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       ◇◇ 人と自然 ◇◇
 
    人間      
     人の生死と成長  
       [1] 生まれる・産む 妊娠する  
       [2] 生きる・生かす  
       [3] 育つ・育てる  
       [4] 老いる・老ける 
       [5] 死ぬ・殺す  
     時の経過と暮らし  
          経つ・過ぎる 経る・巡る  明ける・暮れる
          暮らす・生活する・過ごす・明かす
     日々の生活  
       [1] 住む・泊まる・泊める  
       [2] 眠る・寝る・寝かす  
       [3] 起きる・起こす・目覚める  
       [4] 働く・勤める  
       [5] 遊ぶ  
       [6] 休む・休める  
    自然
     天候  
       [1] 降る・吹く・止む  
       [2] 晴れる・曇る  
     光   光る・輝く 照る・照らす
     音   鳴る・鳴らす 響く  鳴く・さえずる 吠える
     植物
       [1] 生える・生やす・植える
       [2] 育つ・茂る
       [3] 咲く・咲かせる 散る
       [4] 実る・なる
       [5] 枯れる・枯らす しおれる・しなびる




         ◇人の生死と成長◇
 
 [1] 生まれる・産む 妊娠する

  生まれる    
     生まれ合わせる 生まれ落ちる 生まれ変わる 生まれ育つ 生まれつく 生まれ出る
        誕生する 出生する 発生する
   生む     
        産み落とす 産み育てる 生み出す 生み付ける 産み分ける  出産する
   妊娠する
      みごもる 避妊する 中絶する 子供ができる

[2] 生きる・生かす

   生きる   
       生き返る 生き続ける 生きながらえる 生き抜く 生き残る 生き延びる
     長生きする 生存する
    生かす
     生かし切る

 [3] 育つ・育てる

    育つ    
        成長する 発育する 生育・成育する 成熟する
    育てる
       育て上げる 育成する 養成する 養殖する
    育む
     保育する
    養う
     扶養する 養育する
    飼う
     飼い慣らす  飼育する

 [4] 老いる・老ける

   老いる     
     老い込む  老ける  老け込む  老化する 老衰する
    年を取る
     ぼける

 [5] 死ぬ・殺す

   死ぬ   
        死に急ぐ 死に後れる 死にかかる 死にかける 死に損なう 死に絶える
     死に別れる  溺れ死ぬ  凍え死ぬ 焼け死ぬ
     死去する 死亡する 他界する 逝去する 夭折する 殉職する 戦死する
     自殺する 心中する 身投げする
    亡くなる
     亡くす
    殺す
       殺し合う 殺し尽くす   うちころす かみ殺す 斬り殺す 食い殺す けり殺す
     刺し殺す 絞め殺す たたき殺す 突き殺す ひき殺す 焼き殺す とり殺す
     暗殺する 虐殺する 射殺する 銃殺する 毒殺する   

  

◇人の生死と成長     
 生死に関する動詞表現。基本となる動詞は「生まれる」「死ぬ」、そして「生きる」である。
      子どもが生まれる  老人が死ぬ  私は生きている
 基本的な文型は、「人ガ 動詞」だが、時間の表現を伴うことが多い。 
      彼は1951年に生まれ、2007年に死んだ

◇生まれる・産む
 「生まれる」は変化を表す動詞で、その「-ている」の形は「結果の状態」を表すが、「生まれた」
結果の状態は「生まれている」と言うよりも、「生きている」で表す。
   百年前、一人の女の子が生まれた。その子は、今も生きている。
 「生まれる」に意味的に対応する他動詞は、「産む」である。
   女性が子どもを産みやすい社会   
◇妊娠する
 和語動詞「身ごもる」「はらむ」があるが、「妊娠する」がふつう使われる。
      妻が妊娠する  以前は妊娠すると会社を辞める女性が多かった
◇生きる・生かす
 「生きる」は、生物がその生命を維持すること。現在の状態を表すには、「-ている」の形、「生
きている」を使う。
 「生きる」に対応する他動詞は「生かす」で、「生きている」状態を続けさせるという意味で、「生
かしておく」の形で多く使われる。(ただし、生命ではなく、「技能を生かす」などの用法は別。)
 「生かす」は、他の自他の対のように、自動詞「生きる」という現象を引き起こすというわけでは
ない。(それは「産む」になる)
◇育つ・育てる
  「育つ」は、生まれた後少しずつ大きくなって大人(の体)になるまでの過程を言う。日常的には「大
きくなる」が使われる。その間、親が子どもの面倒を見ることが「育てる」。
   海のそばで育つ  三人の子どもを育てた
◇老いる
 育って大人になった後、人の変化を表す動詞は特にない。「年を取る」だけになる。そして、その
力が弱くなり、死に近づくことを「老いる」で表す。
◇死ぬ
 「死ぬ」は変化を表す動詞で、その「-ている」の形は「結果の状態」を表す。
   1時まで生きていた → 1時に死んだ → 今、死んでいる
 死に近い状態は「死にそうだ」「死にかけている」などで表される。死に近づいていく状態は「死
につつある」で表せるが、書き言葉でかたい表現。
 「死ぬ」の類語は非常に多くある。「なくなる」がよく使われる。
   母は5年前に亡くなりました
   逝く 眠る 死亡・死去する 戦死する 餓死する 殉職する くたばる 息絶える
  「死ぬ」に意味的に対応する他動詞は「殺す」である。「殺す」は、「人に対する行為」で扱う。◇ひゆ的用法
  以上の動詞は、複合動詞も含めて、ひゆ的な用法が発展していることが多い。
      新しい時代が生まれる  能力を生かす  問題をはらむ  民主主義が死ぬ

[1]生まれる・産む・妊娠する
 「うまれる」は、人・動物がこの世界に存在し始めることを表す。
   赤ん坊が生まれる  鳥のヒナが(卵から)生まれる
 「うむ(生む・産む)」は、「うまれる」に対応する他動詞。「うまれる」ことを引き起こす。
   母が子を産む

◇「うまれる」
 「生まれる」は、形の上では「うむ」の受身形に当たるが、その文型にはならない。
 受身の「ニ」「ニヨッテ」ではなく、「カラ」が使われる。この「カラ」は単に出発点を表す。
  ×子が母に(よって)生まれる
   子が母から生まれる  魚は卵から生まれる  
  「-ている」の形は、「生まれる」ということがすでに終わった、ということを表す。
   「ポチの子、生まれた?」「うん、もう生まれて(い)るよ/生まれたよ」
 あるいは、習慣的なくり返し、過去の記録などを表す。 
   この国では、毎日三千人の新生児が生まれている   この年には百万人生まれている
 「生まれた」後の状態は、ふつう「生きている」で表される。
 命令形は基本的に使わないが、次の例のような軽い冗談として使うことはできる。
   (赤ん坊に)ぐずぐずしていないで、早く生まれろ!  
 意志形は意志を表す場合と、「~ようとする」の形で「もうすぐ生まれる」ことを表す用法がある。
   こんど生まれてくるときは、もっとましな人間に生まれよう、と思う
   今、新しい命が生まれようとしています
 「~てくる」をつけた「生まれてくる」はよく使われるが、「生まれていく」は使いにくい。
・場所の「デ/ニ/カラ」
 「所デ/ニ 生まれる」の違いは、文体的なものである場合と、特別な場所との関わりを表す場合
がある。次の例では「デ」が一般的で、「ニ」は文体的に多少書き言葉的である。
   彼女は大阪で/に 生まれた 
   この国・地・町・島 で/に 生まれ、育った
 次の例では「デ」は使いにくい。
   貧乏な家に生まれて苦労した   王室に生まれたことの幸い・不幸 
 「人(ノ所)ニ 生まれる」という表現もある。
   弟夫婦(のところ)に子供が生まれた
   飼い猫に子猫が5匹生まれた (飼い猫が子猫を産んだ)
 「出発点」として「カラ」が使える。
   私は母のおなかから生まれた   小さな卵からひよこが生まれる
 「生まれた」結果のある側面を「ニ」で表すことができる。
   女に生まれて得したこと、損したこと
   父に似た顔に生まれたのは残念だがしかたがない
・「トシテ」
 立場を表す「トシテ」が「生まれる」と共に使われる。
   有名な指揮者の息子として生まれた
   貧乏子沢山の家の末っ子として生まれた
・ひゆ的用法
 動物や人と同じように、アイデアや新製品などにも「生まれる」が使える。
   新しいアイデアが生まれる   革命政府が生まれようとしている
    我々のチームの研究から新素材が生まれた
   二人の間に恋が生まれ、育った        彼女の心に新たな希望が生まれた
・複合動詞:「生まれ-」の形のものがある。「生まれる」の元の意味を保持している。
 「生まれ合わせる」の「あわせる」は、「その状況に偶然合わせて」という意味を加える。
   どうしてこんなおかしな時代に生まれ合わせたのか
 「生まれ落ちる」の「おちる」は、「その時、そこに」という意味合い。
   激動の時代の日本に生まれ落ちた
 「生まれ変わる」は、「別の形に変わって生まれる」意味で、ひゆ的に「生まれ変わったように」
で大きく変わることを表す。
   生まれ変わったようにまじめな人間になった
 「生まれ育つ」は、「(所ニ)生まれて育つ」の意。
   沖縄の小さな島に生まれ育った
 「生まれつく」は、ある性質・運命などを持って生まれたことを表す。「生まれつき」の形で副詞
として使われる。
   神経質に生まれついたのは父親の遺伝だ  生まれつき頭がいい  
 「生まれ出る」の「でる」は、この世界に現れることを示す。
   医者として新しい命が生まれ出るのに立ち会うのは大きな喜びだ      
・スル動詞
 「出生する・誕生する」は、人が生まれること。「誕生する」のほうが一般的な語で、「出生する」
は社会的な事柄として使われることが多い。どちらも名詞として使われることが多い。
 「発生する」は生物について使われるが、自然現象・社会現象が起こることにも多く使われる。他
動詞の用法もある。
   害虫が発生した    事故・火災が発生しやすい状況    熱を発生する

