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              ◇ 変化10 ◇

[46] 切る・切れる

    切る    切り合う 切り上げる 切り落とす 切り返す 切り替える 切りかかる 
           切り替わる 切り刻む 切り崩す 切り込む 斬り殺す 切り裂く  
         切り下げる 切り捨てる 切り損なう 切り損ねる 切り揃える 切り倒す
         切り出す 切り立つ 切りつける 切りつめる 切り取る 切り抜く     
         切り抜ける 切り離す 切り払う 切り開く 切り広げる 切り伏せる   
         切りまくる 切り回す 切り分ける  掻き切る 噛み切る すり切る  
         叩き切る ねじ切る 焼き切る 
         カットする 散髪する 切断する 切開する   
   切れる  すり切れる 焼き切れる 
   断つ   断ち切る   
   刻む    刻み込む 刻みつける  切り刻む  
   途絶える 途切れる    
   断絶する    

[47] 割れる・割る 砕ける・砕く

   割れる   
   割る    割り当てる 割り入れる 割り切る 割り切れる 割り込む 割り出す  
          割り付ける 割り引く 割り振る 割り戻す  叩き割る 
   砕ける  砕け散る 
   砕く    打ち砕く かみ砕く 

[48] 破れる・破る 裂ける・裂く

   破る   破り捨てる 破り取る 叩き破る 突き破る 踏み破る  違反する  
   破れる  
   裂く    切り裂く 引き裂く  
   裂ける  張り裂ける  爆発する 破裂する   
   千切る  ちぎり取る  食いちぎる 引きちぎる  
   ちぎれる  

[49] 壊れる・壊す 崩れる・くずす つぶれる・つぶす

   壊れる  故障する 破損する 崩壊する  
   壊す    打ち壊す 叩き壊す 取り壊す ぶち壊す・ぶっ壊す  
           破壊する 破損する 爆破する  
   崩れる  着崩れる 煮崩れる  燃え落ちる 焼け落ちる 
   崩す    打ち崩す 着崩す 切り崩す 突き崩す 
   潰れる  酔いつぶれる  倒産する   
   潰す      叩きつぶす 握りつぶす 履きつぶす ひねりつぶす 踏みつぶす   
          もみつぶす  

[50] 張る

    張る  張り合う 張り上げる 張り合わせる 張り替える 張り切る 張り込む  
          張り裂ける 張り倒す 張り出す 張り付く 張り付ける 張りつめる 
            張り飛ばす 張り巡らす  貼付する 添付する  

[51] 塗る 染まる・染める 染みる

    塗る  塗り上げる 塗り替える 塗り重ねる 塗り固める 塗り込む  
         塗り込める 塗りたくる 塗り立てる 塗りつける 塗りつぶす  
         塗り直す 塗り残す   
      染まる   
    染める    
    しみる  染み込む 染み出す 染みつく 染み通る 

[46] 切る・切れる

◇きる 
  「切る」は、刃物などで力を加えてものを部分に分けること。電気的な接続などを止めること。
   人ガ ものヲ きる
    紙・ロープ・野菜を 切る   テレビ・電話・スイッチを 切る
 名詞と組み合わさって、さまざまな意味合いで使われる。
    水・波を 切る  空(くう)を切る  小切手を切る  シャッター・ハンドルを切る 
    トランプを切る  スタートを切る  先頭を切る  期限を切る  10秒を切る
    たんか・しらを 切る  十字を切る(キリスト教)   縁を切る

 「ナイフで指・手・足を 切る」は、ふつうは皮膚を切る意味になる。切り離すわけではない。
 慣用表現で「縁を切る」は人との密接な関係をやめることを表す。「手を切る」もほぼ同じだが、
仲間や仕事上のつながりなどをやめる意味が強い。「首を切る」は会社などをやめさせること。 
・複合動詞:「きり-」の形のものが多い。
  人に関わるもの
    人ト 斬り合う
   人ニ 切り返す 斬り掛かる 斬りつける     (所ニ)切り込む
   人ヲ 切り伏せる 切りまくる
 「切って~する」意味を表すもの
   切り落とす 切り刻む 切り崩す 斬り殺す 切り裂く 切り捨てる 切り揃える 切り倒す
   切りつめる 切り取る 切り離す 切り払う 切り開く 切り広げる 切り分ける
  「切り抜く」は、切って抜き取ること。 
 「切る」ことに失敗すること
   切り損なう 切り損ねる 
 「切る」意味の薄いもの。全体として(ひゆ的に)別の意味を表す。
  「切り上げる」は、物事の区切りをつけて、一応そこで終わりとすること。計算上、端数を一 
   と見なして、その上の位に加えること。自国通貨の対外価値を引き上げること。
  「切り下げる」は、自国通貨の対外価値を引き下げること。「切り上げる・切り下げる」は、刀
   を使う意味では、切る方向を示す。
  「切り替える」は、それまでやっていたこと、やり方などをやめて別のものにすること。
  「切り替わる」は、それまでやっていたこと、やり方などをやめて別のものになること。
  「切り出す」は、木材・石材などを切って運び出すこと。大切な話を話し始めること。 
  「切り立つ」は、岩山などが垂直に刃物で切ったように鋭く立っていること。 
  「切りつめる」は、不要な部分を切り取って短く、小さくすること。倹約すること。 
  「切り抜ける」は、敵の包囲を破って逃れ出ること。困難な状況から何とか抜け出すこと。 
  「切り回す」は、一つの組織のいろいろな仕事を手際よく処理していくこと。
・「-きる」の形のもの。
 切る方法を示すもの  
   ~して切る   掻ききる かみ切る 擦り切る 叩ききる ねじ切る 焼き切る
 以下の用法は「切る」の意味から離れていく。それぞれ前の動詞の項を参照。
   最後まで(完全に)~することを表す(動作的)
   押し切る 買い切る  貸し切る 使い切る 逃げ切る 走り切る 読み切る 食べきる
  すっかり~していることを表す(状態的):「-ている」の形で多く使われる。名詞修飾では「-
  た」の形が使われる。
   思い切る 閉めきる 澄み切る 苦り切る 困り切る 弱り切る 分かり切る 割り切る
    思い切った処置 閉め切った部屋 澄み切った空 苦り切った顔 分かりきった話
   はっきり、強く~することを表す
   言い切る 踏み切る 振り切る 見切る
・スル動詞「切断する」は、つながっているものを(思い切って)切ること。「切開する」は、医学的
な手術で体を切って開くこと。「散髪する」は、(男が)髪を切って整えること。「カットする」は、
切ること、減らすこと。

◇きれる 
  「切れる」は、(力が加わって)もの(の部分)が離れること。ひゆ的に、関係・効力・期限などが
終わること、その他さまざまな意味合いを表す。「ナイフが切れる」はよく切ることができること。
  ものガ きれる
   ひも・シャツが 切れる     唇が切れる  縁が切れる  町並みが切れる
   任期・保険が 切れる  ガソリン・ストックが 切れる  麻酔・薬の効き目が 切れる
   息が切れる  打球が右に切れる  しびれが切れる
 慣用表現で「頭が切れる」は、鋭い能力があること。「手が切れる」は、人とのつながりがなくな
ること。
・複合動詞「すり切れる」は、こすって切れること。「焼き切れる」は、焼かれて切れること。
◇たつ   
  「たつ」は、刃物などで切ること、続いているものを切って離すこと。具体的なものを切ることよ
りも、ひゆ的に、他人・他の組織との関係をやめることを表すことが多い。書きことば。「裁つ」と
いう表記は、裁縫で布を切る場合に使う。
  人ガ ものヲ たつ
   人との関係を絶つ  みずから命を絶った  はさみで布を裁つ
  慣用的な表現で「後を絶たない」とは、ずっとなくならないということ。「筆を絶つ」は、作家な
どが活動をやめること。
◇たちきる  
  「断ちきる」は、続いているものを切って、もうつながらないようにすること。ひゆ的に、人間関
係や精神的なことにも言う。
      人ガ ものヲ たちきる
   みれん・悪循環を 断ちきる
◇きざむ
 「刻む」は、切って細かくすること。木や石を彫って何かの形を作ること。ひゆ的に、「胸に刻む」
は、しっかり覚えておくこと。時計について「時を刻む」という表現をする。
  人ガ ものヲ きざむ / 人ガ ものニ ものヲ きざむ
   野菜を細かく刻む  石に文字を刻む    
・複合動詞:「きざみ-」の形のもの、「-きざむ」の形のものがある。
 「刻み込む」は、刻んで中に入れること。何かに字や形を刻むこと。「刻みつける」は、何かに字
や形を刻むこと。どちらも、精神的なことにも言う。
 「切り刻む」は、何度も切って細かくすること。
◇とだえる
  「途絶える」は、続いているものがそこで、またはその時、続かなくなること。
      ものガ とだえる
   人通り・連絡が 途絶える
◇とぎれる
  「途切れる」は、続いているものが途中で(しばらく)続かなくなること。感覚・記憶などにも言う。
  ものガ とぎれる
    車の列・会話・記憶・意識が 途切れる


きる(切る)五(きらない・きります・きって・きれば・きろう) 
[1]〔人ガ (ものデ) ものヲ〕
 △切りたい 切りなさい 切りすぎる 切ってある 切っておく 切ってしまう
  切ってはいけない 切らなければならない 切らないほうがいい 切らせる 切られる
  切ろうとする 切れ! 切るな! 
 △[ずたずたに/ざくざくと/すぱすぱと/とんとんとんと/ちょきちょき]~。
  [ばらばらに/ばっさり/こまかく/おおざっぱに/ていねいに/]~。
 △包丁(ほうちょう)で[やさい/にく/ハム/パン]を~。ナイフでロープを~。
  はさみで[紙(かみ)/布(ぬの)/髪(かみ)/テープ]を~。つめ切りでつめを~。
 ・子どもがナイフでゆびを切った。母親ははさみでほうたいを切った。
 ・手紙(てがみ)の封筒(ふうとう)を切る時、中のびんせんまで切ってしまった。
 ・紙を切るはさみと布を切るはさみは別にした方がいい。
 ・このナイフはよく切れるから、手を切らないように注意(ちゅうい)しなさい。(ナイフで)
 ・にわの木にのぼって、えだを切った。
 ・むかしの人は、夜はつめを切ってはいけないと言った。迷信(めいしん)らしい。
[2]〔人ガ ものヲ〕
 △[カチッと/プチッと/ガチャッと/カシャッと]~。
 △[テレビ/電気/電話/スイッチ/エンジン/シャッター/ハンドル]を~。
  [伝票(でんぴょう)/小切手(こぎって)]を~。[スタート/先頭(せんとう)]を~。
 ・あれ、ストーブのスイッチを切ったかどうか思い出せないなあ。
 ・ちょっとメモのかみをさがしますから、そのまま電話を切らないでください。
 ・社長は「ほんのお礼です」と言って10万円の小切手(こぎって)を切って、私にくれた。
 ・ふねが波(なみ)を切って進む姿(すがた)はうつくしい。
 ・選手(せんしゅ)がそろってスタートを切った。(=スタートした)
 ・100メートルで10秒を切った選手は、日本人にはまだいない。
 ・先頭を切ってゴールに入ったのは妹だった。
 ・やさいをあらったら、よく水を切っておいてください。
 ・手術代(しゅじゅつだい)の合計(ごうけい)は10万円を切ったので、たすかった。
 ・お客さん、三割(わり)も引いたら、元値(もとね)を切ってしまいますよ。
 ・きゅうにハンドルを右に切った(=まわした)のが事故(じこ)の原因(げんいん)です。
 ・姉はきゅうなカーブでハンドルを切りそこねて、自転車(じてんしゃ)ごと田んぼに落ちた。
 ・車はすごいスピードでカーブを切ってむこうへ走りさった。
 ・みなさんがお話にならないので、わたしから口を切って意見を言ってみたいと思います。
 ・この春の大学の入学試験(しけん)はP大学がきのう口火(くちび)を切った。これから三月までつ
  ぎつぎと各大学の試験がおこなわれる。
 ・クリスチャンになった姉は、ごはんの前にゆびで十字を切っておいのりをしている。
 ・兄のなげたボールはしゅっと空(くう)を切って、わたしのグローブにとびこんだ。
 △[首(くび)/手/縁(えん)/しら/たんか]を~。
 ・兄は仕事のことで、大きな失敗(しっぱい)をしたために会社から首を切られた。
 ・A:わたしはお金なんかとっていません。
  B:いつまでしらを切るんだ。見た人がいるんだぞ。
  ・悪い仲間(なかま)とは手を切りたいのだけれど、グループを抜(ぬ)けるのが難しい。
  ・あんな薄情(はくじょう)なヤツとは縁を切ってせいせいした。

