ
 ・若いときに足腰を鍛え上げた人は、年をとってもしっかりしている。
 ・新入生を鍛え上げて強いチームを作りたい。
      足腰・体・技術・精神・チーム・度胸・技を 現場で 身心ともに 名刀に

◇とぐ
 「研ぐ」は、刃物を砥石でこすってよく切れるようにすること。米をこするようにして洗うこと。
 複合動詞「研ぎすます」は、刃物などを念入りに研ぐこと。比ゆ的に、心の働きを鋭くすること。

[とぐ]  人ガ ものヲ
  ・米をとぐのは面倒なので、無洗米というのを買っています。
  ・父は包丁を砥石で研いだものだが、私は研ぎ方を知らないし、砥石もない。
 ・猫が柱でツメを研ぐので、柱が傷だらけになってしまう。
[とぎすます] 人ガ ものヲ
 ・神経をとぎすまして、闇の中から聞こえてくるかすかな音に集中した。
 ・彼の詩は、鋭くとぎすまされた言語感覚によって組み上げられた建築物のようだ。
      感覚・感性・神経・精神・注意力・耳・つめ・包丁を 鋭く ~された文章
◇いる
  「射る」は、弓で矢を放つこと。ヲ格には、弓、矢または目標となるものをとる。目標をニ格にと
る文型もある。
  複合動詞「射とめる」は、狙ったものを射て矢を当てること。
 
[いる] 人・ものガ 人・ものヲ (ものニ)
 ・走る馬の上で弓を射る催し物がある。
 ・竹製の弓で矢を射るのは、いかにも難しそうだ。
 ・昔、毒を塗った矢で熊を射たそうだ。
 ・遠くの小さな的に矢を射るためには、相当な練習が必要だ。
[いとめる] 人ガ 人・ものヲ               
 ・ねらっていた獲物をついに射止めた。
 ・独身時代の長かった彼も、とうとう意中の人を射止めた。
      猪・獲物・男・金星・けもの・賞・本命を

◇ねらう
 「狙う」は、目標に矢や弾などを命中させようと構えること。あるものを手に入れようとして機会
をうかがうこと。
 複合動詞「つけ狙う」は、人のあとをつけて、常に様子をうかがうこと。

[ねらう]  人・動物ガ ものヲ
  ・警官が犯人を狙って銃を撃った。
 ・慎重に弓で的を狙った。これを決めれば優勝だ。
  ・ライオンが草の陰から獲物を狙っている。
  ・今年は優勝を狙うつもりで練習に励んでいます。
  ・専務は社長の座を狙っているらしい。
  ・オリンピックを開くことで大きな経済効果を狙っている。
  ・子どもがお母さんのすきをねらって、冷蔵庫のアイスを食べようとしている。
 ・彼女は玉の輿を狙おうとして、金持ちの息子を誘惑した。
 ・その国では、常に民主運動家の命が狙われている。
[つけねらう] 人ガ 人ヲ
  ・テロリストが大統領をつけ狙っているという情報が入った。
  ・怪しい男につけ狙われていると思ったら、婚約者の家族が雇った探偵だった。 

◇する
 「掏る」は、人ごみや車中などで、人の財布や携帯品をこっそり抜き取ること。
 複合動詞「すりとる」は、「掏る」ことで人のものをとること。

[する]  人ガ ものヲ
 ・人混みで他人の財布をすり、中身を抜いて、財布は捨てる。
 ・電車の中で財布をすられたらしい。駅を出ようとした時、ポケットにないことに気付いた。
[すりとる] 人ガ ものヲ 
 ・刑事の手帳をすり取るとは、おまえは大胆な男だ。
 ・駅で誰かとぶつかったとき、財布をすりとられたらしい。
◇こる
 「凝る」は、物事に強い興味を持って夢中になること。細かい点にまでこだわって自分の好みを追
及すること。筋肉が張って固くなること。

[こる]  人ガ ものニ
 ・彼の仕事は、細かいところにばかり凝っていて、全体が進まない。
 ・最近は靴に凝っています。カタログを集めて、いろいろ知識を深めています。
 ・叔父さんは若い時から発明に凝っていて、いくつかは製品化されたらしい。
   学問・宗教・音楽・賭博・切手(収集)・発明・文房具に 凝る
〔人ガ 文ニ〕 
 ・夫は庭を造ることに凝っていて、日曜日はそればかりやっている。
 ・見かけをよくすることには凝るが、かんじんの中身がおそまつだ。
〔ものガ〕
 ・ゲームのしすぎで肩が凝ってしかたがない。
 ・今日は気楽な集まりなので、肩の凝る話はやめよう。
 ・この柱はなかなか装飾が凝っている。
 ・ずいぶん凝ったデザインの時計ですね。

◇ゆう
 「結う」は、髪を整えるために束ねたり結んだりすること。
 複合動詞「結いあげる」は、結って髪型を作ること。

[ゆう]  人ガ ものヲ
 ・久しぶりに日本髪を結ってみた。結婚式以来だ。
  ・髪の毛をお下げに結ってもらった女の子がうれしそうに友だちに見せている。
[ゆいあげる] 人ガ ものヲ
 ・一生に一度の成人式に行くので、日本髪に結い上げてもらった。
 ・後ろ髪をアップに結い上げてみた。ちょっといいかもしれない。

◇あおぐ
 「扇ぐ」は、うちわなどを動かして風を送ること。

[あおぐ]  人ガ ものヲ
 ・すし飯をうちわでばたばたと扇いでさました。    
 ・母親は寝ている赤ん坊の顔を扇子で静かにあおいでいた。
   団扇・扇子を  襟・体・コンロ・背中・はだけた胸・飯を 煙を

◇あしらう
  「あしらう」は、趣を出すために、他のものを取り合わせること。

[あしらう]  人ガ ものニ ものヲ
 ・着物の袖に菊の花模様をあしらってみた。
   石・色・梅・花・フリル・ブローチ・宝石を 

◇しのぐ
 「しのぐ」は、その時の苦しい状態を何とか切り抜けること。能力などが他を超えていること。

[しのぐ]  人ガ ものヲ
 ・雪山で遭難したが、飢えと寒さをしのいで生き延びた。 
 ・雨風をしのぐに足りる家があれば十分だと思っていたが、妻はもっといい家が欲しいという。
 ・店が倒産しそうになったが、借金をして急場をしのいだ。
  ・相手の厳しい攻めを何とかしのいだ。今度はこっちが攻撃する番だ。
〔人ガ 人ヲ〕
 ・彼女はその頭脳と意志の強さで競争相手をはるかにしのいでいる 
 ・我々二人は、互いに相手をしのごうと努力してきたおかげで、他の選手たちを引き離した。

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