◇うむ
 「産む」は、「人・動物の親が子を産む」のが基本的用法だが、そこから発展したひゆ的な用法も
多く使われる。
   母は5人の子供を産み、育てた
   不注意が事故を産む  よい結果を生むことを期待する
 場所は「デ」で示される。
   病院で産むか、自宅で産むか
 「所ニ」は、動物の卵などが(生んだ結果)ある場所におかれることを表す。
   虫が土の中に卵を産む (「土の中で」とすると、意味が違う) 
  使役の形「産ませる」がある。
      にわとりに卵を産ませる
・複合動詞
 「産み落とす」の「おとす」は、動物が卵を産む場合に「下の方向に」という意味合いを付け加え
るものと思われるが、ひゆ的に「この世界に」という意味合いでも使われる。
 「産み出す」は、ひゆ的に「これまでになかったものを」という場合に多く使われる。
   効果・新記録・作品を生み出す
 「産み付ける」は、場所の「ニ」をとり、動物の場合だけで人には使えない。
   卵を木の枝に産み付ける
 「産み分ける」は、子の性別をコントロールして産むことを意味する。
   男女を産み分ける
・スル動詞
  「出産する」は、人が子どもを産むこと。
      息子の嫁が二人目の孫を出産した
◇にんしんする
  「妊娠する」は、女性の体内に子どもができること。
◇みごもる
  「身ごもる」は、女性の体内に子供ができること。古めかしい言い方。
◇その他の関連動詞
 「避妊する」は、妊娠しないようにすること。
 「(妊娠)中絶する」は、(母体の安全のため)人工的に流産を起こさせて妊娠を中絶すること。


うまれる (生まれる) 一(うまれない・うまれます・うまれて・うまれれば・うまれよう)
[1]〔人・動物ガ 所デ/ニ (ものカラ)〕
 △うまれそうだ  うまれかけている  うまれている  うまれてほしい  うまれるといい
  うまれたらこまる  うまれないほうがいい  うまれなかったほうがよかった
  うまれようとしている  うまれさせる  うまれろ!  うまれるな!
 △[幸(さいわい)いに/無事(ぶじ)に/やっと/ついに/ようやく]うまれた。
  [意外に安産(あんざん)で/難産(なんざん)のすえに/帝王切開(ていおうせっかい)で/人工 
   授精(じんこうじゅせい)で]~。
 △[赤ちゃん/子ども/新生児(しんせいじ)/娘(むすめ)/息子(むすこ)/双子(ふたご)]が~。
  [ネコの子/ひよこ/子牛(こうし)/チョウの幼虫(ようちゅう)/ハエ]が~。
 ・私は1992年2月に東京で生まれました。
 ・山本さんの所で男の子が生まれたそうだ。とってもかわいいんだって。
 ・西川さんのうちでは双子が生まれて、おじいちゃん、おばあちゃんは大喜(おおよろこ)びらしい。
 ・この病院では毎日赤ちゃんが生まれていて、お医者さんは忙しくて大変らしい。
 ・この1年で約100万人の子どもが生まれている。
 ・お姉さんの赤ちゃん、まだ生まれないのかなあ。早く生まれないかなあ。
 ・うちでネコの子が生まれそうなんですが、だれかもらってくれませんか。
 ・あなたは、生まれなかったほうがよかった、などと考えたことがありますか? 
 ・今、新しい命が生まれようとしている。
 △[下町(したまち)/古くから続く武士(ぶし)の家/皇室(こうしつ)]に~。
 ・大阪(おおさか)に生まれ、青森(あおもり)で育(そだ)ちました。
 ・わたしは商家(しょうか)に生まれたので、お金を手に入れることの大変さがよく分かる。
 ・どんな家に生まれるかによって、その後の人生(じんせい)が大きく違う。
 ・皇室になかなか男の子が生まれなかったので、女性の天皇について議論(ぎろん)された。
 △[母/親(おや)/おなか/卵(たまご)]から~。
 ・気の強い母親から、気の弱い男の子が生まれた。
 ・この親から生まれ、この親に育てられた私だが、この親のような大人(おとな)にはなりたくない。
  ・竹からはかぐや姫(ひめ)が、桃(もも)からは桃太郎(ももたろう)が、チューリップからは親指(お
  やゆび)姫が生まれた。
  △[天才(てんさい)/立派(りっぱ)な政治家(せいじか)/犠牲者(ぎせいしゃ)]が~。
 ・平凡(へいぼん)な家から天才科学者が生まれた。
  ・この土地からは首相(しゅしょう)が三人も生まれています。
 ・無意味(むいみ)な争(あらそ)いの中で、とうとう犠牲者が生まれてしまった。
[2]〔(所デ) ものガ〕
 △[アイディア/新製品(しんせいひん)/新しい時代/政党(せいとう)/国/強いチーム]が~。
  彼女の胸(むね)に[希望(きぼう)/夢(ゆめ)/疑(うたが)い/確信(かくしん)/恋(こい)]が~。
 ・良いアイディアが生まれる場所として、むかしから、ふろ、ベッド、トイレなどが上げられる。
 ・この戦争(せんそう)さわぎでの中で一つの恋が生まれた。
 ・貧困(ひんこん)から犯罪(はんざい)が生まれる。
 ・毎日の暮らしの中の小さなことから、笑いが生まれ、楽しみがふえていく。
[3]〔人ガ 人ニ〕
 ・わたしは、女に生まれてよかったと思います。
 ・父は学者のむすこに生まれたのがいやで、役者(やくしゃ)になったそうだ。
 ・もっと美人に生まれたかったんだけど、あの両親(りょうしん)じゃむりかなあ。

複合動詞:うまれ->
[うまれあわせる] 人ガ 時ニ
 ・激動の時代に生まれ合わせ、何とか世の中が落ちついたと思ったら、また戦争だった。
 ・昔に比べればまったく便利な世の中になった。いい時代に生まれ合わせたものだと思う。
   こういう時に 戦乱の時代に 乱世に
[うまれおちる] 人ガ 所ニ
 ・この世に生まれ落ちて、恋というものを知らずに死んでしまうのはつまらない。
 ・何の因果か、こういう親のもとに生まれ落ち、こういう兄弟を持つことになった。
   この世界に この世に 世の中に
[うまれかわる] 人ガ 人ニ
 ・仏教では、人も動物も死ぬとつぎに別の動物に生まれ変わると考えられている。
 ・今までのことを反省して、生まれ変わった気持ちでしごとをしようと思う。
   組織・細胞・市民社会が 花屋がブティックに 勤勉な男に 別人に 鳥・虫に
   ~たつもりでがんばる   次の世に~たら一緒になろう
[うまれそだつ] 人ガ 
 ・生まれ育ったのは東京ですが、大学の時から大阪に住んでいます。
 ・この作家の場合、生まれ育った風土の影響がすべての作品に表れている。
   東京で 田舎町に 都会に 何の苦労もなく ~た環境・土地
[うまれつく] 人ガ (ものニ)
 ・わたしはもともと小さい事を気にしないように生まれついているのです。
 ・わたしは生まれついてからまだ、海を見たことがない。
 ・弟は生まれつき左目が見えない。(副詞)
   こんな性分に 神経質・素直・のんき・美人・冷淡に 不幸の星の下に
[うまれでる] 人・ものガ
 ・田んぼでは、この季節に多くの新しい命が生まれ出るのを見ることができます。
 ・冬が来て、枯れた草は種を残し、次の春にふたたび新しく生まれ出てきます。
   感謝の情・生命・魂が この世に ふたたび 
<スル動詞
[誕生(たんじょう)する] 人・ものガ
  ・我が家に新しい命が誕生した。猫が子どもを産んだのだ。
 ・2千年ほど前、この地で新しい宗教が誕生した。
      独立国・新政権・新記録が
[出生(しゅっしょう・しゅっせい)する] 人ガ
 ・この年に出生した新生児は前年より5パーセント減少した。
 ・新生児が出生する時間帯の偏りというのはあるのだろうか。
[発生(はっせい)する] ものガ  
  ・生物が最初に発生したのは、海の水の中だそうだ。
 ・実験を続ける中で、困った問題が発生した。
      異常事態・火災・緊急事態・事件・食中毒・上昇気流・有毒ガス・トラブル・不具合が
 〔ものガ ものヲ〕
 ・この二つの液体は、混ぜると熱を発生するので注意が必要だ。


うむ(生む・産む) 五(うまない・うみます・うんで・うめば・うもう)
[1]〔人・動物ガ 人・動物ヲ〕
 △うみそうだ  うみたい  うんでほしい  うんではいけない  うまなければならない
  うんだほうがいい  うもうとおもう  うませる  うめない  うめ!  うむな! 
  △[やっと/次々に/らくに/くるしみながら/死にそうなおもいで/先のことを考えずに]~。
 △[子ども/男の子/女の子/娘(むすめ)/初孫(はつまご)/卵(たまご)]を~。
 ・母は私を生むとすぐになくなったそうだ。
 ・家内(かない)は父母(ふぼ)のいるいなかで子どもを産むためにきのう出かけました。
 ・うちのいぬが子どもを5ひき生んだんですよ。
 ・にわとりが卵を3つ産んだ。
[2]〔ものガ もの・人ヲ〕
 △[悪循環(あくじゅんかん)/冤罪(えんざい)/感動(かんどう)/奇跡(きせき)/傑作(けっさく)
   /すぐれた効果(こうか)/対立(たいりつ)/バブル/貧困(ひんこん)/摩擦(まさつ)]を~。
   この国・風土(ふうど)が[偉大(いだい)な革命家(かくめいか)/多くの科学者]を~。
 ・私の発言(はつげん)は意外(いがい)な結果(けっか)を生んだ。
 ・そんなことをすると誤解(ごかい)を生むからよした方がいい。
 ・モーツァルトは世界が生んだもっともすぐれた音楽家(おんがくか)のひとりです。
 ・利子(りし)が利子を生んで、銀行(ぎんこう)の預金(よきん)がどんどん増(ふ)えるといいなあ。