<複合動詞:きり->
[きりあう] 人ガ 人ト
 ・敵と斬り合うことは避けたいので、ひとまず退却しよう。
 ・SF映画で光る刀を持って斬り合っていたのは、遠い昔への郷愁だろうか。
[きりあげる] 人ガ ものヲ
 ・もう仕事を切り上げて、帰ることにしよう。
 ・いいかげんにおしゃべりは切り上げて、作業を始めなさい。
 ・政府は外国の圧力に負けて円を切り上げた。
 ・「四捨五入」というのは、例えば3.5は切り上げて4とし、3.4は切り下げて3とすることです。
   おしゃべり・会見・為替レート・議論・残業・実験・立ち話・端数・話・予定・練習を
   この辺で 途中で いい加減に 早めに そそくさと そろそろ 適当なところで
[きりおとす] 人ガ ものヲ
 ・やさいのはじのかたいところを切り落とした。
 ・伸びすぎてじゃまになってきた枝はどんどん切り落とした。
   頭・腕・枝・片足・髪・髪の毛・首・しっぽ・爪・耳を すぱっと ばっさりと
[きりかえす] 人ガ ものヲ   人ニ
 ・海賊が切りかかってきたが、それを払いのけ、切り返した。
 ・論争の中で、相手の批判に対して、逆にその論の欠点を突いて切り返した。
 ・S字カーブが続き、何度もハンドルを切り返した。
   ハンドルを 冗談で きっぱりと 鋭く 
[きりかえる] 人ガ ものヲ (ものニ)
 ・電話をわたしのへやの方へ切り替えてください。
 ・テレビのチャンネルを切り替えた。
 ・会社の首脳陣が方針を切り替えたようだ。
   頭・ギア・気分・気持ち・スイッチ・話・ライト・話題を 卒業試験をレポートに
[きりかかる] 人ガ 人ニ
 ・相手が切りかかってきたので、刀で受け、押し返した。
   一斉に 見境なしに いきなり 猛然と 容赦なく
[きりかわる] ものガ ものニ
 ・この映画は、場面が次々と切り替わるので、話についていくのが大変だ。
 ・突然スイッチが自動的に切り替わって、器械が別の動きを始めた。
   画面・スイッチが 夏物に
[きりきざむ] 人ガ ものヲ
 ・にんじんを細かく切り刻んだ。
 ・その時、私は心を切り刻まれる思いだった。
   木・昆布・魚・神経・千代紙・動物・肉・ボール紙を メスで ずたずたに 身を
[きりくずす] 人ガ ものヲ
 ・裏の山を切り崩して、住宅地を造成している。
 ・敵の大部隊を左右から切り崩そうと試みた。
 ・会社側は、ストを続ける組合の幹部を、金を使って切り崩そうとしている。
   住民運動の一角・丘・官僚主義・組合・斜面・スト・デモ・土台・バリケード・山を
[きりこむ] 人ガ 所ニ
 ・その武士は、ただ一人敵陣の中へ切り込んでいった。
 ・こちらの論はここが弱い。相手にここに切り込まれたら、反論できない。
   敵に 敵の本陣に 真正面から 単刀直入に 鋭く 突然 
[きりころす] 人ガ 人・ものヲ
 ・敵陣に忍び込んだ暗殺者は、見つかって切り殺された。
 ・暴君に斬り殺された父のかたきを討とうと、娘が城に忍び込んだ。
   上役・家来・病人・夫婦を 一刀のもとに
[きりさく] 人ガ ものヲ
 ・男の持ったナイフが彼女のスカートを切り裂こうとしたとき、主人公が助けに現れた。
 ・絶叫が闇を切り裂いた。
   絶叫が 身体・皮・スカート・暗黒・闇・夜のしじま・二人の仲を 一気に ずたずたに
[きりさげる] 人ガ ものヲ
 ・当時、ドルに対して円が高すぎたので、大きく切り下げた。
 ・売れ行きが伸び悩んでいる。単価を切り下げて競争していくしかない。
   髪・為替レート・経費・代金・単価を 半値に
[きりすてる] 人ガ ものヲ
 ・庭木の手入れをした。枝の先のほうは切り捨て、木の形を整えた。
 ・不況の中で企業が労働者を切り捨てようとしていることを許してはいけない。
 ・集計するときは、千円未満は切り捨てて概算を出してください。 
   サービス・弱者・先端・根本・端数・非正規労働者・ムダな部分を 
[きりそこなう]
 ・カーブでハンドルを切り損ない、車をガードレールにこすってしまった。
 ・参った! パイを切りそこなって、役満を振り込んじゃった!(マージャン)
   カード・テープ・腹・ハンドルを
[きりそこねる]
 ・対向車のライトに目がくらみ、ハンドルを切り損ねて車は田んぼに落ちてしまった。
 ・つい見とれてしまって、シャッターを切りそこね、ゴールの瞬間を撮りそこなった。
   シャッター・スタート・ハンドルを
[きりそろえる] 人ガ ものヲ
 ・幼稚園の入園式で、前髪を切りそろえたかわいい女の子がいた。
 ・家の垣根の木の高さを切りそろえた。
   後ろ髪を 髪の毛・先・つめを 同じ長さに きれいに 短く 髪を肩で
[きりたおす] 人ガ ものヲ
 ・庭の木を切り倒すのに苦労した。年だなあ。
 ・開拓者は、森の木を切り倒して農場を作った。
   木・杉・大木・立ち木を 斧で チェーンソーで のこぎりで
[きりだす] 人ガ ものヲ (ものカラ)
 ・山から木を切りだして、製材する。
 ・では、座談会を始めます。まず、中村さんから話を切りだしてください。
 ・突然、妻に別れ話を切り出され、夫はどうしていいかわからなかった。
   石・希望・結婚話・言葉・質問・話・本題・用件・別れ話・話題を おもむろに
[きりたつ] ものガ
 ・森を出ると、切り立った断崖が目の前をふさいでいた。
   山裾が 垂直に 空に 険しく ~た断崖・壁・岸壁
[きりつける] 人ガ 人ニ
 ・道ですれ違ったとき、その男にナイフで切りつけられ、腕に深い傷を負った。
 ・男は、ナイフを振りかざし、やにわに切りつけてきた。
   左右から やにわに 刀を振り回して 
[きりつめる] 人ガ ものヲ
 ・杖の長さを5センチほど切り詰めたら、使いやすくなった。
 ・先月から仕事を変えたら、収入がへった。これからは暮らしを切り詰めなくてはならない。
   枝・袖を 経費・原価・コスト・小遣い・食費・生活費を 大幅に ~た暮らし
[きりとる] 人ガ ものヲ
 ・このニュースのこの部分を切り取っておいてください。
 ・事務所の壁が1メートルばかり切り取られていた。ここに新しく出入り口を作るらしい。
   胃・髪の毛・肉・ページ・皮膚を 現実・世界を 点線の所で 四角く シャープに
[きりぬく] 人ガ ものヲ
 ・幼稚園の部屋の壁には、色紙が動物の形に切り抜いて貼ってあった。
 ・新聞の記事を切り抜いて、ノートに貼っておくことにしている。
   型紙・グラビア・週刊誌・新聞記事・布地・文章を ハサミで 巧みに
[きりぬける] 人ガ ものヲ
 ・敵の中を、両手の刀を振り回して、何とか切り抜けた。
 ・会社は倒産寸前だったが、社員の努力であぶないところをようやく切り抜けた。
   危機・この場・危ないところ・困難・生死の境・難関・ピンチを 無事に
[きりはなす] 人ガ ものカラ/ト ものヲ
 ・駅で、機関車を貨物車から切り離す作業をしていた。
 ・いいですか、私の離婚問題とこの問題とは切り離して議論してください。
   腕・首・手足・肉・二つのものを・不要な部分を 二人を 社会・周囲から
[きりはらう] 人ガ ものヲ
 ・人々はジャングルの木を切り払って、土地を耕し、作物を植えていった。
 ・広大な面積の森林を切り払って牧場にしてきた結果、あたりの気象が変化した。
 ・窓に近い木の枝を切り払って見通しをよくした。
   枝・梢・木・樹木・森林・敵を 
[きりひらく] 人ガ ものヲ
 ・農民たちは森を切り開き、畑を作って生き抜いてきた。
 ・彼は、貧しい境遇の中から、何とか自分の運命を切り開いてきた。
   新しい分野・新たな地平・運・崖・活路・境地・欠陥・山野・人生・前途・道・未来を
[きりひろげる] 人ガ ものヲ
 ・妻はカーテンにあいた小さな穴をはさみで切り広げていた。何をする気なんだろう。
 ・医者は傷口を切り広げ、深く入ったガラスの破片を水で洗い流した。
[きりふせる] 人ガ 人ヲ
 ・立ちふさがる敵を切り伏せ、敵陣の奥深く入っていった。
 ・その若者は、どんな相手でも切り伏せてみせると豪語した。こういうやつの墓が裏にたくさんあ
  る。
[きりまくる] 人ガ ものヲ
 ・ヒーローは敵の大部隊の中に飛び込んで、切って切って、切りまくった。
 ・昔のチャンバラ映画の主人公は、悪者をばったばったと切りまくって、何も悩まなかった。
 ・戦場で敵を切って切って切りまくり、最後に自分も切られて死んだ。
      人を 立ち向かってくる者を 
[きりまわす] 人ガ ものヲ
 ・父が亡くなった後、母が一人で店を切り回してきた。
 ・この会社を切り回しているのは社長ではなく、常務の井上だという話だ。
   家・オフィス・会社・財界・老舗・店を  上手に 
[きりわける] 人ガ ものヲ
 ・ケーキを子供たちに切り分けた。
 ・ケーキを四つに切り分けて、小皿にのせた。
 ・肉を人数分に切り分けて下さい。
      固まり・肉・半紙・棒・野菜を 二つに

<複合動詞:-きる>
[かききる] 人ガ ものヲ
 ・刀で自分ののどをかき切り、自殺したようだ。
 ・切腹とは、刀で自分の腹を横にかききるのである。
   首・血管・のどを  腹を一文字に
[かみきる] 人ガ ものヲ
 ・この肉はかたくて、かんでもかんでもかみ切れない。
 ・舌を噛み切って自殺するという話があるが、実際にはなかなか死ねないそうだ。
   糸・舌・漬け物・爪・ひもを
[すりきる]
 ・糸ヤスリで鉄格子を擦り切って脱獄した。
   ロープを岩で ヤスリで鎖を 身代を
[たたききる] 人ガ ものヲ 
 ・道をふさぐ木の枝やツタをたたき切りながら、ジャングルを進んでいった。
 ・現地の人が長い蛇を叩き切って、串に刺し、火で焼いた。美味だという。
[ねじきる] 人ガ ものヲ 
 ・隊員が扉の取っ手に巻いてあった針金をねじ切って扉を開けた。
 ・焼いた餅を小さくねじ切って子供に与えた。のどに詰まらせるといけない。
   ナス・針金・餅を ペンチで
[やききる] 人ガ ものヲ 
 ・鉄の棒をガスバーナーで焼ききった。
 ・トランクに結ばれていた鎖は焼き切られ、書類はトランクごと持ち去られていた。
      糸・綱・鉄板・電線・ひもを

<スル動詞> 
[カットする]  人ガ ものヲ
 ・髪の毛をカットしてもらった。
 ・予算が大きくカットされた。
 ・相手チームのパスをカットして、シュートした。
 [~のカットをする]
  ・前髪のカットをしてもらった。 
[散髪(さんぱつ)する]  人ガ
 ・そろそろ散髪(を)しようと思ってから、もう2週間もたってしまった。
 ・久しぶりに散髪(を)したらすっきりした。
[切断(せつだん)する]  人ガ ものヲ
 ・コードを切断して、電流が流れないようにした。
 ・木材の両端はきれいに切断されていた。
 [~の切断をする]
  ・スイッチの切断をしないで修理を始めるのは危険だ。
[切開(せっかい)する]  人ガ ものヲ
 ・手術をして、患部を切開しなければならないと言われた。
 ・腹を切開し、たまった膿を出すのだそうだ。
 [~の切開をする]
  ・傷口の切開をして、消毒したほうがいい。


きれる(切れる) 一(きれない・きれます・きれて・きれれば)
[1]〔ものガ〕
 △切れやすい 切れそうだ 切れかかっている 切れてしまう 切れるかもしれない
 △[プツッと/プツンと/ぷっつり/すぱっと/ぴりっと/ずたずたに]~。
 △[糸(いと)/ひも/テープ/ロープ/スカート/ストッキング/ズボンのすそ]が~。
 ・荷物(にもつ)を結(むす)んであったロープが切れて、荷物がばらばらになってしまった。
 ・走っているうちに、くつのひもが切れた。
 ・堤防(ていぼう)が切れて、川のそばの家がながされた。
 △[電話/連絡(れんらく)/彼女とのつながり/絆(きずな)/縁(えん)/手]が~。  
 ・話している間に電話がきゅうに切れた。
 ・このクラスの人たちとの絆が、卒業してからも切れないことを願(ねが)っています。
 ・あの人たちとは縁が切れてしまったので、今どうしているかぜんぜん知りません。
 ・彼は、暴走族(ぼうそうぞく)の仲間(なかま)と手が切れなくて困っている。
 △[スイッチ/バッテリー/電池(でんち)/麻酔(ますい)/薬(くすり)/スタミナ/息]が~。
 ・強い電流(でんりゅう)が流れると、自動的にスイッチが切れるようになっています。
 ・ケータイのバッテリーが切れてしまったので、だれとも連絡(れんらく)できない。こまった。
 ・A:おや、スタンドがつきませんよ。
  B:おかしいですね。ああ、電球(でんきゅう)が切れていますよ。とりかえましょう。切れた球(た
   ま)はどこにすてますか。
 ・歯(は)を抜いたあと、麻酔が切れたら、痛かったのなんのって。あの医者はだめだ。
 ・30才を過ぎてから、残業(ざんぎょう)の日が続くとスタミナが切れてしまうようになった。
 ・えきから走ってきたので、息(いき)が切れた。
 △[期限(きげん)/有効期間(ゆうこうきかん)/契約(けいやく)/任期(にんき)]が~。
 ・この本はもう、貸し出し(かしだし)の期限が切れている。
 ・この証明書(しょうめいしょ)は有効期間が切れています。新しく取り直してください。
 ・契約が切れたら、再(さい)契約はしないことになっています。
 ・私の任期が切れるまであと1か月ある。その間にこの件(けん)をかたづけておきたい。
  △[ナイフ/刀(かたな)/包丁(ほうちょう)/のこぎり/頭(あたま)]が~。
 ・このナイフはよく切れる。
 ・新しい包丁を買ったら、切れすぎて、手を切りそうになった。
 ・彼女はすごい。すばらしく頭が切れる女性だ。だれもかなわない。

<複合動詞:-きれる>
[すりきれる] ものガ
 ・いつもすり切れた服を着ているあの人は、実はすごい学者だそうだ。
 ・こんな会社に長く勤めていると、心の大事な部分がすりきれてしまいそうだ。
      糸・衣類・絨毯・ズボン・ひも・軸・毛・生命・思考能力・神経・意志が
[やききれる] ものガ
 ・強い電気がながれたので、コードが焼き切れてしまった。
 ・電球が焼き切れています。


たつ(断つ・絶つ・裁つ)  五(たたない・たちます・たって・たてば・たとう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △たちたい  たってしまう  たってはいけない  たたなければならない  たてない
  たとうとする  たたせる  たたれる  たて!  たつな!
 △[いっさい/完全(かんぜん)に/きっぱりと/ぷっつり/思い切って/強く]~。
  △[鎖(くさり)/命綱(いのちづな)/未練(みれん)/悪習(あくしゅう)/退路(たいろ)]を~。
  [酒/たばこ/茶/水/女/望(のぞ)み/命(いのち)/消息(しょうそく)]を~。
  ・奴隷(どれい)とされていた人々は、自(みずか)ら鎖を断って立ち上がった。
  ・銀行(ぎんこう)が手を引いたということは、会社にとって命綱を断たれたようなものだ。
 ・酒におぼれ、アルコール依存症(いぞんしょう)となった私は、ある日、悪習を絶とうと決心した。
  ・将来に漠然(ばくぜん)とした不安(ふあん)を感じた彼は、自ら命を絶った。
 ・彼女は、有能(ゆうのう)な新人作家(しんじんさっか)としてこれからという時に、不治(ふじ)の
  病(やまい)に命を絶たれた。
 ・もう後(あと)へは引けない。自ら退路を断って、前進(ぜんしん)するのみ!
 ・ある登山者(とざんしゃ)が三日前から消息を絶っているという連絡(れんらく)があった。
 ・布(ぬの)を裁つためのはさみを「裁ちばさみ」という。
[2]〔人ガ 人ト ものヲ〕
 ・多くの国がその国とは国交(こっこう)を断っている。
 ・彼とは交際(こうさい)を絶つように親に命令(めいれい)されたが、私は従(したが)わなかった。
[慣用表現:後を絶たない]
 ・飲酒運転(いんしゅうんてん)による交通事故(こうつうじこ)が後(あと)を絶たない。
 ・いくら注意しても試験のカンニングが後を絶たないので、見つかったら即(そく)停学(ていがく)
  と決めたとたん、ぷっつりとなくなった。喜んでいいのかどうか、、、。


たちきる(断ち切る)  五(たちきらない・たちきります・たちきって・たちきれば・たちきろう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △たちきりたい  たちきってしまう  たちきらなければいけない  たちきれない
  たちきろうとする  たちきらせる  たちきれ! 
 △[きっぱりと/しっかりと/確実(かくじつ)に/はっきり/すぱっと/ぷっつり]~。
  △[綱(つな)/鎖(くさり)/絆(きずな)/未練(みれん)/悪習(あくしゅう)]を~。
  [悪循環(あくじゅんかん)/補給路(ほきゅうろ)/退路(たいろ)/非行(ひこう)の根(ね)]を~。
 ・電話線を断ち切って、通信(つうしん)を妨害(ぼうがい)した。
 ・喫煙(きつえん)という悪習を断ち切って、健康な生活を始めたい。
 ・この悪循環を断ち切らないと、日本経済は復活(ふっかつ)できないのである。
 ・海上封鎖(かいじょうふうさ)で敵(てき)の輸送路を断ち切った。
[2]〔人ガ 人ト ものヲ〕
 △[関係(かんけい)/腐れ縁(くされえん)/連絡(れんらく)]を~。
 ・隣国(りんごく)と外交(がいこう)関係を断ち切って、孤立(こりつ)の道を選んだ。
  ・悪い仲間(なかま)と(の)関係を断ち切らないと、彼は立ち直れない。   
     

きざむ(刻む)  五(きざまない・きざみます・きざんで・きざめば・きざもう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △きざみたい  きざんでおく  きざんだほうがいい  きざんではいけない  きざませる
  きざもうとする  きざめ!  きざむな!
 △[深く/小さく/しっかりと/丁寧(ていねい)に/ひそかに/丹念(たんねん)に]~。
  △[ねぎ/大根(だいこん)/ニンジン/野菜(やさい)]を~。仏像(ぶつぞう)を~。
 ・ネギを細かく刻んで、水に入れます。
 ・刻んだ野菜を皿(さら)に盛(も)りつけておきましょう。
 ・この僧(そう)は、日本中のあちこちの寺(てら)で、仏像を刻んで奉納(ほうのう)したらしい。
[2]〔人ガ ものニ ものヲ〕
  △[イニシャル/文字(もじ)/ことば/形(かたち)/紋章(もんしょう)/]を~。
  [石/木/壁(かべ)/門/石碑(せきひ)/記念碑(きねんひ)]に~。
  ・ナイフで校庭(こうてい)の木に二人の名前を刻んだ。青春(せいしゅん)の記念だ。
 ・机の表面にことばが刻んである。「授業がつまらねー」
 ・大きな石に文字が刻んであるが、すり減(へ)ってしまっていて、はっきりは読めない。
[3]〔ものガ ものヲ〕
  ・この大きな時計は、ひいおじいさんのころからずっと時を刻んできたんだ。これからもずっと。

<複合動詞:きざみ->
[きざみこむ] 人ガ ものニ ものヲ
 ・門の扉に伝統の花模様が深く刻み込まれていた。
 ・その美しい風景は彼の言葉とともに、しっかりと私の胸に刻み込まれた。
[きざみつける] 人ガ ものニ ものヲ
 ・二人は、木の幹に二人の名前をナイフで刻みつけ、あとで森の管理人に怒られた。
 ・この日の記憶を、彼は胸に刻みつけた。
><複合動詞:-きざむ>
[きりきざむ] 人ガ ものヲ
 ・にんじんを細かく切り刻んだ。
 ・その時、私は心を切り刻まれる思いだった。

とだえる(途絶える)  一(とだえない・とだえます・とだえて・とだえれば)
[1]〔ものガ〕
 △とだえそうだ  とだえてしまう  とだえてはいけない  とだえないようにする  
 △[突然(とつぜん)/ある日/ぱったり/なんの連絡もなく/いつからともなく]~。
  △[音/人通(ひとどお)り/通信/便(たよ)り/仕送(しおく)り/資金(しきん)/客]が~。
  ・姉からの連絡が先月以来途絶え、両親が心配している。
 ・台風で交通が途絶えてしまい、避難することもできなくなった。
  ・原発の事故以来、客足が途絶えてしまって、観光業はお先真っ暗だ。


とぎれる(途切れる)  一(とぎれない・とぎれます・とぎれて・とぎれれば)
[1]〔ものガ〕
 △とぎれがちだ  とぎれてしまっている  とぎれたままだ  とぎれないようにする
 △[時々(ときどき)/急に/ぷっつりと/しばらく/何度も/一時(いちじ・いっとき)]~。
  △[家並(いえな)み/おしゃべり/会話/ことば/記憶(きおく)/意識(いしき)]が~。
 ・突然、話題(わだい)がとぎれ、気まずい沈黙(ちんもく)が二人の間に漂(ただよ)った。
  ・車の列はとぎれることなく長く続いている。毎年の帰省(きせい)ラッシュの風景(ふうけい)だ。
 ・いい場面で映像(えいぞう)が途切れ、映画館(えいがかん)の中は非難(ひなん)の声があふれた。
 ・昼休みの時間は客が途切れずに次から次とやってきて、店員は大忙(おおいそが)しだ。
 ・私の事故(じこ)の記憶は、ハンドルを切ったところで途切れている。

<スル動詞>
[断絶(だんぜつ)する]  ものガ  / 人ガ ものヲ
 ・冬の間、この地方は豪雪のため、中央との行き来が断絶してしまう。
 ・伝統文化の継承が断絶しないよう、関係者が努力している。
 ・領土を巡る争いの末、両国は国交を断絶した。
 ・中世の長い期間、交易は断絶していた。

[47] 割れる・割る

◇われる
  「割れる」は、力が加わって固いものがいくつかに分かれること。比ゆ的に、人のグループが分か
れたり、違う意見になったりすることを言う。割れた結果の状態をニ格で示すことがある。
     ものガ (ものニ) われる
       皿・コップ・卵・風船が 割れる       党・票・評価が 割れる    三つに割れる
 「音が割れる」は、音が濁って聞きづらくなること。「割れるような拍手」は、音が非常に大きい
ことを言う。
◇わる
  「割る」は、力を加えて固いものを壊し、いくつかの部分に分けること。その数をニ格で示す。
   人ガ ものヲ わる
       皿・卵・窓・氷を 割る    お菓子を三つに割る  党を割る  列を割って突き進む
  ある量がある量の何倍かを求めること。そうして、等しいいくつかの部分に分けること。
    8を2で割る  残金を人数で割る
  濃い液体を薄めること。
       ウイスキーを水で割る
  基準(量)より低くなること。基準から外れること。
   ものガ ものヲ わる
    定足数・定員を 割る  大台・千円を 割る    土俵を割る
 慣用表現で、「口を割る」は、隠していた悪事などを話すこと。「腹を割って話す」は、隠さずに
本当のことを話すこと。
・複合動詞
 「わり-」の形のもの
  「割り当てる」は、全体をいくつかに分けて、人に与えたり、仕事を分けたりする。
 「割り振る」は、全体をいくつかに分け、それぞれに配分すること。
    仕事・問題を 割り当てる  担当・役を 割り振る
 「割り入れる」は、卵などを割って入れること。
 「割り切る」は、原則に基づいて(それ以外のことを考慮せず)迷いなく結論を出すこと。
 「割り切れる」は、整数どうしの割り算で、端数が余らない答えがでること。ひゆ的に、疑問が残
  らない形で片づくこと。否定の「割り切れない」の形で多く使われる。
    割り切って考える  割り切った考え方  割り切れない 思い・結論
 「割り込む」は、人と人の間に無理に入ること。人の話の途中で口を挟むこと。相場がある値段よ
  りも下がること。
 「割り付ける」は、印刷物で、組み方や字の大きさなどを指定すること。
 「割り出す」は、品物の単価などを計算して出すこと。ひゆ的に、ある根拠から一応の結論を出す
  こと。
    行列に割り込むな!  株価が1万円を割り込む  犯人を割り出す  
 「割り引く」は、決まった価格から、ある割合の額だけ安くすること。ひゆ的に、話の内容などを
  小さく考えること。 
 「割り戻す」は、一度受け取った金額の中からある割合の金額を返すこと。
 「-わる」の形のもの
   「叩き割る」は、叩いて割ること。

 ◇くだく
  「砕く」は、固まっているものに強い力を加え、細かくすること。ひゆ的に、精神的なものについ
ても言う。また、固い内容のものをわかりやすくすること。
   人ガ ものヲ くだく
    岩・氷を くだく  夢・野望を くだく  内容・表現を 砕いて説明する
 「心を砕く」は、いろいろ苦心して考えること。
・複合動詞「打ち砕く」は、打って砕くこと。「かみ砕く」は、かんで砕くことだが、ひゆ的に、難
解な内容をわかりやすくすることを言う。
       厚い城門を打ち砕く    うぬぼれ・幻想を 打ち砕く
       太い骨もかみ砕く   かみ砕いて説明する
◇くだける
  「砕ける」は、固まっているものが強い力を受けて、細かく分かれること。
     ものガ くだける
       カップ・岩・波が 砕ける
  人の態度が堅苦しくないこと。名詞修飾の形は「くだけた」が使われる。
    砕けた 態度・話し方・人
・複合動詞「砕け散る」は、砕けて散ってしまうこと。