複合動詞:うみ->
[うみおとす] 人・ものガ 所ニ 人・ものヲ
 ・ウミガメは砂浜に卵を産み落とす。
 ・人はみな、この世に産み落とされ、生きにくい世を生き、またどこかへ去っていく。
   土の中・水の中・海底・苦しみにあふれた人間世界に
[うみそだてる] 人・ものガ 人・ものヲ
 ・この地で結婚し、子供を生み育て、静かに死んでゆく、そういう人々の心を描きたい。
 ・動物の中で、卵を産みっぱなしのものと、子供を生み育てるものとは何が違うのか。
[うみだす] 人ガ ものヲ
 ・女性は新しい生命を生みだし、育てて行く、すばらしい性なのだ。
 ・高田は新進の画家としてつぎつぎと新しい作品を生み出している。
 ・いいアイデアを生み出すために、常に最新の情報に触れるようにしている。
 ・新しい商品を生み出すために会社はとてもたくさんお金をかけている。
   悪循環・新しい時代・命・関係・危機的状況・技術・強制力・記録・形式を
   結果・傑作・合意・効果・言葉・作品・新製品・成果・生命・力・秩序・変化を
[うみつける] 動物ガ ものニ ものヲ
 ・この虫は木のえだに卵を生みつける。
 ・ほかの虫の体内に卵を産み付けるというすごい虫がいる。 
[うみわける] 人ガ ものヲ
 ・男女を生み分けられるとしたら、どちらが多くなるのだろうか。
 ・現在では男女を生み分けることが可能になろうとしている。
   性別を 雄と雌を 男と女を
スル動詞>
[出産(しゅっさん)する] 人ガ 人ヲ
 ・きのう、妹がかわいい女の子を出産した。
 ・この私が子どもを出産する時が来るなんて。人生、わからないものだねえ。


にんしんする(妊娠する)  サ変(しない・します・して・すれば・しよう)
[1]〔人ガ 人ヲ〕
 △妊娠したい  妊娠してはこまる  妊娠しないようにする  妊娠させる  妊娠させられる
 △[すぐに/ついに/やっと/さいわいに/こまったことに/自然に]~。
  △[妻(つま)/家内(かない)/恋人(こいびと)/彼女/姉/上司(じょうし)]が~。
  ・彼女は2人目の子供を妊娠しているらしい。
 ・彼の子供を妊娠したいと思ったのだけれど、できなかった。
  ・妊娠した女性は社会の中でもっと大切に扱われるべきだ。
 ・女性を妊娠させたら責任(せきにん)を取らなければいけない。つまり結婚するべきだ。
 〔妊娠をする〕
 ・望まない妊娠をしてしまった。


みごもる(身籠もる)  五(みごもらない・みごもります・みごもって・みごもれば・みごもろう)
[1]〔人ガ 人ヲ〕
 △[すぐに/ついに/やっと/さいわいに/こまったことに/自然に]~。
  ・彼女は彼の子どもを身ごもっていた。
 ・じゃあ、あの旅行の時はもう二人目を身ごもっていたのか。

<その他の関連動詞>
[避妊(ひにん)する]  人ガ
  ・恋人に避妊してほしいと言えない女性が多いそうだ。
 ・結婚前は避妊していたが、式を挙(あ)げてからはもちろんしなかった。
[中絶(ちゅうぜつ)する]  人ガ
  ・人工的に妊娠を中絶すること、それは殺人(さつじん)だという主張(しゅちょう)がある。
 ・私は生みたかったのに、中絶させられた。
[子供ができる] 人ニ  
 ・結婚して十年、やっと子供ができた。うれしくてしかたがない。
  ・姉のところはなかなか子供ができないようだ。

〔2〕生きる・生かす 
  「生きる」は、生物がこの世界に存在し続けること。現在の状態を「-ている」の形「生きている」
で表す。その終わりが「死ぬ」。「(人が)生きていく」という形もよく使われ、意志を持って、自覚
的に生きるという意味合いになる。
 名詞修飾の形では、「生きている」と共に「生きた」が動物の現在の状態を表す。
   生きている人   生きている/生きた ニワトリ・魚 
 「生かす」は、「生きる」に対応する他動詞。生物の「生きている」状態が続くようにすること。
      人・動物・植物が 生きている  人が動物を生かしておく

◇「生きる」と時・場所
  基本的文型は「人・ものガ 生きる」だけだが、時間や場所を示す語がともに使われる。
   80年生きる  80歳まで生きる   現代に生きる  
 「時ヲ」は、書き言葉的で、その時代・期間に何らかの特別の思いを感じていることを示す。
   現代・二十一世紀を生きる  長い人生を生きていく
  場所は、一般的には「デ」で示すが、動植物がある場所と特別な関係を持つことを示したい場合は
「ニ」が使われる。
   人間は社会の中で生きている  今、ここで生きる
   海辺に生きる動物    この町に生きる
・「人ガ ものニ 生きる」
  「ものニ 生きる」という形で、人がある対象に特別な思いを持って生きていくことを表す。
      学問・研究・趣味に 生きる
・「ものガ 生きる」
 ひゆ的な表現で、抽象的なものが長く存在を続けたり、効果や力を持っていたりすることを「生き
る」で表す。
   母の笑顔は今も私の胸に生きている  心に生きる言葉
   苦労が作品に生きている  規則はまだ生きている  素材が生きる  文章が生きている
・複合動詞
 他の動詞が「生きる」の後に接続して、何らかの意味を付け加えている。
 「生き返る」は、死んだもの、死にそうなものがまた命を取り戻すこと。ひゆ的に、単に元気にな
ることも言う。
 「生き続ける」は、死んだりなくなったりしないでいること。抽象的なものにも言う。
 「生きながらえる」は、特に、死にそうな状況を通り抜けて長く生きること。硬い表現。
 「生き抜く」は、困難な状況の中で生きることを言う。
 「生き残る」は、ほかのものが死んでしまった状況で生きていること。
 「生き延びる」は、死にそうな状況の中で生き続けられたことを表す。
・スル動詞
 「長生き(ながいき)する」は、老人になるまで長く生きること。
  「生存する」は、生物が生きること。特に、(他のものが死ぬ中で)生き残ること。
◇いかす
 基本の文型は「人ガ 人・動物ヲ 生かす」で、「生き続けさせる(殺さない)」の意味になる。
   釣った魚を生かしておく  やつは殺すな。もう少し生かしておけ
  実際に多い使用例は、「モノ・コトを生かす(活かす)」という用法で、「ニ」で目的が示される。
   才能を仕事に生かす  時間を生かして使う 
・複合動詞「生かし切る」は、能力などを充分に生かすこと。


いきる(生きる) 一(いきない・いきます・いきて・いきれば・いきよう) 
[1]〔人・動物ガ (時ニ/ヲ) 生きる〕
 △いきたい  いきていたい  いきてきた  長くいきてみる  いきていたほうがいい
  いきなくてはいけない  いきるべきだ  いきられる  いきさせる  いきさせられる    いきようと思う  いきろ!
 △[のんびり/ゆったり/長く/自由(じゆう)に/平和(へいわ)に/明るく/仲(なか)よく]~。
  [あくせく/必死(ひっし)に/がんばって/したたかに/気ままに/孤独(こどく)に]~。
  [自力(じりき)で/自分なりに/人並み(ひとなみ)に/なんとなく/だらだらと]~。
 △[人間(にんげん)/人々(ひとびと)/女性(じょせい)/犬/虫(むし)/生物(せいぶつ)]が~。
 ・この動物は小さな虫を食べて生きています。
 ・お年寄(としよ)りが生きているうちに、古い歌やむかしのことを聞いておこう。
 ・両親(りょうしん)が生きている間に孝行(こうこう)をしなさい。
 ・生きているうちが花(はな)だ(=大切だ)。死んでしまっては何にもならない。
 ・この料理屋(りょうりや)は生きたさかなを飼(か)っていて、それを料理して出すんです。だか
  ら、生きがよくておいしいんです。
 ・「生きる」という映画(えいが)を見て、生きる勇気(ゆうき)がわいてきた。
 ・この刑務所(けいむしょ)から出られたら、こんどは正直(しょうじき)に生きていこうと思う。
 ・ガンになっても、生きられる間は、人生を楽しみながら生きていたい。
 ・重い病気になったときは、生きようという強い気持ちがいちばん大切です。
 △[現代/二十一世紀(せいき)/このような難しい時代/戦国(せんごく)の世(よ)]に~。
 ・19世紀に生きていた人が現代に生まれ変わったら、どう感じるのだろうか。
 ・現代に生きる我々は、明治(めいじ)の動乱(どうらん)の時代に生きた人々の心を忘れている。
  ・私のような古い頭の人間は、インターネットの時代に生きるのはつらい。
 △[二十一世紀(せいき)/毎日毎日/人生(じんせい)/日々(ひび)/老後(ろうご)]を~。
 ・毎日を楽しく生きるためには、まわりの人との関係を大切にすることが大事だ。
 ・死ぬときに、「私は私の人生を生きた」と自信(じしん)を持って言えるように生きたい。
 △[高齢化(こうれいか)社会/ネット社会]に~。
 ・これからの子どもたちは、ネット社会に生きていかなければならないのだから大変だ。
[2]〔人ガ ものニ 生きる〕
 △[愛(あい)/恋(こい)/仕事(しごと)/文学(ぶんがく)/教育(きょういく)/学問]に~。
 ・夫(おっと)は、今まで四十年間、仕事ひとすじに生きてきました。
 ・趣味(しゅみ)に生きるというほどのことではないのですが、釣(つ)りを50年続けています。
 ・うちのおじいちゃんは、仕事をやめてからは若い時の思い出(おもいで)に生きている。
 ・私にはほかに何もない。文学に生きよう。
[3]〔ものガ 生きる〕
 △[アイディア/お金/技術(ぎじゅつ)/経験(けいけん)/個性(こせい)/材料(ざいりょう)/
  精神(せいしん)/特徴(とくちょう)/廃物(はいぶつ)/文章(ぶんしょう)]が~。
 ・せっかくの絵(え)が、こんなきたない場所においたのでは生きない。
 ・この絵は、色は生きているが人物(じんぶつ)の表情(ひょうじょう)が死んでいる。
 ・たった一言(ひとこと)で、文章が生きることもあるし、死ぬこともある。
 ・この法律(ほうりつ)はまだ生きています(=有効(ゆうこう)です)。
 ・A:宝(たから)くじがあたったので、半分を親のいない子どもたちのために寄付(きふ)してきた。
  B:それは良い事をしたね。お金が生きるよ。