われる(割れる)一(われない・われます・われて・われれば) 
[1]〔ものガ〕
 △われやすい  われにくい  われそうだ  われそうもない  われかけている
  われてしまった  われちゃった  われかねない  われないようにする  
  われた[ガラス/皿/かがみ/床板(ゆかいた)/氷]に気をつけてください。
 △[こまかく/こなごなに/パリッと/パリンと/バリッと/パーンと/ガシャンと]~。
 △[ガラス/コップ/タイル/鏡(かがみ)/皿(さら)/ちゃわん/電球(でんきゅう)/ 
   風船(ふうせん)/板(いた)]が~。
 ・車の窓(まど)ガラスはかんたんには割れません。
 ・このちゃわんは割れそうですね。ひびが入っていますよ。
 ・コップが棚(たな)から落(お)ちてこなごなに割れてしまいました。
 ・台風の時に割れた瓦(かわら)をとりかえてもらった。
 ・大きなガラス板に石が当たって、ガシャーンと割れた。
 ・きけんな薬品(やくひん)を入れるビンは、すぐには割れないようにじょうぶなガラスで作ってあ
  ります。
 ・こおった池(いけ)の上を歩いていたら、氷(こおり)が割れてつめたい水に落(お)ちてしまった。
 ・ゆうべ酒を飲みすぎた。頭が割れそうだ。(=とてもいたい)
 ・古いスピーカーなので、どうも音が割れてしまう。
 ・演奏(えんそう)のあと、場内は割れるような拍手(はくしゅ)がいつまでも続いた。
 △[考え方/意見(いけん)/見解(けんかい)/評価(ひょうか)/票(ひょう)]が~。
 ・この小説についての評価は、人によって割れている。(=人によってちがう)
 ・会長の選挙(せんきょ)で票が真っ二つ(まっぷたつ)に割れた。(=わかれる)
 △[身元(みもと)/正体(しょうたい)/顔(かお)]が~。(=わかる)
 ・やっとあの男の身元が割れた。
 ・こちらの正体があいてに割れないように気をつけろ。
[2]〔ものガ ものニ〕
 ・クラスの意見(いけん)が三つに割れてしまって、なかなかまとまらない。
 ・政党(せいとう)が二つのグループに割れた。(=分裂(ぶんれつ)した)
 ・宝物(たからもの)の地図(ちず)が書いてある皿が小さな破片(はへん)に割れてしまった。


わる(割る)五(わらない・わります・われて・われば・わろう) 
[1]〔人ガ ものヲ (ものデ)〕
 △わりにくい  わってしまう  わってみる  わってはいけない  わったほうがいい
  わらせる  まどガラスをわられた  わらないようにする  わろうとした  われ!  
 △[こまかく/こなごなに/パリッと/パリンと/バリッと/パーンと/ガシャンと]~。
  [たたいて/おとして/石で/手で/かなづちで/じょうずに]~。
 △[ガラス/コップ/タイル/鏡(かがみ)/皿(さら)/電球(でんきゅう)/おせんべい/
   卵(たまご)/氷(こおり)/板(いた)]を~。
 ・A:ガラスを割ったのはだれですか。
   B:すみません。わたしです。
 ・コップを落(お)として割ってしまいました。
 ・この皿は母の形見(かたみ)ですので、割らないように気をつけてください。
 ・その氷(こおり)をこまかく割ってグラスに入れてください。
 ・卵を三つ割って、卵やきを作った。
 ・兄はおせんべいをパリッと割った。
 ・冬にはこの池(いけ)の氷(こおり)を割って釣(つ)りをする。
 ・ドアのガラスはとてもじょうぶだ。割ろうとしても、なかなか割れるものではない。
 ・空手(からて)のじょうずな人は、手で石を割ることができるそうだ。
 ・ウイスキーをのむ時は、水かソーダで割ったほうがいい。
 ・おので薪(まき)を割るのはむずかしい。(=木を割って薪を作る)
 ・12を3で割ると4になる。
 ・費用(ひよう)を参加者(さんかしゃ)の人数(にんずう)で割って、はらってもらった。
 ・経費(けいひ)が余(あま)ったので、頭数(あたまかず)で割って、いくらかずつもらった。
[2]〔人ガ ものヲ ものニ〕
 △[三つに/真っ二つ(まっぷたつ)に/半分に/人数分(にんずうぶん)に]~。
 ・大きなせんべいを四つに割って、子どもたちに分けた。
 ・このおかしは二つに割ると食べやすい。
[3]〔ものガ ものヲ〕
 △[定員(ていいん)/過半数(かはんすう)/受験者(じゅけんしゃ)が1万人]を~。
 ・今月はおきゃくが少なかったので、売り上げが百万円を割ってしまった。
 ・出席者(しゅっせきしゃ)が定足数(ていそくすう)を割ったので、会議(かいぎ)をひらくことがで
  きなかった。
 ・今年(ことし)の利益率(りえきりつ)は30パーセントを割った。

<複合動詞:わり->  
[わりあてる]  人ガ 人ニ ものヲ 
 ・先生は学生に一人二題ずつ練習問題を割り当てた。
 ・それぞれが割り当てられた役割をしっかり果たせば、事業の成功は間違いない。
   金・時間・仕事・税金・当番・場所・役割・枠・寄付・一定数を 各人に
[わりいれる] 人ガ ものヲ ものニ
 ・おそばができ上がったら、どんぶりにうつして、卵を割り入れます。
  ・野菜を煮込んだ後、カレーのルーを割り入れます。
[わりきる] 人ガ ものヲ ものト/文ト 
 ・人間関係の問題は、割り切って考えたほうがいいですよ。(どうやってもうまく行かないものと)
 ・動物を殺すのも仕事と割り切ってやっているが、あまり気持ちのいいものではない。
   物事を 義務・方便と 簡単に すっぱり 最初から遊びと ~た付き合い
[わりきれる] ものガ
 ・18割る6は割り切れる。18割る5は割り切れない。
 ・今回の協会の処置はどうも割り切れない思いがする。問題を残すだけだと思う。
 ・少年犯罪の罰をどうするかは、単純には割り切れない問題ですね。
   3で~数 単純には・そう・どうにも~ない ~感情・思い・気持ち・問題
[わりこむ] 人・ものが ものニ/ヲ
 ・行列に割り込むのはよくないことです。
 ・乱暴な車が前に割り込んできた。
 ・株価が1万円を割り込んだ。    
   素人が 会話・話・仕事・関係・列・行列に 最安値・50%を 体を~せる
[わりだす] 人ガ ものヲ ものカラ
 ・残された証拠から犯人を割り出すことができるだろうか。
 ・実験のデータから、事故の原因を割り出してほしい。
   原因・購入者・収入・犯人・身元・容疑者・局名・貸出先を
[わりつける] 人ガ ものヲ ものニ
 ・有能な上司は、仕事をそれぞれ適した人に割り付けるのがうまい。
 ・スポーツ新聞の紙面は、写真をどう割り付けるかに各社の特徴が出ている。
   役割を 原稿をページに  上手に~たポスター
[わりびく] 人ガ ものヲ ものカラ
 ・年末はどこでもいろいろな商品を割り引いて売っている。
 ・定価から20パーセント割り引きます。
   手形・評価・みじめさ・自賛したい気持ちを 大幅に 少し 話を~て聞く
[わりふる] 人ガ ものヲ 人ニ
 ・仕事の量を公平に割り振るのが管理職の仕事だ。
 ・限られた資金をどの事業にどれだけ割り振ればいいか。
   仕事・資本・役を 公平に 上手に
[わりもどす] 人ガ 人ニ ものヲ 
 ・納めた商品の売れ行きがいい場合は、いくらか割り戻してくれる。
 ・費用が安く上がったので、先払いした分を少し割り戻してもらった。
      立て替えた分を 利用金額の一部を
<複合動詞:-わる>
[たたきわる] 人ガ ものヲ 
 ・消防士は雨戸を叩き割って中に入り、家族を助け出した。
 ・空手の演技で、かわらを十枚叩き割って見せた。
      雨戸・板戸・ガラス・氷・戸・脳天・瓶・ヘルメットを

くだける(砕ける)  一(くだけない・くだけます・くだけて・くだければ)
[1]〔ものガ〕
 △くだけそうだ  くだけかかっている  くだけてしまう  くだけないようにする
 △[細かく/粉々(こなごな)に/ばらばらに/かんたんに]~。
  △[石/岩(いわ)/氷(こおり)/レンガ/コンクリート/骨(ほね)/ガラス玉(だま)]が~。
  ・床(ゆか)に落ちたカップが粉々に砕け、破片(はへん)があたりに散らばった。
 ・事故(じこ)でトラックがつっこみ、、外壁(がいへき)のレンガが砕けてしまったそうだ。
  ・機械(きかい)にはさまれ、足首(あしくび)の骨が砕けてしまった。
 ・彼女が念(ねん)じると、目の前のガラス玉がくだけて散った。念力(ねんりき)だ!
 ・どんな問題も「当たって砕けろ!」という精神(せいしん)で、取り組んできた。
  △くだけた[態度(たいど)/話し方/ことば/会話/性格(せいかく)/人柄(ひとがら)]
 ・外国語では、専門的な話よりもむしろ日常のくだけた会話のほうが難しいと言える。
 ・こちらは緊張(きんちょう)していたが、社長はくだけた態度で接(せっ)してくださった。

<複合動詞:くだけ->
[くだけちる] ものガ
 ・車が衝突(しょうとつ)し、車のフロントガラスがあたりに砕け散っていた。
 ・岩に当たって砕け散る波を見ていると、体の中に力がわいてくるようだった。


くだく(砕く)  五(くだかない・くだきます・くだいて・くだけば・くだこう)
[1]〔人・ものガ (ものデ) ものヲ〕
 △くだいてみる  くだいておく  くだいてはいけない  くだかなくてはならない
  くだかないほうがいい  くだこうとする  くだかせる  くだかれる  くだけ!
 △[細かく/丁寧(ていねい)に/慎重(しんちょう)に/粉々(こなごな)に]~。
  △[石/岩(いわ)/氷(こおり)/コンクリート/相手のあご/夢(ゆめ)/野望(やぼう)]を~。
  ・砕氷船(さいひょうせん)が厚い氷を砕いて進んで行く。
 ・彼の一撃(いちげき)がチャンピオンのあごを砕き、マットに沈(しず)めた。
 ・非情(ひじょう)な現実(げんじつ)が彼女のちいさな夢を砕いた。
 ・王になろうという野望を砕かれた将軍(しょうぐん)は、現国王を深く憎(にく)んだ。
  ・先生が難しい表現をやさしいことばで砕いて説明してくれた。
  ・親はつねに子どもの健康(けんこう)に心を砕いている。

<複合動詞:-くだく>
[うちくだく] 人・ものガ ものヲ
 ・ハンマーでコンクリートの固まりを打ち砕いた。
 ・岩をも打ち砕くような波が押し寄せてきた。
 ・今回の失策で、彼の望みは完全に打ち砕かれた。
   うぬぼれ・幻想・権力・心・自信・自尊心・常識・城門・先入観・体系・戸・ドア・夢を
   根底から ハンマーで 粉々に 見事に あとかたもなく
[かみくだく] 人・ものガ ものヲ
 ・おくの歯は食べ物をかみくだくためのものです。
 ・子どもに説明する時は、やさしくかみくだいて、分かりやすく話さなければいけません。
   肉・骨・実・チョコレートを 歯で  ~て話をする   