<複合動詞:いき->
[いきかえる]   人・ものガ 
 ・水をやったら、元気のなかった花が生き返った。
 ・帰り道が寒くて死にそうな気がしたけど、温かい風呂に入ったら、生き返ったよ。
   死者が  死んだ人間を生き返らせる
[いきつづける] 人・ものガ
 ・山田先生の精神は今でも生きつづけています。
 ・病気がちで苦しんでいますが、まだ何とか生き続けていますので、ご安心ください。
   理想・理念・夢・希望が  死にそうな状態で
[いきながらえる] 人ガ 
 ・私のような者がこの歳まで何とか生き長らえてこられたのは、師の教えによるものです。
 ・王亡きあと、おめおめと生き長らえて、何のかいがあろうか。後を追って殉死するのみだ。
   この世に 無事に 無為に おめおめと かろうじて どうにか 何とか
[いきぬく] 人ガ ものヲ
 ・きびしいよの中を生きぬく力を身につけなさい。
 ・祖母は苦しい時代を生き抜いてきた。
   現実・困難な時代・人生・戦争の時期・世の中・乱世を 一人で おおらかに
   純粋に 立派に どこまでも 何が何でも 要領よく 力を尽くして
[いきのこる] 人・動物ガ 
 ・ひこうきがおちて、ほとんどの人がなくなったが、子どもが一人だけ生きのこった。
 ・動物は子どもや卵をたくさん生むが、その中で生きのこるものはとてもすくない。
   競争に この世に 無事に 辛くも ただ一人 一人だけ たまたま 細々と
[いきのびる] 人・動物ガ 
 ・あの戦争と敗戦の混乱の時期を何とか生き延びてきた。
 ・人類は千年後まで生きのびることができるだろうか。
     小国が 戦火の中・戦後・戦場・何日か・激しい戦いを 巧みに しぶとく

<スル動詞>
[長生き(ながいき)する] 人・動物ガ 
 ・私の祖父はずいぶん長生き(を)した。
 ・長生き(を)するのはいいけれど、寝たきりはいやだな。
 ・この虫はけっこう長生きする。
[生存(せいぞん)する] 人・動物ガ 
  ・現在地球上に生存する生物は、これまでに存在した生物のほんの一部にすぎない。
  ・その時のメンバーで現在生存する者はわずか数名である。



いかす(生かす・活かす) 五(いかさない・いかします・いかして・いかせば・いかそう)
[1]〔人ガ 人・動物ヲ〕
 △いかしておく  いかしておこう  いかしておいてやる  いかすな!(=ころせ!)
 △[人/人質(ひとじち)/捕虜(ほりょ)/魚(さかな)/虫(むし)]を生かしておく。
 ・つった魚は、水に入れて生かしたまま持って帰ったほうがいい。そのほうが新鮮(しんせん)な
  魚が食べられる。
 ・あいつらを殺すな。人質として生かしておいて、政府と交渉(こうしょう)しよう。
 ・あんなやつらを生かすな! みんな殺してしまえ! 
[2]〔人ガ ものヲ〕
 △いかしたい  いかしてほしい  いかしてみる  いかしたほうがいい
  いかすべきだ  いかさなければならない  いかされる  いかせ!   
 △[うまく/じょうずに/有効(ゆうこう)に/できるだけ/十分に]~。
 △[良さ/持ち味(もちあじ)/個性(こせい)/長所(ちょうしょ)/特徴(とくちょう)/特性(とく
   せい)/才能(さいのう)/技能(ぎのう)]を~。
  [知識(ちしき)/教訓(きょうくん)/経験(けいけん)/体験(たいけん)/時間/お金]を~。
  [機会(きかい)/チャンス/条件(じょうけん)/環境(かんきょう)]を~。
 ・この研修(けんしゅう)で覚えたことを仕事の中でじょうずに生かしてほしいと思う。
 ・友だちが季節(きせつ)の材料(ざいりょう)を生かして、料理(りょうり)を作ってくれた。
 ・材料の持ち味を生かすのも殺(ころ)すのもコックの腕(うで)しだいだ。
 ・絶妙(ぜつみょう)な味付けが素材(そざい)のうまみを実にうまく生かしています。
 ・子どもが交通事故(こうつうじこ)にあってしまったのは残念だが、この機会を生かしてほかの子
  どもたちに事故のこわさを教えよう。
 ・あき時間を生かして漢字(かんじ)の練習(れんしゅう)をすることにしています。
 ・むかし警官(けいかん)をやっていた父は、今その経験を生かしてガードマンをやっています。
 ・与(あた)えられた条件を生かして、できる限りのことをやってみたい。
 ・私の個性(こせい)を生かせる職場(しょくば)で働きたい。(生かす:生かせる)
 ・あんな仕事では、彼女の能力(のうりょく)はぜんぜん生かされない。残念だ。
[3]〔人ガ ものニ ものヲ〕
 △[経験(けいけん)/知識(ちしき)/反省(はんせい)]を生活(せいかつ)に~。
 ・きょうの体験(たいけん)を生活(せいかつ)に生かして、むだのない生活をしましょう。
 ・この道路(どうろ)の設計(せっけい)には、命(いのち)を大切にする精神(せいしん)が生かされて
  いる。(=精神が生きている)
 ・この憲法(けんぽう)には平和(へいわ)を重んじる理念(りねん)が生かされている。
  ・集めた資料(しりょう)を議論(ぎろん)にうまく生かして論文を書き上げることができた。

<複合動詞:いかし->
[いかしきる] 人ガ ものヲ ものニ 
 ・経験を生活に生かしきっていない。
 ・この選手は、自分の恵まれた能力を活かしきっていないように思われる。
 ・部下のそれぞれの能力を生かし切れないまま、プロジェクトが終わってしまい、残念だ。

〔3〕育つ・育てる

 人・動物が生まれた後のことに関する動詞表現を考える。
 赤ん坊やヒナは、次第に「大きくなる」。あるいは「育つ」「成長する」。人の場合、「背が伸びる」
も使う。ある時期になると、成長が止まり、「成熟する」。人の場合、「大人になる」という言い方を
する。(能力的に「一人前になる」という表現もある。)
   子どもが 大きくなる/育つ/成長する   子どもが 大人になる/一人前になる
 組織や精神的なものは、自然に大きくなるものではないが、「育つ」という言い方が使える。
   新しい企業が育つ/成長する   自立心が育つ
 「育つ」に対応する他動詞は「育てる」。何かが「育つ」ように人がし向けること。「成長する」
の使役形「成長させる」も使われる。企業などは「大きくする」が言えるが、「人を大きくする」は
使いにくい。ひゆ的な意味で、精神的な面についてなら言える。
      子どもを 育てる/成長させる   ?子どもを大きくした  経験が若者を大きくする
   企業を 育てる/成長させる/大きくする

◇そだつ
 「育つ」は、動物が生まれて、あるいは植物が生えてから、次第に大きくなっていくこと。
  人の場合、「大人になる」まで。 (植物の例 →「植物」の「育つ」を)
  人・ものガ そだつ
   ヒナが育つ  子どもがすくすく育つ
 場所は、「所デ」が一般的に使える。「所ニ」は、書きことば。
   東京で育った   都会に育つ
  「育った」結果、なった状態を「ものニ」で表す。
  人・ものガ ものニ そだつ
   大人に育つ  立派な音楽家に育つ
 この結果の「ものニ」は、「ものガ」の文型で表すこともできる。
   立派な音楽家が育つ   後継者が育たない     (?大人が育つ)
 出発点として「ものカラ」が使われる。
   この学校から多くの音楽家が育った
 ひゆ的に、人・動植物以外の精神的なものもガ格になる。
   才能が育つ  愛・友情が 育つ
 使役形「育たせる」は、それ自体が「育つ」力を持っていて、それを十分に生かすという意味合い。
      その子の才能を育たせる
 スル動詞「成長する」は、望ましく育つことを表し、企業などにも広く使える。「発育する」「生
育する」は硬い表現で、動物に使う。「成熟する」は、動物が個体として十分に育つこと。

◇そだてる
 「育てる」は、人が、何かが「育つ」ようにすること。
  人・ものガ 人・ものヲ そだてる
   子どもを育てる  親鳥がヒナを育てる
  結果を「ものニ」で示す。何らかの特質を持った状態を示す。
  人・ものガ 人・ものヲ 人・ものニ そだてる
   息子を立派な一人前の男に育てる  優れた芸術家に育てる
 結果の状態を「ものを」としてとることもできる。
   優れた作家を育てたい
  ひゆ的に社会的な組織・精神的なものを「ものヲ」としてとる。抽象的な「ものガ」もある。
   ベンチャー企業を育てる  愛・夢を 育てる    環境・地位が 能力を育てる
  使役形「育てさせる」は、人に「育てる」ことをさせることを表す。受身形は「育てられる」。
      子どもに青虫を育てさせる      愛情いっぱいに育てられた子ども
 複合動詞「育て上げる」は、人や動物を、十分な状態になるまで育てること。
  スル動詞「育成する」は、「育てる」の書きことば。「養成する」は、訓練をしたりして、ある能力
(を持つ人間)を育てること。「養殖する」は、漁業のために魚介類などを人工的に育成すること。