[48] 破る・破れる 裂く・裂ける ちぎる・ちぎれる

◇やぶる
  「破る」は、薄いものや平たいものを引き裂いたり、穴を開けたりすること。ひゆ的に、抽象的な
ものの価値を無視すること、終わらせることもいう。
   人ガ ものヲ やぶる
        メモ・手紙を 破る     約束・法律を 破る      沈黙・平和を 破る
 勝負で相手に勝つこと。
    決勝戦でライバルを破る
・複合動詞:「やぶり-」の形のものと、「-やぶる」の形のものがある。
 意味は単純で、「破り捨てる」「破り取る」は、「破って~する」こと。「叩き破る」「突き破る」「踏
み破る」は「~して、破る」の意で、破る方法を示す。
・スル動詞「違反する」は、規則や法律を破るようなことをすること。
◇やぶれる
 「破れる」は、薄くて平たいものが切れたり、穴が開いたりする。抽象的なものが壊れること。
   ものガ やぶれる
        シャツ・窓ガラスが 破れる  夢・バランスが 破れる
 勝負で負けること。「敗れる」と書く。ニ格をとるが、相手と状況のどちらかを表す。
   人ガ 人・ものニ やぶれる
    決勝戦でライバルに敗れる  戦争に敗れる
◇さく
  「裂く」は、ものに強い力を加えて、直線的な切れ目を入れ、二つに分けること。ひゆ的に、二人
の人間を引き離すことにも言う。また、何かのためにあるものの一部を他の用に使うこと。
   人ガ ものヲ さく
        布を裂く  魚を割く  恋人の仲を裂く  人手・時間・予算を 裂く 
・複合動詞:「-さく」の形のもの。
 「切り裂く」「引き裂く」は、「~して、裂く」こと。人間関係についてもいう。
        皮・闇を 切り裂く  写真・恋人たちを 引き裂く
◇さける
 「裂ける」は、何かが直線的に切れて分かれること。
   ものガ さける
        紙・大地が 裂ける 
・複合動詞:「-さける」の形のもの。
 「張り裂ける」は、中がいっぱいになって裂けること。ひゆ的に、胸・心について言う。
    袋が張り裂ける  悲しみで胸が張り裂ける思い
・スル動詞
 「破裂する」は、内部からの圧力などによって勢いよく裂け、中のものが出てくること。
 「爆発する」は、化学反応などによって内部の圧力が高まり、激しく破裂すること。
◇ちぎる
 「ちぎる」は、手で力を加えて、(細かく)切り離すこと。
   人ガ ものヲ ちぎる
        紙をちぎる  入場券の半券をちぎる
・複合動詞:「ちぎり-」「-ちぎる」の形のものがある。
 「ちぎり取る」は、ちぎって取ること。「食いちぎる」は、歯でかんでちぎること。「引きちぎる」
は引っ張ってちぎること。
  なお、「-ちぎる」には、「ほめちぎる」のように「非常に~する」という用法もある。
◇ちぎれる
 「ちぎれる」は、強い力を受け、ものが(いくつかに)切れて離れてしまうこと。
      ものガ ちぎれる
        強風で旗がちぎれる


やぶる(破る)五(やぶらない・やぶります・やぶって・やぶれば・やぶろう) 
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △やぶりたい  やぶるつもりだ  やぶってやる  やぶってはいけない
  やぶってほしい  やぶられそうになった  やぶられるはずがない
 △[ビリッと/ビリビリと/バリッと/バリバリと/思い切り/力を込めて]~。
  記録(きろく)を[大きく/わずかに/ひさしぶりに/みごとに]~。
 △[紙(かみ)/手紙(てがみ)/メモ/ノート/まどガラス]を~。
 ・弟は書きかけのノートのページをびりびりと破ると、丸めてなげすてた。
 ・くぎにひっかけて、シャツを破いてしまった。
 ・どろぼうは家のうらのまどガラスを破って、そこから手を入れて、鍵(かぎ)をあけたらしい。
 △[約束(やくそく)/規則(きそく)/法律(ほうりつ)/ストライキ]を~。
 ・あの人は何度も約束を破ったので、もうだれも、あの人を信用(しんよう)しない。
 ・人をたすけるためなら、規則(きそく)を破るのもしかたがない。 
 △[型(かた)/枠(わく)/限界(げんかい)/かこみ/ディフェンス/記録(きろく)]を~。
 ・A国軍(エイこくぐん)はB国軍のかこみを破ってにげた。
 ・敵(てき)のディフェンスを破れ! シュートを打て!
 ・山田さんのつくった記録は、12年も破られませんでした。
 △[平和(へいわ)/沈黙(ちんもく)/しずけさ/静寂(せいじゃく)]を~。
 ・ストライキを破って工場(こうじょう)で働(はたら)いている人がいる。
 ・古い型を破っただけで、芸術(げいじゅつ)があたらしくなるのではない。
 ・5年間も何も書かなかった作家の山中さんが、沈黙(ちんもく)を破り、作品(さくひ
  ん)を発表(はっぴょう)した。
 ・とつぜん、森(もり)の静寂(せいじゃく)を破って、「ダーン」というライフルの音がな
  りひびいた。
[2]〔人ガ (ものデ) 人ヲ〕
 △[人/敵(てき)/強敵(きょうてき)/チャンピオン/ライバル/あいてチーム]を~。
 ・イギリスは1588年のたたかいでスペインを破った。(=スペインにかった)
 ・Aチームは5対1でBチームを破って、優勝(ゆうしょう)をきめた。
 ・市長選挙(しちょうせんきょ)で山下氏(し)は山上氏を破って、市長に再選された。

<複合動詞:やぶり->
[やぶりすてる] 人ガ ものヲ
 ・「チクショウ!」彼女ははずれた宝くじをずたずたに破り捨てた。
 ・彼は我々仲間の非婚の誓いを破り捨て、かわいい女性と結婚した。僕もしたいなあ。
   新聞・誓い・手紙・はずれ馬券・包装・メモ帳を ひと思いに
[やぶりとる] 人ガ ものヲ
 ・小包みが届いた。包装紙を破りとって、中の箱を出した。
 ・4月になった。壁のカレンダーの3月を破りとって、さて、今月の予定を書き込もう。
   包み紙・封紙・封筒の一端・包装紙を
<複合動詞:-やぶる>
[たたきやぶる] 人ガ ものヲ
 ・あんまり力を入れて叩いたので、太鼓を叩き破ってしまった。
 ・窓を叩き破って侵入してきた賊を機関銃で撃ち殺した。ゲームの中だけどね。 
      ガラス・ガラス窓・太鼓・戸・扉・パネルを
[つきやぶる] 人ガ ものヲ 
 ・暴走車はコンビニのドアを突き破って、店内に突っ込んだ。
 ・私たちは、世の中の偏見や差別を突き破って進まねばなりません。
   壁・ガードレール・ガラス戸・静けさ・沈黙・扉・フロントガラス・屋根を
[ふみやぶる] 人ガ ものヲ
 ・敵方の軍勢は竹垣を踏み破って切り込んできた。
 ・若者よ、古い世界を踏み破る気概を持って進んでゆけ。
<スル動詞>
[違反(いはん)する] 人ガ ものニ
  ・学校の規則に違反(を)した人は退学させられる。
 ▽「スピード違反をする」(話しことばでは「を」を省略できる)
   ・スピード違反をして警察につかまった。(←スピード制限に違反する)


やぶれる(破れる、敗れる)一(やぶれない・やぶれます・やぶれて・やぶれれば) 
[1]〔ものガ〕
 △やぶれにくい  やぶれやすい  やぶれがちだ  やぶれそうになる  やぶれちゃった 
 △[ビリッと/ビリビリと/バリッと/バリバリと/自然(しぜん)に/ひとりでに]~。
 △[くつした/ズボンのすそ/しょうじ/本のページ/かみぶくろ/まどガラス]が~。
  [ゆめ/つりあい/バランス]が~。
 ・このふくろはかんたんに破れます。
 ・テストの紙(かみ)が破れやすくて、強く字を書いたら、破れてしまった。
 ・ふくろが破れて、買って来たみかんがおちた。
 ・ぼろぼろに破れたふくを着た男が近づいて来て「金をくれ」と言った。
 ・大国(たいこく)のあいだの力のバランスが破れると、せんそうがおきるかもしれない。
 ・若いときは自分の会社を持とうと思っていたが、そのゆめも破れてしまった。
[2]〔人ガ (ものデ) 人ニ〕
 △やぶれるわけにはいかない  やぶれてはならない  やぶれたらたいへんだ
 △[かんたんに/あっさり/おしくも/ざんねんながら]やぶれた
 △[試合(しあい)/トーナメント/一回戦(いっかいせん)/決勝戦(けっしょうせん)]で~。
  [相手(あいて)/敵(てき)/強敵(きょうてき)/去年の優勝(ゆうしょう)チーム]に~。
 ・A国はこの戦(たたか)いでB国に敗れた。
 ・一回目の試合では勝(か)ったが、二回目の試合ではライバルに敗れてしまった。
[3]〔人ガ ものニ〕
 ・試合に敗れた(=まけた)選手(せんしゅ)たちが、さびしそうにかえって行く。
 ・恋(こい)に敗れて彼女(かのじょ)は泣(な)いている。


さく(裂く・割く) 五(さかない・さきます・さいて・さけば・さこう) 
[1]〔人・ものガ ものヲ〕
 △さいてしまう  さいてはいけない  さかれる  さこうとする  さくな! 
 △[ひどく/大きく/びりびりと/びりっと/ずたずたに/ぎざぎざに]~。
 △[紙(かみ)/きれ/服(ふく)/二人の仲(なか)]を~。
 ・紙を細(こまか)く割いて本のしおりにした。
 ・大雨や洪水(こうずい)のために交通網(こうつうもう)がずたずたに裂かれてしまった。
 ・両親(りょうしん)どうしのなかが悪かったために、二人は仲(なか)を裂かれてしまった。
 ・あなたは、あの人にわたしの悪口(わるくち)を入って、わたしとあの人の仲を裂くつもりですか。
 ・先生はわたしのためにわざわざ時間をさいて、質問(しつもん)に答えてくれた。
 ・今は特に仕事が忙(いそが)しい時期(じき)なので、そんなつまらないことに人手(ひとで)をさく
  ことはできません。
 ・どの新聞も特に紙面(しめん)をさいて、亡くなった山田先生の業績(ぎょうせき)をたたえた。
 ・突然(とつぜん)、絹(きぬ)を裂くような(=女性の高い声の)悲鳴(ひめい)が聞こえた。

<複合動詞:-さく>
[きりさく] 人ガ ものヲ
 ・男の持ったナイフが彼女のスカートを切り裂こうとしたとき、主人公が助けに現れた。
 ・絶叫が闇を切り裂いた。
   絶叫が 身体・皮・スカート・暗黒・闇・夜のしじま・二人の仲を 一気に ずたずたに 
[ひきさく] 人ガ ものヲ 
 ・ワイシャツを引き裂いて、包帯の代わりに傷口に巻いた。
 ・二人の恋は、親の手によって引き裂かれた。
   紙・布・絹・写真・手紙・恋人達を ずたずたに 真っ二つに びりびりと


さける(裂ける) 一(さけない・さけます・さけて・さければ) 
[1]〔ものガ〕
 △さけそうだ  さけやすい  さけかけている  さけてしまう  さけないようにする
 △[小さく/大きく/ぴりっと/びりっと/びりびりと/ずたずたに/ぎざぎざに]さけてしまう
 ・消しゴムで強くこすったらテストの紙がびりっと裂けてしまった。
 ・大きな本を入れようとしたら紙袋(かみぶくろ)の口が裂けてしまった。
 ・すごい地震(じしん)があったので地面(じめん)がぱっくり裂けている。
 ・雷(かみなり)が落ちて、大きな木がまっぷたつに裂けている。
 ・口が裂けても(=ぜったいに)そんなことは言えない。

<複合動詞:-さける>
[はりさける] ものガ (ものニ/デ)
 ・悲しみで胸が張り裂けそうです。
 ・お菓子を一杯に詰めた紙袋が張り裂けそうなほど膨れ上がっている。
      胸・思い・のど・袋が  胸が~思い・苦しみ 不安に胸が~そうだ 
<スル動詞>
[爆発(ばくはつ)する]  ものガ
 ・暖めると爆発するから気をつけてください。
  ・タンクの中にたまっていたガスが爆発したらしい。
[破裂(はれつ)する]  ものガ
 ・裏の畑で爆弾が破裂し、爆風で窓ガラスが粉々になった。
 ・夏の日の光でビール瓶が温められ、破裂した。
 ・うちのおじいちゃんが近所の子供のいたずらにかんしゃく玉を破裂させた。(=とても怒った)

    
ちぎる(千切る)  五(ちぎらない・ちぎります・ちぎって・ちぎれば・ちぎろう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △ちぎってみる  ちぎってもらう  ちぎってはいけない  ちぎろうとする  ちぎるな!
 △[細かく/丹念に/無造作に/ばらばらに/何十枚にも]~。
  △[紙/葉/花/脱脂綿/半券/便箋]を~。
  ・彼は手帳に電話番号を書くと、それをちぎって僕によこした。
 ・彼女は脱脂綿をちぎって傷に当て、ばんそうこうで留めてくれた。
  ・白い紙を細かくちぎって上から撒くと、雪が降っているように見える。

<複合動詞:ちぎり->
[ちぎりとる]  人ガ ものヲ
 ・係員は、入場券を受け取ると、点線のところからちぎり取った。
<複合動詞:-ちぎる>
[くいちぎる] 人・ものガ ものヲ
 ・サルは、縛ってあった縄を食いちぎって逃げたらしい。
 ・きれいな野鳥がミミズを捕まえ、足で押さえて食いちぎっている。なかなか現実的だ。
      包み・内蔵・肉・半身・ミミズを
[ひきちぎる] 人ガ ものヲ
 ・家に帰ると、机の引き出しから今日別れた男からの手紙を取りだして、一枚一枚細かく引きちぎ
  り、火をつけて燃やした。
 ・今日は貼り絵をやってみます。適当な大きさに引きちぎった色紙を、全体の色のバランスを考え
  ながら台紙に貼っていきます。