◇はぐくむ
  「はぐくむ」は、子をかわいがり育てること。ひゆ的に、抽象的なものが発展するようにすること。
  人・ものガ 人・ものヲ  はぐくむ
   子どもを大切に育む  愛・自由・思想を 育む
 スル動詞「保育する」は、乳幼児を保護して育てること。特に、そのための施設で預かること。
◇やしなう
 「養う」は、食物などを与えて育てること。また、生活できるように面倒を見ること。
  人ガ 人ヲ やしなう
   家族・妻子を 養う  年老いた両親を養う
 スル動詞「扶養する」は、生活の世話をして養うこと。「養育する」は、子供を養って育てること。
◇かう
 「飼う」は、動物を養い育てること。
  人ガ  動物ヲ かう
   牛を飼っている  ネコを飼いたい
 複合動詞「飼い慣らす」は、動物を飼って人になれるようにすること。    
 スル動詞「飼育する」は、家畜やペットを飼って育てること。 


そだつ(育つ)五(そだたない・そだちます・そだって・そだてば) 
[1]〔人・ものガ〕
 △そだちにくい  そだちすぎる  そだっていく  そだってほしい  そだつようにする
 △[よく/おおきく/立派(りっぱ)に/しっかり/じょうぶに/すくすく/のびのび]~。
  [苦労(くろう)を知らずに/何不自由(なにふじゆう)なく/甘やかされて/わがままに]~。
  [たくましく/タフに/苦労して/人にもまれて/逆境(ぎゃっきょう)に]~。
 △[子供(こども)/青少年(せいしょうねん)/自立心(じりつしん)のある人間/いい子]が~。
  [社員/技術者(ぎじゅつしゃ)/部下(ぶか)/若手(わかて)/後継者(こうけいしゃ)]が~。
  [芸術家(げいじゅつか)/ピアニスト/名優(めいゆう)/優(すぐ)れた学者]が~。
 ・生まれたのは横浜(よこはま)ですが、東京で育ちました。
 ・わたしは海のそばで育ったので、泳ぐのが上手だ。
 ・この学校では優秀(ゆうしゅう)な人材(じんざい)がたくさん育っている。
 ・この子はよくできた子だから、育っていく先が楽しみだ。
 ・私が卒業した大学から優れた研究者が多く育ってきた。この私のように、というのは冗談です。
 ・この大学のようなやり方をしているのでは、よい研究者は育たない。
 ・子供は、親(おや)の願(ねが)い通(どお)りにはなかなか育たないし、また、そう育てばいいとい
  うものでもない。
 ・子供は、丈夫(じょうぶ)に育ってくれさえすれば、ほかに特別な希望(きぼう)はありません。
 ・後継者が育ってくれなければ、せっかくの技術(ぎじゅつ)が滅(ほろ)んでしまう。
 ・新しい企業(きぎょう)が育っていかないと、地域(ちいき)が発展(はってん)しない。
[2]〔人・ものガ ものニ〕
 △[一人前/じょうぶな子]に~。
 ・私はごく当たり前の人間に育ちました。親がそう育ててくれたことに感謝(かんしゃ)しています。
 ・息子(むすこ)がはやく一人前(いちにんまえ)に育ってくれるように願っている。
 ・この子は心の優(やさ)しい娘(むすめ)に育ってほしい。
 ・我々の小さな会社が大企業に育っていくことを夢見(ゆめみ)ている。

<スル動詞>
[成長(せいちょう)する] 人・ものガ
  ・会社が成長するにしたがって、彼の地位も上がって行った。
 ・経済が成長するためには、国民の教育が要だ。
[発育(はついく)する] 人ガ
 ・よく発育(を)した体をせいいっぱい使って、小学生たちがサッカーをやっている。
 ・赤ちゃんが順調に発育(を)するには、親の愛情と十分な栄養が不可欠です。
[生育・成育(せいいく)する] 人・ものガ  (生育は植物、成育は動物だという)
 ・稲が生育していくのを見ると、ほんとうに自然の力を感じる。
 ・孫たちも順調に成育しているようで、うれしく思う。
[成熟(せいじゅく)する] 人・ものガ
 ・精神的に成熟していない若者たちがさまざまな問題を引き起こす。
 ・彼女はすっかり成熟した体を武器にして、男たちを翻弄した。


そだてる(育てる)一(そだてない・そだてます・そだてて・そだてれば・そだてよう)
[1]〔人ガ 人・ものヲ〕
 △そだてたい  そだてやすい  そだててほしい  そだててみる  そだててきた
  そだてなければならない  そだてようとおもう  そだてさせる  そだてられる
 △[うまく/大きく/じょうぶに/しっかり/立派(りっぱ)に/たくさん/数多く]~。
  [大切に/慎重(しんちょう)に/のんびり/ゆっくり/急いで/てきとうに]~。
 △[子ども/植物(しょくぶつ)/草花(くさばな)/苗(なえ)/牛(うし)/馬(うま)/ペット]を~。
  [選手(せんしゅ)/新人(しんじん)/若手(わかて)/後継者(こうけいしゃ)/後輩(こうはい)/
  部下(ぶか)/専門家(せんもんか)/技術者(ぎじゅつしゃ)/パイロット/プログラマー]を~。
 ・母は店をやりながら、五人の子を育てた。
 ・若手研究者(わかてけんきゅうしゃ)を育てることも学者の仕事の一部です。
 ・この動物園では前にパンダの赤ちゃんを育てたことがある。
 ・大事な男の子だから大切に育てようとして、かえってわがままな人間になってしまった。
 ・この両親(りょうしん)に育てられたことを誇(ほこ)りに思います。
 ・子供にミニトマトを育てさせた。小さな赤い実をつけた時は、ほんとうに喜んだ。
 ・この部署(ぶしょ)を我が社で最高の部署に育てたいと思う。諸君(しょくん)も協力してほしい。
[2]〔人ガ 人・ものヲ 人・ものニ〕
 △[じょうぶな子/りっぱな人/大物(おおもの)]に~。
 ・この子は心の優しい子に育てたい。この子の母のように。(つまり私のことですが、、、)
 ・わたしを今日(こんにち)のわたしに育ててくれたのは、南先生です。
 ・じぶんの子どもを悪人(あくにん)に育てようと思う親はいない。

<複合動詞:そだて->
[そだてあげる] 人ガ 人ヲ
 ・五人の子供を無事に育て上げるのは大変なことだった。
 ・この子を一人前に育て上げるまではがんばらなくてはならない。
      子供・スター・娘・忘れ形見・研究会を 女手一つで 立派に 細心に
<スル動詞>
[育成(いくせい)する] 人ガ 人・ものヲ
 ・新しい苗を育成しようと思って、農園を拡張した。
 ・若い選手を育成するには、よいコーチが必要だ。
[養成(ようせい)する] 人・ものガ 人・ものヲ
 ・コンピュータの技術者をもっと養成する必要がある。
 ・新しいタイプの人材を養成しないと、企業は生き残れない。
   医師・オペレーター・官吏・教員・子弟・将校・職人・人材・操縦士・俳優・人を
 [~の養成をする]
  ・この学校ではパイロットの養成をしています。
[養殖(ようしょく)する] 人ガ ものヲ
 ・この池ではエビを養殖しています。
 ・天然のウナギと、養殖されたものではやはり味が違う。
   エビ・カキ・魚・真珠・ノリを


はぐくむ(育む) 五(はぐくまない・はぐくみます・はぐくんで・はぐくめば・はぐくもう)
[1]〔人ガ 人・ものヲ〕
 △はぐくんできた  はぐくまれる  
 △[大切に/宝物(たからもの)のように/ゆっくり/静かに/温(あたた)かく]~。
  △[子ども/次の世代(せだい)/命(いのち)/生命(せいめい)/愛/心/夢(ゆめ)]を~。
  ・子をはぐくむのは親ばかりではない。子は、地域(ちいき)や自然によってはぐくまれるのだ。
 ・子供が素直(すなお)な夢をはぐくめるような社会であってほしい。
  ・愛国心(あいこくしん)というものは、国家(こっか)が育もうとして育めるものではない。    
  ・この過酷(かこく)な風土(ふうど)が世界に広がる思想(しそう)を育んだのだ。
  ・彼女の心の奥(おく)で、長い、長い時間をかけてすばらしい作品が育まれてきたのです。    
   
<スル動詞>
[保育(ほいく)する]  人ガ 人ヲ
 ・働く女性の子供を保育する施設が不足している。
 ・うちでは0歳児から保育しています。


やしなう(養う) 一(やしなわない・やしないます・やしなって・やしなえば・やしなおう)
[1]〔人ガ 人・ものヲ〕
 △やしないたい  やしなってほしい  やしなってもらう  やしなってはいけない
  やしなうべきだ  やしなわなければならない  やしなわせる  やしなわれる
  やしなえ!  やしなうな!  やしなえない  
 △[愛情(あいじょう)を持って/いやいや/一生懸命(いっしょうけんめい)/何とか]~。
 △[子ども/家族(かぞく)/一家(いっか)/妻子(さいし)/人材(じんざい)/牛/馬]を~。
  [実力(じつりょく)/気力(きりょく)/忍耐力(にんたいりょく)/体力(たいりょく)]を~。
 ・戦争(せんそう)のあと、おおぜいの子どもたちを養っていくのが大変だった。
 ・妻子(さいし)を養うのは男の当然(とうぜん)の義務(ぎむ)だ。
 ・両親(りょうしん)を亡(な)くした私は、叔父(おじ)に養われました。
 ・社会で生き抜くためには、まず十分な仕事の実力を養わなければならない。
 ・この大学では困難(こんなん)に打ち勝つ精神力(せいしんりょく)を養うことを目標(もくひょう)
  にしている。

<スル動詞>
[扶養(ふよう)する]  人ガ 人ヲ
 ・夫に扶養されているという意識が、私の心を押さえつける。
 ・両親を扶養しているということで、税金がいくらか安くなっている。
[養育(よういく)する]  人ガ 人ヲ
  ・彼女は5人の子供を養育して、社会の一員として送り出した。
 ・私は早く両親を亡くし、親戚(しんせき)の家で養育された。

かう(飼う) 一(かわない・かいます・かって・かえば・かおう) 
[1]〔人ガ ものヲ (ものニ)〕
 △かいたい  かってほしい  かってもいい  かってはいけない  かえない 
  かおうとおもう  かわれる  かうな!  
 △[たくさん/大事に/家族の一員(いちいん)として/一匹(いっぴき)だけ/つがいで]~。
 △[犬/ねこ/小鳥(ことり)/金魚(きんぎょ)/ペット/ヘビ/馬/牛/ニワトリ/ブタ]を~。
 ・子どもがねこを飼いたいというのだけど、家の中が荒(あ)らされそうで、どうもねえ。
 ・マンションでペットを飼うのは難しいと言われるが、どうなんだろうか。
 ・家畜(かちく)を飼っている農家(のうか)は、この辺では少なくなってきた。
 ・爬虫類(はちゅうるい)をペットに飼う人が増えているそうだ。かわいいのだろうか。
 ・このあたりは人通(ひとどお)りが少ないので、番犬(ばんけん)を飼ったほうがいい。
 ・あの大きな屋敷(やしき)では番犬にドーベルマンを飼っているそうだ。

<複合動詞:かい->
[かいならす] 人ガ ものヲ
 ・田舎の祖母は、迷子になったらしいタヌキを飼い慣らそうとしている。
 ・入社当時は、自分の力で会社を変えていこうと思ったんだが、どうも飼いならされてしまったよ  うだ。
<スル動詞>
[飼育(しいく)する]  人ガ ものヲ
 ・動物実験のためにマウスを飼育しているが、かわいくなってしまい、実験がやりにくい。
 ・叔父さんはブロイラーを飼育して一儲けしようと考えている。
 [~の飼育をする]
  ・戦後しばらくはニワトリの飼育をして生計を立てていた。

〔4〕老化
 老化に関する動詞表現。「老いる」「老ける」は否定的な意味合いがある。より中立的な、「年をと
る」が日常的な表現。
   彼も老いた  ずいぶん老けてきた  毎年、年を取るのはだれでも同じ
◇おいる
 「老いる」は、人生の半分を過ぎ、体も頭も動かなくなっていくということ。ひゆ的に、考え方な
どについても言う。「老いている」は結果の状態を表す。名詞修飾は「老いた」の形を使う。
   足・考え方が 老いている  老いた体 
 複合動詞「老い込む」は、年をとって衰えること。
◇ふける
 「老ける」は、外見が実際の年齢以上に年を取っているように見えること。「老けている」は結果
を表し、名詞修飾は「老けて」の形を使う。
   顔が老けている  老けた歩き方・考え方
  複合動詞「老け込む」はひどく老けてしまうこと。
 スル動詞「老化する」は、時間とともに起こる体の変化を表す、科学的な表現。「老衰する」は、
年をとって心身が衰えること。
◇としをとる
 「年をとる」は、いちばん日常的な表現で、若い人にも言えるが、名詞修飾「年(を)取った」の形
では老人に使う。
   誕生日が来て、1歳としを取る  年を取った人
◇ぼける
  「ぼける」は、年をとって頭が鈍くなってくること。画像などがぼんやりしていることにも言う。


おいる(老いる)  五(おいない・おいます・おいて・おいれば)
[1]〔人ガ〕
 △おいたくない  おいてきた  おいてはいけない  おいてしまう
  おいないようにがんばる  おいさせる  おいるな!  
 △[急に/ぐっと/すっかり/めっきり/着実(ちゃくじつ)に/石が坂をころがるように]~。
  △[体/足/筋肉(きんにく)/頭/精神(せいしん)/考え方/心]が~。
  ・なすこともなく老いていくのは悲しい。
 ・人間は老いてくると、若者(わかもの)をうらやむ気持が出てくるので、口が悪くなる。
 ・年をとったんだから、まあ、のんびりとしてください、などということばが人を老いさせる。
  ・老いては子に従(したが)えというが、その子が何とも頼(たよ)りないのはどうしたらいいんだ。
 ・小さな孫(まご)をあやす老いた母を見ていると、なんだか人生というものを考えてしまう。
  ・老いた体にむち打って、もうひとがんばりするか。

<複合動詞:おい->
[おいこむ] 人ガ 
 ・晩年の父は、すっかり老い込んでしまい、元気なころの父を思い出すと悲しかった。
 ・人生は昔よりずっと長くなった。還暦や古希と言っても老い込むにはまだ早い。
      老い込んだ姿  すっかり・めっきり ~にはまだ早い


ふける(老ける)  五(ふけない・ふけます・ふけて・ふければ)
[1]〔人ガ〕
 △ふけたくない  ふけてきた  ふけてはいけない  ふけないようにする  ふけさせる
 △[だんだんと/急に/とみに/いちだんと/がくんと/めっきり/目に見えて]~。
  △[頭/顔(かお)/見た目/外見(がいけん)/歩き方/言うこと/趣味(しゅみ)]が~。
  ・最近、我(われ)ながらがくんと老けてきたように感じる。
 ・ずいぶん老けて見えるらしく、電車の中で席(せき)を譲(ゆず)られることが多くなった。
 ・顔が老けないように、若く見えるように、女性たちは多くの金を費(つい)やしてきた。
 ・若い時から老けて見えると言われてきたが、最近やっと年相応(としそうおう)に見られるように
  なった。
 ・なんだか老けた顔をした犬だね。小さい時からこういう顔なんだろうけど。
 ・盆栽(ぼんさい)と落語(らくご)だなんて、またずいぶん老けた趣味だね。え?フランス人?

<複合動詞:ふけ->
[ふけこむ] 人ガ 
  ・うちの母は最近急に老け込んできて、めっきり元気がなくなってきた。
 ・あんまり老け込んだようなことを言うなよ。聞いている方が悲しくなる。
<スル動詞>
[老化(ろうか)する]  人ガ
 ・体が老化するのを防ぐには、まず食事と、そして適度な運動だ。
 ・脳が老化するのを止める手だてはない。
[老衰(ろうすい)する]  人ガ
 ・長い間いっしょに生きてきた犬が老衰してきて、散歩もできなくなってしまった。
 ・老衰して、家族の顔もわからなくなってしまうのは、悲しい。


としをとる(年を取る)  五(とらない・とります・とって・とれば)
[1]〔人ガ〕
 △としをとりたくない  とっていく  とってしまう  とらないわけにはいかない
 △[めっきり/目に見えて/知らないうちに/気づいたら]としをとっていた
 ・お互いにずいぶん年を取りましたねえ。還暦(かんれき)だものねえ。
 ・年を取れば取るほど、時間が貴重(きちょう)になってくる。
 ・年は取らないわけにはいかないが、むだに取らないように心がけている。
 ・電車の中で中学生の女の子が、「年とっちゃったねえー」などと言っていた。ふーむ。


ぼける(惚ける)  五(ぼけない・ぼけます・ぼけて・ぼければ)
[1]〔人ガ〕
 △ぼけたくない  ぼけてきた  ぼけてはいけない  ぼけないようにする  ぼけさせる
 △[だんだんと/急に/とみに/いちだんと/がくんと/めっきり/目に見えて]~。
  ・近頃(ちかごろ)どうもぼけてきたらしく、人の名前が思い出せないことが多くなった。
 ・ぼけないようにするには、まず頭を使うこと。パズルをやるのもいいらしい。
 ・まわりの家族が年寄(としよ)りの世話を焼きすぎると、かえってぼけさせることになる。
  ・この写真はピントがぼけていて、顔がはっきりわからない。

〔5〕死ぬ・殺す
  「死ぬ」は、人・動物が「生きている」状態からそうでない状態に変化すること。
 植物の場合は、「死ぬ」よりも「枯れる」「朽ちる」などが使われる。
 「殺す」は、「死ぬ」に対応する他動詞で、他の人・動物が「死ぬ」ようにすること。