ちぎれる(千切れる)  一(ちぎれない・ちぎれます・ちぎれて・ちぎれれば)
[1]〔ものガ〕
 △ちぎれそうだ  ちぎれかけている  ちぎれないようにする  
 △[ぼろぼろに/こなごなに/ばらばらに/こまかく/いくつにも]~。
  △[紙/旗(はた)/葉(は)/本のページ/ボタン]が~。
  ・毎日の強い風のため、旗がぼろぼろにちぎれていた。
 ・大きな雲が風で少しずつちぎれていく。
 ・ふざけて取っ組み合っていたら、そでのボタンがちぎれてとれてしまった。
 ・弟(おとうと)が読んでいる新聞を取ろうと引っ張ったら、ちぎれてしまってあわてた。
 ・汽車(きしゃ)の窓(まど)で君はちぎれるほど手を振(ふ)る僕(ぼく)を見ていた。
       


[49] 壊れる・壊す 崩れる・崩す つぶれる・つぶす
 ものの形が著しく変形することを表す動詞。
 「壊れる」「崩れる」「つぶれる」と、それらに対応する他動詞「壊す」「崩す」「つぶす」を扱う。

◇こわれる
 「壊れる」は、文型としては
   ものガ  こわれる    
という文型だけで、単純な動詞である。ガ格となるものは、人間の作った機械的なものが多い。その
働きが失われることを表す。
    パソコンが壊れる   トイレのカギが壊れた     箱が壊れてしまう
 ひゆ的に、ある目標を持ったものが、その目標を果たせないようになることを表す。
    縁談が壊れた   ホルモンバランスが壊れる 
・スル動詞
 「故障する」は、人の体や機械の一部に異常が起こって、正常な働きが損なわれること。
 「破損する」は、ものの一部が目に見える形で傷つき、壊れてしまうこと。ヲ格をとる用法もある。
 「崩壊する」は、大きなものが壊れ、機能を失うこと。抽象的なものにも言う。
◇こわす
 「壊す」は、「壊れる」のガ格となるもののほか、身体について言うことがある。原因のデ格をと
る。意志的な行為と、非意志的な結果の場合とどちらもある。
   人ガ ものヲ こわす
    木箱を壊す   操作ミスで機械を壊す   働き過ぎで体をこわす
・複合動詞:「-こわす」の形のものがある。
 「打ち壊す」は、強い力で打って壊すこと。ひゆ的にも言う。「叩き壊す」は叩いて壊すこと。
「取り壊す」は、「とり」に意味はなく、建物などを壊すこと。「ぶち壊す」は「打ち壊す」を強く
言った、乱暴な表現。「ぶっ壊す」はその音変化した俗語的表現。
・スル動詞
 「破壊する」は、大きくて丈夫なものを、徹底的に壊すこと。
 「破損する」は、ものの一部を目に見える形で壊すこと。自動詞の用法もある。
 「爆破する」は、火薬を爆発させてものを壊すこと。
◇くずれる
 「崩れる」は、ある形をもったものがその形を失うこと。物理的・心理的なものなど。
   ものガ くずれる
    壁が崩れる   体調が崩れる   天気が崩れる  決心が崩れる 
・複合動詞:「-くずれる」の形のものがある。
 「着崩れる」は、着ている間に衣服の形が崩れてだらしなくなること。「煮くずれる」は、煮すぎ
て野菜や魚の形が崩れること。
 類義の複合動詞「燃え落ちる」「焼け落ちる」は、家事で建物が焼けて崩れること。
◇くずす
 「崩す」は、人の行為を示すが、意志的な場合と、非意志的な場合がある。
   人ガ ものヲ くずす
    壁を崩す   体調を崩す  
・複合動詞:「-くずす」の形のものがある。
  「打ち崩す」は、打って崩すこと。抽象的なことにも言う。「着崩す」は、衣服をわざと少し崩し
た形で着ること。「切り崩す」は、切って崩すこと。ひゆ的に、相手の組織の団結を壊すことなどを
言う。「突き崩す」は、何かで突いて崩すこと。
 「取り崩す」「持ち崩す」は、「崩す」の意味は薄くなっている。(→「とる」「もつ」)
◇つぶれる
 「つぶれる」は、形のあるものがその形を失い、特に上からの力によって平面的になることがもと
の意味だが、ものがだめになること、なくなってしまうことに広く使える。原因のデ格をとることが
ある。
   ものガ (ものデ) つぶれる
    箱がつぶれる   不景気で会社がつぶれた
    宿題で日曜日がつぶれた
◇つぶす
 「つぶす」は、道具・原因のデ格をとる。
   人ガ ものデ ものヲ つぶす
    箱を足でつぶす   投資のミスで会社をつぶす  
・複合動詞:「-つぶす」の形のものがある。
 前の動詞は、力の加え方を示す。「押しつぶす」「叩きつぶす」「踏みつぶす」など。
 

こわれる(壊れる)一(こわれない・こわれます・こわれて・こわれれば)
[1]〔ものガ〕
 △こわれやすい  こわれそうだ  こわれかけている  こわれるかもしれない
  こわれてしまう  こわれないようにする
 △[ちょっと/ひどく/めちゃくちゃに/がたがたに/ばらばらに]~。
 △[時計(とけい)/テレビ/クーラー/パソコン/自転車(じてんしゃ)/おもちゃ]が~。
  [へやの鍵(かぎ)/トイレの水洗(すいせん)/掃除機(そうじき)/エレベーター]が~。
  [話(はなし)/縁談(えんだん)/計画(けいかく)/雰囲気(ふんいき)/バランス]が~。
 ・長い間つかっていた時計がとうとう壊れてしまった。
 ・自転車のブレーキが坂道(さかみち)で壊れてしまい、止まれなくなった。こわかったー。
 ・弟は壊れたテレビをなおそうとがんばっている。
 ・このパソコンは壊れているので、そちらのをつかってください。
 ・ビタミンCは熱(ねつ)で壊れてしまうらしい。生野菜(なまやさい)でとる必要がある。
 ・長い交渉(こうしょう)を経(へ)て、せっかく話がまとまりかけたのに、大臣(だいじん)の不用意
  (ふようい)な一言(ひとこと)で話が壊れてしまった。
 ・また縁談が壊れた。男の人は、私の良いところが分からないらしい。
 ・あの男がわるいじょうだんを言ったので、それまでのいい雰囲気が壊れてしまった。

<スル動詞>
[故障(こしょう)する] ものガ 
  ・車のエンジンが故障(を)してしまった。
 ・昔の時計は故障(を)してもなんとか直せたが、今のはまったくだめだ。
[破損(はそん)する]  ものガ
 ・台風で破損(を)した窓を直していたら、その夜の恐怖がよみがえってきた。
 ・電柱に正面からぶつかり、車は大きく破損(を)したが、乗員は幸い無事だった。
[崩壊(ほうかい)する]  ものガ 
 ・大きな建物が崩壊する様子をテレビで何度も見た。
 ・現代は家族が崩壊しようとしていると言われるが、本当だろうか。
   医療・王国・会社・仮定・壁・偶像・国・経済・国家・信用・信頼・生活・政権・
   建物・組織・地域社会・バブル経済が


こわす(壊す) 五(こわさない・こわします・こわして・こわせば・こわそう)
[1]〔人ガ (ものデ) ものヲ〕
 △こわしかける  こわしたい  こわしてしまう  こわしておく  こわしてほしい
  こわさないように  こわさないでほしい  こわそうと思う  こわされる
  こわさせる  こわせ!  こわすな! こわせない
 △[うっかり/わざと/むりに]~。[少し/ばらばらに/めちゃくちゃに/ひどく]~。
 △[家/ビル/カメラ/からだ/胃(い)]を~。
  [縁談(えんだん)/話(はなし)/計画(けいかく)/雰囲気(ふんいき)]~。
 ・こどもが時計を壊してしまった。
 ・えき前のふるいビルを壊して、あとに新しいビルをつくるそうだ。
 ・古い家を壊して、あとにビルのたてることになった。
 ・不注意(ふちゅうい)でコップをおとしてこわしてしまった。
 ・子どものつくったにんぎょうを、うっかりふんで壊してしまった。
 ・どろぼうは、まどのかぎをこわして中に入ったらしい。
 ・話し合いの雰囲気(ふんいき)をこわさないように注意してください。
 ・せっかく良い縁談(えんだん)があったのに、むかしの恋人(こいびと)に壊された。
 ・A:大木さん、またコピーの機械(きかい)をこわしましたね。
  B:いや、べつに壊そうと思って壊したわけじゃないんですよ。ただ、ふつうに使っていたら、
   壊れてしまったんですよ。ほんとうですよ。
 ・わたしはわかい時、体をこわして一年ぐらい入院していたことがあります。

<複合動詞:-こわす>
[うちこわす] 人ガ ものヲ
 ・その夜の暴動で彼の店は打ち壊されてしまった。
 ・我々若者は古い思想を打ち壊し、新しい思想を打ち立てねばならない。
      機械・柵・錠前・石碑・箱・話を 手当たり次第に めちゃめちゃに
[たたきこわす] 人ガ ものヲ 
 ・暴徒は部屋の中の物を叩き壊し、貴重品を盗んで去っていった。
 ・巣を叩き壊されたスズメ蜂は怒り狂って人間たちを襲った。当然だな。
      家・巣・電球・ボート・窓・店・夢を  めちゃめちゃに
[とりこわす]  人ガ ものヲ 
 ・旧市街で古くなったビルを取り壊している。
 ・道路拡張のため、私が生まれた家は取り壊されてしまった。
      家・囲い・形・小屋・建物・飯場・病棟を ばらばらに
[ぶちこわす・ぶっこわす] 人ガ ものヲ
 ・今日はリフォーム工事の初日。まず、居間の壁をぶちこわすことから始めた。見てると 爽快。
 ・部屋に彼と二人でいたら、お母さんが紅茶を持って入ってきた。せっかくのいいムードをぶちこ
  わされて、がっかりだ。お茶なんて要らないのに。
 ・せっかく作った積み木の家をよちよち歩いてきた弟にぶっ壊された。こんなに高く積み上げられ
  るのは、幼稚園児にはそういないんだぞ。
   家・イメージ・会議・家庭・壁・関係・気分・結婚生活・芝居・チャンス・ムードを
   まとまる話・パーティー・店・夢・ルールを  もののみごとに 何もかも わざと
   家具・傘・壁・装置・窓を
<スル動詞>
[破壊(はかい)する]  人ガ ものヲ
  ・地震が多くの建物を破壊した。
 ・極限的な状況の中で、精神が破壊さてしまうかもしれない。 
[破損(はそん)する]  人・ものガ ものヲ
 ・建物に侵入し、器物を破損した罪で警備会社の元社員が捕まった。
 ・引っ越しの業者が家具をわずかでも破損しないように慎重に運び出している。
[爆破(ばくは)する]  人ガ ものヲ
 ・国連の事務所が愚かなテロリストによって爆破された。
 ・アメリカの映画は、やたらビルや飛行機を爆破したがる。幼児期のトラウマか?