◇しぬ
 「死ぬ」は状態の変化を表す。変化は瞬間的に起こると見なされ、「死ぬ途中」の時間は考えられ
ない。「死んでいる」は「死んだ」あとの状態を表す。
    生きている → 死ぬ → 死んでいる  
    動物園のゾウが死んだ  このセミは(もう)死んでいる
    この虫は死んだふりをしているだけだ。本当は生きている (死んでいるふり)
 名詞修飾では、「死んだ」という形は「過去に死んだ」ことを表す場合と、「過去に死んで、現在
死んでいる」状態を表す場合がある。 
       この戦いで死んだ兵士の数はわからない (過去の事柄を表す)
       死んだセミにアリが集まっている        (現在の「死んでいる」という状態を表す)
  「死んでいるセミ」という言い方はふつうしない。上の例の「死んだふりをする」は「死んでいる
ふりをする」とも言える。
 死に近い状態は「死にそうだ」「死にかけている」などで表される。死に近づいていく状態は「死
につつある」で表せるが、書き言葉でかたい表現。
    家の犬が病気で死にそうだ/死にかけている 
・場所の「デ/ニ」
  一般的には「所デ」が使われる。
    病院・畳の上・海・戦場で 死ぬ
 「所ニ」は文学的な表現として使われる。
    彼は海に生き、海に死んだ   ベニスに死す(小説の題名)
  ただし、「~ている」の形で、存在を表す描写として「所ニ」が使われることがある。
    道にネコが死んでいる (死んだ場所というより、ネコの死体が今ある場所として)
・「年齢+デ」
  死んだときの年齢は「デ」で示す。            
    80歳で死ぬ  1歳3か月で死んでしまった
・使役形・受身形の表現
 使役形「死なせる」は、その死に自分が責任を感じていることの表現として使われることがある。
 受身形「死なれる」は、いわゆる「迷惑の受身」として使われる。
    病気で小さい子供を死なせてしまった     親に死なれて苦労する
・ひゆ的表現
 「死ぬ」は人・動物に使うのが基本だが、ひゆ的に「元気がない」状態を表すために使われる。
    目・文章が死んでいる   死んだような町
 また、疲れ・暑さなどを大げさに強調するために使われる。
    死ぬほど 暑い・疲れた   腹が減って死にそうだ 
◇なくなる・なくす
  「亡くなる」は、「死ぬ」という言葉をさけた、もっとも一般的な表現。「亡くす」は死んだ人を
ヲ格にとるが、大事な人に死なれることを表す。
      人ガ なくなる / 人ガ 人ヲ なくす 
       有名人が亡くなる  大切な子どもを亡くす
・複合動詞        
 基本的な「死ぬ」の意味に、何らかの意味を付け加えているもの。
 「死に急ぐ」は、自分から進んで早く死のうとすること。
 「死に後れる」は、他の人より死ぬのがあとになったこと。(を残念に思う表現)
 「死にかかる」は、死にそうになること。「死にかける」も、死にそうになること。
 「死に損なう」は、死にそうになったが死ななかったこと。
 「死に絶える」は全部が死んでしまうこと。「死に別れる」は、死んでしまい、会えなくなること。
 死ぬときの状況を表す動詞が「死ぬ」の前に来るもの。
 「おぼれ死ぬ」は、おぼれて死ぬこと。「凍え死ぬ」は、寒さで凍えて死ぬこと。
 「焼け死ぬ」は、火事などで死ぬこと。
・スル動詞
  「死ぬ」という直接的な表現を避けるためもあって、類義のスル動詞が多い。家族のことに使うも
 のと、家族以外の人の場合、あるいは社会的・客観的な場合に使うものとで使い分けがある。
 「死去する」は、客観的な言い方。社会的なことにも、身内のことにも使える。
 「死亡する」は、社会的な事実の表現として使われる。
 「他界する」は、他の世界へ行くという表現で、身内のことでも他の人のことでも言える。
 「逝去する」は、他人の死を敬って言う表現で、改まった場合に言う。
 「夭折する」は、若くして死んだ人で、特に才能を惜しむ場合などに使われる。
 その他、皇室だけに使われる尊敬表現も多い。(「崩御する」「薨去する」など)
 また、複合動詞と同様に、死ぬときの状況を表すスル動詞も多い。
 「殉職する」は、仕事上の事故などで死ぬこと。
 「戦死する」は、戦争で戦って死ぬこと。一般市民には使わない。
 「自殺する」は、自ら死ぬこと。「心中する」は、恋人や家族などと一緒に自殺すること。
 「身投げする」は、高いところから飛び降りるか、水に飛び込んで自殺すること。
◇ころす
 「殺す」は、人・動物が、他の人・動物が「死ぬ」ようにすること。
   人ガ 人ヲ ころす
    兵士が敵を殺す 
 「殺す」ことが実現するのは瞬間的なものである。「~ている」の形は、基本的に継続を表さない。
   ×大変です。今、隣の奥さんがご主人を殺しています (→ 殺そうとしています)
       今、妻は花についた虫を殺している (虫は複数で、時間がかかる)
  殺す対象は基本的に人・動物だが、ひゆ的な用法では抽象的な名詞もとりうる。
    子供の才能を殺す  感情を殺して話す
  受身の形「殺される」がよく使われる。使役の形は「人ガ人ニ人ヲ殺させる」。
・複合動詞
 「殺し合う」は、人の集団と集団が互いに相手のメンバーを殺すこと。
  「殺し尽くす」は、対象をすべて殺すこと。
 殺し方を表す複合動詞が多い。「~て殺す」という意味を表す。
 「打ち殺す」「かみ殺す」「斬り殺す」「食い殺す」「けり殺す」「刺し殺す」「絞め殺す」「叩き殺す」
 「突き殺す」「ひき殺す」「焼き殺す」など。
 「とり殺す」は、霊などが人にとりついて殺すこと。
・スル動詞
 「暗殺する」は、政治家などを密かに殺すこと。「虐殺する」は、残虐なしかたで殺すこと。
  「射殺する」「銃殺する」「毒殺する」は、殺す方法を示す。


しぬ(死ぬ)五(しなない・しにます・しんで・しねば・しのう) 
[1]〔人ガ〕
 △しにたい  しにそうだ  しにかける  しんでしまう  しんでいく
  しんではいけない  しななければならない  しのうとする  しなせる  しなれる
    しねる  しね!  しぬな!
 △[おおぜい/何人も/つぎつぎと/いつか/とうとう/ぽっくり/急に/とつぜん]~。
    [苦しまずに/安らかに/眠るように/ひとり寂(さび)しく/孤独(こどく)に/むなしく]~。
  [病気(びょうき)/ガン/交通事故(こうつうじこ)/火事(かじ)/戦争(せんそう)]で~。 
 △[家族(かぞく)/親(おや)/子供(こども)/知り合い/有名人/だれか/猫(ねこ)]が~。
 ・彼は2007年に56歳で死んだ。
 ・病気で死にかけたが、医者のおかげで何とか死なないですんだ。
 ・海でおぼれかけて、ほとんど死にそうになった。
 ・世界をヒッチハイクで旅行して、何度も死にそうな目に遭(あ)った。
 ・道に猫がいっぴき死んでいる。市役所(しやくじょ)に電話すればかたづけてくれるだろうか。
 ・犬のタロウが死んでしばらくの間、子供はよく思いだして泣いていた。
 ・交通事故で死ぬことがあるかもしれないので、いつ死んでもいいように、かんたんな遺書(いし
  ょ)を書いておいた。こうしておくと、かえってなかなか死なないかもしれない。
 ・自殺する人が増えている。他の人から見れば、死ななくてもいい人たちが、死んでしまう。
 ・彼は妻(つま)に死なれて困っていたが、さいきんは何とか一人で暮(く)らしているようだ。
 ・子供がまだ赤ん坊の時、病気で死なせてしまった。
 ・「きみは国のために死ねるか」などと言う人がいる。人は国のために生きているのではない。
  人が生きるために国があるのだ。
 ・乗っていた船が沈んでしまったとき、「こんなことで死んでたまるか」と思い、うきわにつかま
  って一晩(ひとばん)海の上をただよっていた。
 ・自転車(じてんしゃ)で転(ころ)んだ時、後ろから車が来ていたが、何とか止まってくれた。ほん
  とうに、もう少しで死ぬところだった。
 ・今日は死ぬほど(=ひじょうに)暑い。
 ・あの会社では死ぬほど働かされた。過労死(かろうし)する前にやめた。
 ・若者たちがおおぜい戦場(せんじょう)で死んでゆく。若者を死なせた政治家たちは生き延びる。
 ・死んだ人々は、還ってこない以上、
  生き残った人々は、何が判ればいい? (ジャン・タルジューの詩から 渡辺一夫訳)
[2]〔ものガ〕
 ・昼間(ひるま)にぎやかだった町は、今、死んだように眠っている。
 ・二日酔(ふつかよ)いだと言っていたが、なるほど彼は目が死んでいる。(=元気がない)
 ・今この計画を止めてしまったら、今まで使った大金(たいきん)が死んでしまうじゃないか。
 ・生き生きとした文章(ぶんしょう)と、反対に死んだような文章がある。


なくなる(亡くなる)  五(なくならない・なくなります・なくなって・なくなれば)
[1]〔人ガ〕
  △なくなりかける  なくなりかねない  なくなりそうだ  なくなってしまう 
 △[すぐ/とうとう/ついに/残念なことに/おしまれて/次々と/後を追うように]~。
 △[母/父/姉/兄/妹/弟/夫(おっと)/妻(つま)/友だち]が~。
 ・父が亡くなってから、もう3年になります。(=父が死んでから3年です)
 ・私は亡くなった父にだんだん似て来たそうです。
 ・母は3年前に亡くなりました。
  ・あの戦争(せんそう)で、多くの人が亡くなった。その死を忘れてはいけない。
 ・戦争で市民が亡くなった、などと言うが、「亡くなる」などというものではない。殺されたのだ。
  相手の国と、戦争を避(さ)けられなかった自分の政府(せいふ)に。


なくす(亡くす)  五(なくさない・なくします・なくして・なくせば)
[1]〔人ガ 人ヲ〕
 △なくしかける  なくしかねない  なくしたくない  なくしてしまう  なくしてきた
 △[次々(つぎつぎ)に/この数年の間に/相次(あいつ)いで/悲しいことに]~。
 △[母/父/姉/兄/妹/弟/夫(おっと)/妻(つま)/娘(むすめ)/息子(むすこ)友だち]を~。
 ・わたしは5さいの時に母を亡くして、それから父にそだてられました。
 ・昨年(さくねん)ガンで娘を亡くしました。
 ・あの事故で、私はいちばん仲(なか)の良かった友だちを亡くしました。
 ・(私たちは)おしい人を亡くしてしまいました。