くずれる(崩れる) 一(くずれない・くずれます・くずれて・くずれれば)
[1]〔ものガ〕
 △くずれそうだ  くずれてしまう  くずれないようにする  くずれさせる  くずれろ!
  △[少し/少しずつ/だんだん/いっぺんに/一気(いっき)に/見る見るうちに]~。
  [がたがたと/がらがらと/ばらばらに/あっげなく/みじめに/音を立てて]~。
 △[山/がけ/川の土手(どて)/塀(へい)/足場(あしば)/建物(たてもの)/ビル]が~。
  ・大雨(おおあめ)で裏(うら)の山が崩れそうになっているという。早く避難(ひなん)しないと。
 ・崖(がけ)が崩れて、住宅(じゅうたく)三棟(さんむね)が土砂(どしゃ)でつぶされかけた。
  ・建築現場(けんちくげんば)の足場が風で崩れ、通行人(つうこうにん)がけがをした。
 ・高層(こうそう)ビルが崩れていくのをテレビで見た。本当に恐ろしいことだった。
 △[積(つ)んであった材木(ざいもく)/トラックの積荷(つみに)/本の山/トンネル]が~。
  ・積み荷が崩れないようにしっかりとロープで固定(こてい)しなければならない。
 ・地震(じしん)でトンネルが崩れるおそれがある。
 △[調子(ちょうし)/体調(たいちょう)/バランス/均衡(きんこう)/価格(かかく)]が~。
 ・ちょっとしたことで体の調子が崩れてしまうようになった。やはり年だ。
 ・両国(りょうこく)の力のバランスが崩れたため、問題が起きやすくなっている。
 ・予想(よそう)以上の豊作(ほうさく)が原因(げんいん)で、やさいの価格が大きく崩れた。
 △[決心(けっしん)/信念(しんねん)/信頼関係(しんらいかんけい)/足並(あしな)み]が~。
 ・ちょっと批判(ひはん)されたくらいで崩れるような決心じゃ困るね。
 ・メンバーの中での信頼関係が崩れつつある。
  ・業界(ぎょうかい)の足並みが崩れており、統一(とういつ)的な規格(きかく)はできそうもない。
  △[姿勢(しせい)/服装(ふくそう)/字の形(かたち)/天気/お金/一万円札(さつ)]が~。
 ・日本舞踊(ぶよう)は、姿勢が崩れないようにするのがとても難しい。
 ・最近、食べずぎて体の線が崩れてきてしまった。モデル商売(しょうばい)はなかなか大変だ。
 ・はい、まっすぐ並(なら)んでくださいね。列(てつ)が崩れないようにしてください。
 ・午後から天気が崩れると予報(よほう)で言っていた。
 ・なんだか崩れてきそうな空模様(そらもよう)だね。
  ・この一万円札、だれか、崩れない? 
<複合動詞:-くずれる>
[きくずれる] ものガ
 ・着付けが素人だから、歩いているうちに着崩れてくる。
 ・着崩れないようにするには、いろいろとコツがあり、昔の人はそれを知っていた。
[にくずれる] ものガ
 ・長く煮ていたら、ジャガイモがぐずぐずに煮崩れてしまっていた。
 ・煮崩れたタマネギが、形は悪いけれど、なかなかいい味になっている。
   じゃがいも・玉ねぎ・栗が  とろっと ~直前で火を止める
<複合動詞:その他>                                          
[もえおちる] ものガ 
 ・武士たちは燃え落ちる城を見上げて、涙を流した。
 ・歴史ある建物が火事で燃え落ちてしまったのは、残念なことだ。
[やけおちる] ものガ
 ・村の大火事で、古いお寺も焼けおちた。
 ・時代劇で城の天守閣が焼け落ちるシーンは、何度見てもじんと来る。
      家・倉・城・建物・寺・天守閣・橋・店・屋根が 真っ黒に


くずす(崩す) 五(くずさない・くずします・くずして・くずせば・くずそう)
[1]〔人・ものガ ものヲ〕
 △くずしかける  くずしてほしい  くずしてみる  くずしてはいけない  くずせない
  くずさなければならない  くずそうとする  くずさせる  くずされる  くずせ!
 △[すこしずつ/一気(いっき)に/慎重(しんちょう)に/時間をかけて/がらがらと]~。
  [きれいに/跡形(あとかた)もなく/端(はじ)から/力を加えて/力任(ちからまか)せに]~。
  △[山/崖(がけ)/石垣(いしがき)/壁(かべ)/足場(あしば)/建物(たてもの)/ビル]を~。
  ・丘(おか)を崩して住宅地(じゅうたくち)を造成(ぞうせい)したが、大雨で一部が崩れてしまった。
 ・裏(うら)の崖が崩れる前に、一部を切り崩してコンクリートでしっかり固めた。
 ・古いビルを爆薬(ばくやく)で崩すというのをテレビで見た。乱暴(らんぼう)な崩し方だが、なか
  なかうまく崩れたのを見て、いろいろなプロがいるものだと感心(かんしん)した。
 ・せっかく作った積み木(つみき)の城(しろ)を小さな弟(おとうと)に崩された。
 △[列(れつ)/建前(たてまえ)/強気(つよき)の構(かま)え/基本姿勢(きほんしせい)]を~。
 ・列を崩さず、まっすぐ並んでいてください。
 ・あの人は頭の固い人で、ぜったい建前を崩そうとしない。もっと現実(げんじつ)を見てほしい。
 ・組合(くみあい)は強気の構えを崩さず、ストライキをしてでも要求(ようきゅう)を通そうとした。
 ・私は、何事(なにごと)にも筋(すじ)を通すという基本姿勢を崩すつもりはない。
 △[調子(ちょうし)/体調(たいちょう)/バランス/姿勢(しせい)/アリバイ]を~。
 ・あの選手(せんしゅ)はこのごろちょっと調子を崩しているみたいだね。
 ・この夏は暑(あつ)さで体調を崩してしまいました。異常(いじょう)な暑さでしたね。
 ・宮殿(きゅうでん)の守衛(しゅえい)は、暑い中、姿勢を崩さずに立ち続けているのは大変だね。
  ・過労(かろう)で精神(せいしん)のバランスを崩す正社員が増えているそうだ。
  ・綿密(めんみつ)な捜査(そうさ)で容疑者(ようぎしゃ)のアリバイを崩すことができた。
 ・書道(しょどう)が上手な人に字を崩して書かれると、読めなくて困るね。
 ・どうぞ、足を崩して楽にしてください。 (=正座をやめる)

〔ものヲ ものニ〕
 ・1万円札を5千円と千円に崩してほしいんだけど。
 ・すみませんが、この千円札、崩してもらえませんか。

<複合動詞:-くずす>
[うちくずす] 人・ものガ 人・ものヲ
 ・我がチームの打撃陣が敵の投手陣を打ち崩した。
 ・実験結果の驚くべき意外さが、教授の信念を根底から打ち崩してしまったようだった。
   雰囲気・様子・考え・守りを 敵陣・信念を
[きくずす] 人ガ ものヲ
 ・この女優さんは、着物をちょっと着崩した感じがなかなかたまらない。
 ・少し着崩すと色っぽい、なんてことはうちの家内には関係ない話だ。
[きりくずす] 人ガ ものヲ
 ・裏の山を切り崩して、住宅地を造成しているが、大雨で崩れたりしないだろうか。
 ・敵の大部隊を左右から切り崩そうと試みたが、激しい反撃にあった。
 ・会社側は、ストを続ける組合の幹部を、金を使って切り崩そうとしている。
      住民運動の一角・丘・官僚主義・組合・斜面・スト・デモ・土台・バリケード・山を
[つきくずす] 人ガ ものヲ
 ・がけ崩れで道にたまった土砂の山を突き崩しながら、我々は被災地に向かった。
 ・容器の底にあった砂糖のかたまりをフォークで突きくずした。
   地盤・岩石・勢力・信頼関係・気持ち・原則・喜び・妙な空気を 足元から


つぶれる(潰れる)一(つぶれない・つぶれます・つぶれて・つぶれれば) 
[1]〔(ものデ) ものガ〕
 △つぶれそうだ  つぶれかける  つぶれにくい  つぶれてしまう  つぶれてはこまる
  つぶれないようにする  つぶれさせる  
 △[少し/かなり/ひどく/完全に/めちゃくちゃに/グシャッと/あっというまに]~。
 △[箱(はこ)/ぼうし/筆箱(ふでばこ)/家/車/鼻(はな)/指(ゆび)/トマト]が~。
 ・電車の中でおされて、おみやげのまんじゅうがつぶれてしまいました。
 ・いなかからミカンが届(とど)いたが、段(だん)ボールの箱(はこ)がひどくつぶれ、中のミカンも
  ぐちゃぐちゃにつぶれていた。
 ・地震(じしん)で(=のために)家がつぶれ、死にそうになった。
 ・土砂(どしゃ)くずれで隣の家がメリメリとつぶれていく音を聞いた時はほんとうにこわかった。
 ・田中さんはびんぼうで、今にもつぶれそうな家にすんでいる。
 ・けんかをしてひどく殴(なぐ)られ、鼻がつぶれてしまった。
 ・もう少しで機械(きかい)にはさまれて指がつぶれるところだった。
 △[会社/店/工場/銀行/大企業(だいきぎょう)/組織(そしき)/組合(くみあい)]が~。
 ・不景気(ふけいき)で会社がつぶれた。(=倒産(とうさん)した)
 ・バブル崩壊(ほうかい)の教訓(きょうくん)は、大企業でもつぶれることがあるということだ。
  ・会社の巧妙(こうみょう)な圧力(あつりょく)で組合がつぶれそうになっている。
 ・たとえ我々の組織はつぶれようとも、我々の信念は変わらずに残り、歴史を変えていくのだ。
 △[時間/ひま/休日/休み/一日]が~。
 ・つまらない用事で一日がつぶれてしまった。
 ・せっかくの日よう日が火事さわぎでつぶれてしまった。
 ・退職(たいしょく)したあとは、趣味(しゅみ)がないと毎日の時間がつぶれなくて困るそうだ。
 △[夢(ゆめ)/チャンス/計画(けいかく)/予定(よてい)/試合(しあい)]が~。
 ・最後の試験に落ちてしまい、これで弁護士(べんごし)になるという夢は完全につぶれた。
 ・雨でハイキングの予定がつぶれた。(=中止になった)
 ・あなたの失敗(しっぱい)のために、今回の計画全体がつぶれてしまったんですよ。
 △[顔(かお)/面目(めんもく)/面子(めんつ)/肝(きも)/胸(むね)]が~。
 ・社員(しゃいん)の大きなミスのために会社の面目(めんもく)がつぶれた。
 ・飛行機(ひこうき)がきゅうに大きくゆれたので、肝(きも)がつぶれた。
 ・胸(むね)がつぶれるほど悲(かな)しい。
 ・大きな声で応援(おうえん)をしていたら、のどがつぶれてしまった。(=こえが出なくなった)
 ・「食べ物を大事にしないと目がつぶれます(=見えなくなる)よ。」とよくおばあさんに言われた。

<複合動詞:-つぶれる>
[よいつぶれる] 人ガ 
 ・弘は宴会で飲み過ぎて酔いつぶれてしまった。 
  ・この人はがんがん飲んで、すぐ酔いつぶれて寝ちゃうんだよね。
<スル動詞>
[倒産(とうさん)する]  ものガ
  ・会社が倒産(を)したが、何とかほかの会社に就職できた。
 ・経営していた工場が倒産(を)しそうになったが、友人の援助に助けられた。


つぶす(潰す)五(つぶさない・つぶします・つぶして・つぶせば・つぶそう) 
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △つぶしたい  つぶしかける  つぶしてしまう  つぶしておく  つぶしてある
  つぶしてはいけない  つぶさなくてはならない  つぶそうとする  つぶされる
 △[ひどく/おもいきり/グシャッと/ペチャンコに/ひらたく/のんびり]~。
 △[あき箱(ばこ)/あき缶(かん)/ぼうし/小屋(こや)/家/車]を~。
 ・あき箱はじゃまになるから、つぶしましょう。
 ・いちごをスプーンでつぶしていたら、しるが服(ふく)についてしまった。
 ・子どもにぼうしをつぶされた。
 ・靴(くつ)のかかとをつぶしてはくのは、どう考えてもみっともない。
  △[にわ/畑(はたけ)/指輪(ゆびわ)]を~。
 ・にわをつぶして勉強部屋(べんきょうべや)を作った。
 ・あの畑(はたけ)をつぶして工場を建(た)てる計画(けいかく)があるそうだ。
 ・金(きん)の指輪がゆびに合わなくなったので、つぶしてブローチにしてもらった。
 △[会社/工場/銀行/組合(くみあい)/団体/政党(せいとう)/組織(そしき)/国]を~。
  ・社長の判断(はんだん)ミスが会社をつぶしてしまったことになる。
  ・組織をつぶすのはかんたんだ。だが、そのメンバーの志(こころざし)をつぶすことはできない。
 ・こんな政党はつぶしてしまえばいいんだ。
 ・あの首相(しゅしょう)は国を潰そうというつもりなのか。
 △[計画(けいかく)/夢/望(のぞ)み]を~。
  ・トップに立つという夢をライバルにつぶされた。
  ・あの人は他人のたわいもない夢をつぶすのが趣味(しゅみ)みたいなところがある。
 △[時間/暇(ひま)/一日/休みの日/休憩(きゅうけい)時間]を~。
 ・休講(きゅうこう)のために時間があいたから、パチンコでもして、時間をつぶして来よう。
 ・ひまをつぶすために公園(こうえん)へ行ってみた。
 ・一日つぶして(=つかって)あちこちさがしたが、いいアパートが見つからなかった。
 ・貴重(きちょう)な青春(せいしゅん)の時間をムダな事でつぶさないようにしよう。
 △[顔(かお)/面目(めんもく)/肝(きも)/声]を~。
 ・オリンピックの柔道(じゅうどう)で金メダルを外国にとられてしまったので、日本は面目をつぶ
  して(=はじをかいて)しまった。
 ・私は学会でわかい学者に論文(ろんぶん)のまちがいを指摘(してき)されて、面目をつぶされた。
 ・あの男のためにすっかり顔(かお)をつぶされた。
 ・前を走っていた車がきゅうにブレーキをかけたので、ぶつかるかと思って、肝(きも)をつぶした。
  (=とてもこわかった)
 ・大きな声を出して応援(おうえん)をしたので、声をつぶしてしまった。(=こえが出なくなった)