<複合動詞:しに->
[しにいそぐ] 人ガ
 ・むやみにオートバイなど乗り回したりして、そんなに死に急ぐことはないだろう。
 ・大した挫折も経験せずに、すぐに人生に見切りをつけて死に急ぐ若者が増えた。
   薬を飲まず~ ~人々 人生~ことはない 勇者は~べきではない
[しにおくれる] 人ガ 
 ・友達はみんな死んでしまった。長生きするとは、つまりは死に後れたということだ。
 ・戦争で友の多くは死に、私一人死に遅れて、生き恥をさらしている。
   夫・妻に ~て生き恥をさらす
[しにかかる] 人ガ 
 ・戦争で何度も死にかかったが、絶対に生きて帰ってやると思って生き延びた。
 ・神社の長い石段で転び、危うく死にかかった。お賽銭をケチったからかなあ。
   くたくたで 何度も 池にはまって 事故って
[しにかける] 人ガ 
 ・飼っている犬が病気で死にかけ、子供が大泣きに泣いた。何とか助かった。
 ・私はいろいろ病気持ちで、何度も死にかけたが、幸いまだ生き続けている。
   父親が 鳥が 危うく 災難にあって
[しにそこなう] 人ガ
 ・30年自転車に乗っていて、一度だけ死に損なったことがある。
 ・自殺しようとしたが、薬の分量を間違え、死に損なった。やはり知識は大切だ。
      危うく 一度
[しにたえる] 人・ものガ
 ・こんなことを繰り返していたら、人類は遠からず死に絶えてしまうだろう。
 ・この種類の虫はもう日本では死に絶えてしまったそうだ。
   一族・家畜・魚・万物が
[しにわかれる] 人ガ 人ト/ニ
 ・わたしは十才の時に母と死に別れた。
 ・夫と死に別れて十年になりますが、今でも夫を愛しています。
      親・父・母親・夫・妻と/に
<複合動詞:-しぬ>
[おぼれしぬ]  人ガ
 ・きょうも海で人が溺れ死んだそうだ。遊びに行って死ぬなんて。
 ・プールで泳いでいたら、突然足がつっておぼれ死にそうになった。
   海・プール・川・池・沼・水泳禁止区域で  酒を飲んでいて
[こごえしぬ]  人ガ
 ・雪の中で凍え死ぬというのは、決してロマンチックなものではない。
 ・ガイドのミスのために登山客が凍え死ぬという事件があった。
 ・記録的な大雪が降り、停電になった地域では何人かの人が凍え死んだそうだ。
 ・雪山で遭難し、凍え死にそうになったが、何とか救助された。
[やけしぬ] 人ガ
 ・地震のときに起きた火事で多くの人が焼け死んだ。
 ・豚小屋が火事になり、たくさんの豚が焼け死んだそうだ。うまい焼き豚になったかどうか。
  牛・鶏・人間・人・豚が 山火事で 逃げ遅れて

<スル動詞>
[死去(しきょ)する] 人ガ
 ・前大統領が死去した年に革命が起こった。
 ・父は秋にガンを発病し、翌年の春に死去した。
[死亡(しぼう)する]  人ガ
 ・昨年のインフルエンザの流行で多くの人が死亡した。
 ・交通事故で死亡する人があいかわらず多い。
[他界(たかい)する] 人ガ
  ・母にはすでに他界した兄がおりまして、私もよくかわいがってもらいました。
[逝去(せいきょ)する] 人ガ
  ・社長の奥様が御逝去なされましたことを、皆様にお知らせいたします。
[夭折(ようせつ)する]  人ガ
 ・才能ある詩人だったが、夭折したことが惜しまれる。
[殉職(じゅんしょく)する] 人ガ
  ・先週のコンビナートの火災で殉職した消防士の葬儀が行われた。
[戦死(せんし)する] 人ガ
 ・今回の戦争で戦死(を)した人は数え切れないほど多い。
 ・戦死(を)することを名誉だなどと教えた教育者たちの責任を問う。
[自殺(じさつ)する] 人ガ
 ・芥川龍之介や太宰治など、自殺(を)した作家は多い。
 ・つまらない悩みで自殺(を)するのはばかげている。
[心中(しんじゅう)する] 人ガ 人ト
 ・恋人と心中(を)するというのは、人生よりも恋のほうが価値があるという考えだ。
 ・仕事と心中(を)するくらいの気でやらないと、大きなことはできないよ。
[身投げ(みなげ)する] 人ガ (所カラ)(所ニ)
 ・古いフィルムには、断崖から身投げ(を)する女性の姿が映っていた。
 ・自殺しようと橋から海に身投げ(を)した人が漁船に助けられた話をしてくれた。

ころす(殺す)五(ころさない・ころします・ころして・ころせば・ころそう)
[1]〔人ガ  人・ものヲ〕
 △ころしたい  ころしかける  ころしてしまう  ころしてはいけない  ころしなさい
  ころさないようにする  ころされる  ころさせる  ころせ!  ころすな!
 △[しかたなく/いやいや/ためらいなく/無慈悲(むじひ)に/どんどん]~。
 △[虫/生き物/魚/犬/敵(てき)]を~。ナイフで人を~。銃(じゅう)でとりを~。
 ・殺したり、殺されたり、それが人間の歴史(れきし)だ。
 ・10人の人を殺した男がきのうつかまったそうだ。
 ・田中さんはテロリストによって殺されたにちがいない。
 ・一人殺せば、「人ごろし」、千人殺せば「英雄(えいゆう)」。
 ・戦争(せんそう)で、あいてを殺さなければ自分が殺されるという時には、人を殺すことはゆるさ
  れるのだろうか。
 ・自分はウシやブタを食べているのに「鯨(くじら)を殺すのはかわいそうだ。」と言う人々がいる。
 ・「虫も殺さない人」というのは、やさしいのか。おくびょうなのか。
[2]〔人ガ ものヲ〕
 △[才能(さいのう)/材料(ざいりょう)/もちあじ/自分]を~。
 ・日本料理は材料のしぜんな味を殺さないようにすることが基本(きほん)です。
 ・人々が息(いき)を殺してサーカスのつなわたりを見ていた。
 ・部下のもっている才能(さいのう)を生かすも殺すも、上に立つ者のやり方しだいだ。

<複合動詞:ころし->
[ころしあう] 人ガ 人ト
 ・戦争とは、人と人が殺し合うことだ。それ以上の意味はない。
 ・お互いに殺し合わなければならない理由は何もないのに、そうしたがる人々がいるのは不思議だ。
[ころしつくす] 人ガ 人・ものヲ
 ・多くのハンターがやって来て、このめずらしい動物を殺しつくしてしまった。
 ・希少動物が高く売れる毛皮のために殺しつくされ、今は博物館でしか見られない。
   最後の一匹まで 残虐に 
<複合動詞:-ころす>
[うちころす] 人ガ 人ヲ
 ・ハンターが熊を撃ち殺した。
 ・ギャングのボスが殺し屋に撃ち殺された。
   犬・オオカミ・男・女・熊・子分・鹿・鳥・山羊を  非情にも ひと思いに
[かみころす] 人・ものガ ものヲ
 ・うちの小イヌはとなりの大きなイヌにかみころされてしまった。
 ・おじいさんの思い出話を、あくびをかみ殺しながら聞いた。
   ネコ・飼い主を    おかしさ・声・言葉・笑いを
[きりころす] 人ガ 人・ものヲ
 ・敵陣に忍び込んだ暗殺者は、見つかって切り殺された。
 ・暴君に斬り殺された父のかたきを討とうと、娘が城に忍び込んだ。
   上役・家来・病人・夫婦を  一刀のもとに
[くいころす] ものガ 人・ものヲ
 ・羊がオオカミに食い殺されてしまった。
 ・食い殺したりはしないから、そんなにおれを怖がるな。
[けりころす] 人・ものガ 人・ものヲ
 ・闘牛士が牛に蹴り殺されてしまった。
[さしころす] 人ガ 人・ものヲ 
 ・父は酒をのんだ時にケンカをして刺しころされたのです。
 ・浮気をした夫を妻が包丁で刺し殺したそうだ。君も気をつけたほうがいいよ。
   夫・男・女・恋人・夫婦を  短剣・短刀・ナイフで
[しめころす] 人ガ 人ヲ 
 ・あのやろう、いつか絞め殺してやる! 
 ・店の主人は何者かに絞め殺されたらしい。 
   女・人間・猫・娘・首を  ネクタイで ひもで 両手で
[たたきころす] 人ガ 人・ものヲ
 ・ゴキブリは見つけ次第叩き殺すことにしている。ゴキブリから見れば天敵だね。
 ・弟は暴動の中で政府の軍隊に叩き殺されてしまった。
   ゴキブリ・ハエ・虫を  無造作に 見つけたらすぐ
[つきころす] 人ガ 人ヲ
 ・やぶの中から飛び出してきた獣を、やりで一突きに突き殺した。
 ・その隊長は、新兵に刀で捕虜を突き殺させたとして、戦争裁判で死刑になった。
   獣・兵隊を 刀・槍で 一突きに
[ひきころす] 人ガ 人ヲ
 ・自分の不注意で人をひき殺したドライバーが、どの程度の罪に問われるのか知っていますか?
 ・かわいそうに。車にひき殺されたらしいカンガルーが道ばたに倒れている。
   犬・ネコ・人・歩行者・老人を
[やきころす] 人ガ ものヲ 
 ・家に閉じ込められ、火をつけられて焼き殺されそうになったが、幸い大雨が降ってきた。
 ・害虫のついた枝を集めて火をつけ、害虫を焼き殺した。虫からすれば、大虐殺だ。
[とりころす]  人ガ 人ヲ 
 ・悪い霊が人を取り殺すとおどして、信者から金を取っていた男女が逮捕された。
 ・昔の人は怨霊に取り殺されることを信じていた。
<スル動詞>
[暗殺(あんさつ)する]  人ガ 人ヲ 
 ・アメリカの大統領はこれまでに何人暗殺されたのだろう? 
 ・日本の首相を暗殺しようとねらっている国はなさそうだ。
[虐殺(ぎゃくさつ)する]  人ガ 人ヲ 
 ・人類は多くの動物を虐殺してきた。
 ・戦争の中で多くの人が虐殺されてきた。
[射殺(しゃさつ)する]  人ガ 人ヲ 
 ・動物園から逃げたライオンが射殺された。
 ・相手が抵抗する場合は射殺してもよい。
[銃殺(じゅうさつ)する]  人ガ 人ヲ 
  ・捕らえたスパイはみな銃殺した。
 ・彼の叔父は戦争犯罪者として銃殺されたそうだ。
[毒殺(どくさつ)する]  人ガ 人ヲ 
 ・夫が妻を殺そうとしたがその前に妻に毒殺されたという小説を読んだ。ありそうな話だ。
 ・殺虫剤というのは、つまり虫を毒殺しようというわけだから、人間に害があるわけだ。

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