<複合動詞:-つぶす>
[たたきつぶす] 人ガ ものヲ 
 ・アルミニウムのパイプを叩きつぶしてひらたくした。
 ・敵の作戦は、工場を叩きつぶすのが目的だ。
   蚊・蜂の巣・店・ライバル会社・組織・希望・願い・相手の論を 完全に
[にぎりつぶす] 人ガ ものヲ
 ・彼女は、缶ジュースの空き缶を手で握りつぶした。 
 ・折り紙のふねを母に見せようと思って、手で持って走ったら、うっかり握りつぶしてしまった。
 ・われわれの要求は課長に握りつぶされた。
   トマト・棺・手紙・遺書・袋・命令・メッセージを ことごとく 一切
[はきつぶす] 人ガ ものヲ
 ・毎日たくさん歩くので、すぐ靴を履きつぶしてしまう。
 ・我が家の物置には、履きつぶされた靴が捨てられないまま残っている。
   靴・スニーカー・タイヤを 一年で
[ひねりつぶす] 人ガ ものヲ 
 ・幼稚園の男の子が、粘土の小さな玉を指でひねりつぶして見せた。なぜ男は自分の力を誇示した
  がるのだろう?
 ・今日の試合は負けてしまったが、今度戦うときは相手をひねりつぶしてやる。
   虫けら・ニキビ・悪党・蛆・提案・敵を 指先で ひとつまみに
[ふみつぶす] 人ガ ものヲ
 ・小学生がチョウを捕まえて踏みつぶしている。相当ストレスがたまっているんだろう。
 ・彼女の純真な気持ちを踏みつぶすようなことはするな。
   靴の踵を 帽子・花壇・蝶・望み・気持ちを  牛・馬・象に踏みつぶされる
[もみつぶす] 人ガ ものヲ
 ・満員電車でもみつぶされそうになった。
 ・会社の上層部が事件をもみつぶしたという噂だ。

[50]張る・貼る

◇はる
 「はる」は、他動詞の用法と自動詞の用法がある。他動詞のヲ格をとる用法から。
 平らなものを他のものに、ぴったりとノリでつけたり、打ち付けたりすること。たるみなく広げた
り延ばしたりすること。
   人ガ ものニ ものヲ はる
    壁にポスター・ビラ・タイル・板を 貼る
    幕・金網を 張る  ロープを張る    弓に弦を張る
  何かを受け入れるために、構えを設けること。
    店・祝宴・論陣を 張る     クモが巣を張る
  水を(ひろい)入れ物に満たすこと。
       おけ・浴槽に 水を張る  
 (内の力が現れ出て)何かを伸ばし広げること。ひゆ的に、強い態度を取ること。
   人・ものガ ものヲ はる
    木が根を張る  胸・肩・ひじを 張る  勢力を張る 
    意地・強情・見栄・欲・向こうを 張る  
 人を見張ること。金をかけること。(平手で)強く叩くこと。
   人ガ 人・ものヲ はる
    犯人を張る  相場を張る  思いきり顔を張る
 自動詞の用法。内にあるものが強く盛んに外に現れること。
   ものガ はる
    木の根が張る  気・欲が 張る  
 固く、圧迫感を感じること。「値が張る」は価格が高いこと。
    肩・腹・乳が 張る  値が張る 
 一面に広がること。
   ものニ ものガ はる
    池に氷が張る  (温めた)牛乳に膜が張る  クモの巣が張っている
 慣用表現で「山を張る」は、試験などでここが問題として出るだろう、という予想をすること。
・複合動詞:「はり-」の形のものが多い。具体的な動作のものと、ひゆ的な意味も表すものがある。
 具体的に「貼る/張る」こと
 「張り合わせる」は、二つのものを張って合わせること。
 「張り替える」は、古くなったものを取り去って、新しいものを張ること。
 「張り出す」は、何かの外側に(一部が)突き出ること。紙・札などを人目に付くところに張って人
  に見せること。
    板・ガラスを 張り合わせる  壁紙を張り替える  優秀者の名前を張り出す
 「張り付く」は、ものの面と面とがぴったりついて離れなくなる。比ゆ的に、人がある人や場所か
  ら離れないでいること。
 「張り付ける」は、紙や布などを広げてノリやピンなどで他のものにつけること。コンピュータで
  コピーまたは切り取ったデータを別の場所につけること。ひゆ的に、人をある目的のために一定
  の場所にいさせること。
 「張り巡らす」は、回りをくまなく囲むように張ること。 
    ヤモリが壁に張り付く  記者が大臣に張り付く  アルバムに写真を貼り付ける
    回りにロープ・幕を 張り巡らす
 強く緊張すること   
  「張り合う」は、(力のほぼ同じもの同士が)同じ目標に向かって競争すること。   
 「張り上げる」は、できるだけ大きな声を上げること。
 「張り切る」は、ゆるみがなく、ぴんと張ること。ひゆ的に、何かをしようという意欲が十分ある
  こと。
    兄弟で張り合う  大声を張り上げる  気持ちが張り切る  張り切って参加する
 「張り裂ける」は、袋などが中がいっぱいになって裂けること。比ゆ的に、強い感情が胸にいっぱ
  いになって耐えられなくなること。
 「張りつめる」は、隅から隅まで一面に張ること。比ゆ的に、非常に緊張すること。
    紙袋が張り裂ける  胸が悲しみで張り裂けそうだ
       壁にポスターを張りつめる  張りつめた空気・雰囲気・気持ち
 叩くこと
 「張り倒す」は、平手で強く打って倒すこと。
 「張り飛ばす」は、平手で強く(相手が飛ぶほど)打つこと。
    いやなヤツを張り倒す  いたずらした子どもを張り飛ばす
 その他
 「張り込む」は、台紙などに張ってつけること。あることのために思い切って大金を使うこと。警
  官などが犯人の現れそうな所で待つこと。
    結婚式に大金を張り込む  刑事がアパートに張り込む
・スル動詞
 「貼付する」は、紙片などをノリで貼り付けること。
 「添付する」は、書類などにその補足となるものを付け加えること。


はる(貼る・張る)五(はらない・はります・はって・はれば・はろう)
[1]〔人・ものガ もの・所ニ ものヲ〕
 △はってみる  はってほしい  はってある  はってはいけない  はらなければならない
  はらないでほしい  はろうとする  はらせる  はられる  はれ!  はるな! 
 △[ぴったり/一面(いちめん)に/全体に/じょうずに/きたなく/べたべたと]~。
 △[タイル/板(いた)/切手(きって)/ポスター/ビラ]を~。
 ・食堂の入り口(いりぐち)にこのポスターを貼りたいのですが、いいですか。
 ・この薬(くすり)のビンには、ラベルが貼ってない。
 ・ここにある手紙にみんなこの80円切手を貼ってください。
 ・若いころ、壁(かべ)に世界地図を貼っていつも眺(なが)めていた。
 ・電柱(でんちゅう)にビラなどを貼ってはいけない。
 △[根(ね)/網(あみ)/綱(つな)/ロープ/勢力(せいりょく)]を~。
 ・大きな木がしっかりと地中(ちちゅう)に根を張っているので、斜面(しゃめん)がくずれない。
 ・あの木とこの木の間にロープをはって、洗った物を干(ほ)しましょう。
 ・山に網(あみ)を張って、鳥をつかまえる人がいる。
 ・犬がうちの庭(にわ)に入らないように金網(かなあみ)を張ったが、ネコはへいきで入ってくる。
 ・夜ねる時には、ふろおけに水をはっておきます。
 ・農家(のうか)の人が田に水を張ろうとしているが、水不足(みずぶそく)で十分な水がない。
 ・ホームページを作って、多くのサイトにリンクを張ってみた。
 ・Jカンパニーグループは、おもに関西(かんさい)に勢力(せいりょく)を張っている。
[2]〔人ガ ものヲ〕
 △[胸(むね)/見え/強情(ごうじょう)/意地(いじ)/気]を~。
 ・人の批判(ひはん)など気にするな。胸を張って堂々(どうどう)としていなさい。
 ・ああいう人たちが見えを張って高いものを買ってくれるから、デパートがもうかるんだ。
 ・そんなに意地を張ってどうするんだ。いいかげん仲直(なかなお)りをしろよ。
 ・日本史の試験(しけん)で、明治維新(めいじいしん)が出るだろうと山を張ったら、当たった。
 ・母に思いきり顔を張られて、自分がまちがっていたことに気づいた。
 ・刑事(けいじ)たちが犯人(はんにん)の隠れ家(かくれが)を張っている。
[3]〔所ニ ものガ〕
 ・ゆうべはとても冷えたので、一晩(ひとばん)で池に氷(こおり)が張った。
 ・温(あたた)めた牛乳(ぎゅうにゅう)の表面(ひょうめん)に膜(まく)が張った。
 ・枝(えだ)の間にクモの巣(す)が張っていて、通れない。
[4]〔ものガ〕
 △[肩(かた)/ひじ/腹(はら)/値(ね)/欲(よく)/気]が~。
 ・長い時間ワープロをうったので、肩(かた)がはる。
 ・よい品物(しなもの)は、やはり値が張るね。
 ・あの人は本当に欲が張った人だ。
 ・気温(きおん)は低かったが、気が張っていたのでぜんぜん寒く感じなかった。

<複合動詞:はり->
[はりあう] 人ガ ものヲ 人ト
 ・わたしは、こどもの時から一つ上の兄と張り合ってきた。
 ・そんな小さなことで友だちと張り合うのは、バカバカしい。
   人と ごろつきが 意地を 女を 木が根を 事ごとに 台頭に 精一杯
[はりあげる] 人ガ ものヲ 
 ・おじいさんが声を張り上げて民謡を歌っている。
 ・大声を張り上げて船の上の弟に向かって叫んだ。「がんばれよー!」
   声・しゃがれ声を 帆を 一段と ひときわ 風に負けまいと大声を
[はりあわせる] 人ガ ものヲ ものト
 ・何枚かの広告紙を張り合わせてふすまを作り、「芸術」と称したが家族には不評だった。
 ・2枚のガラスを張り合わせてあるので、丈夫で、防音効果も優れています。
   板・破れ目を 鉄板とアルミ板を
[はりかえる] 人ガ ものヲ 
 ・こんどの休みの日は、かべがみを張り替えることにしています。
 ・事務所のポスターが貼りかえられていた。「24時間働こう!」冗談言うな。
   障子・絆創膏・襖・アスファルト・ネットを
[はりきる] 人ガ
 ・かならず優勝するといって、選手はみんな張り切っています。
 ・最初からあんまり張り切らないほうがいいぞ。
 ・新しいプロジェクトにみな気持ちが張り切っている。
   気持・全員が 神経・乳房が 極度に 必要以上に やたら 新しい仕事に
[はりこむ] 人ガ ものニ 
 ・張りこんで、娘に一万円もこづかいをやった。
 ・犯人をつかまえるために、刑事がおおぜい張り込んでいる。
   張り込む:刑事・私服が   貼り込む:写真・手紙を
[はりさける] ものガ
 ・悲しみで胸が張り裂けそうです。
 ・お菓子を一杯に詰めた紙袋が張り裂けそうなほど膨れ上がっている。
   胸・思い・のど・袋が  胸が~思い・苦しみ 不安に胸が~そうだ
[はりたおす] 人ガ 人ヲ
 ・子どもが言うことをきかないので張り倒してやった。
 ・あの憎らしい顔を思い切り張り倒してやりたい。
   相手・頬・ほっぺた・向こうっ面を  札びらで 一発
[はりだす] 人ガ ものヲ ものニ
 ・大学は麻薬事件で退学となった学生の名前を正門前の掲示板に張り出した。
 ・太平洋高気圧が大きく張り出しています。
   枝・頬骨・雲・高気圧・半島が 広告・答え・ビラ・日除けを 壁・玄関に
[はりつく] 人・ものガ 人・ものニ
 ・ヤモリが壁に貼りついている。
 ・新聞記者が大臣に張り付いて、特ダネを狙っている。
   ズボンが足に お面・表情が顔に 氷・疑惑・視線が ガラス・脳裏・皮膚に
   Tシャツが肌に 背筋に恐怖が 紙が額に 気配が体の周りに べったり しつこく
[はりつける] 人ガ ものニ ものヲ
 ・アルバムに写真を貼り付けた。
 ・先生がくれたプリントは、ノートに貼り付けておいた。
   切手・お札・紙・写真・布・ポスター・レッテルを 糊で壁に 人を仕事に
[はりつめる] ものガ
 ・壁にいろいろなポスターを貼りつめた。
 ・ペナルティキックの一瞬、グラウンドの空気は張り詰めていた。
 ・試合前の、この張り詰めた雰囲気が好きなんだ。
   糸・膜・気・気持・全身の神経・心が 神経・パネル・芝生を 緊張で
   あたりに 極度に ぴんと 力が全身に  ~た生き方・気分・声・沈黙・表情 
[はりとばす] 人ガ ものヲ
 ・子どもが友だちにけがをさせたというので、ほっぺたを張り飛ばしてやった。
 ・子どもの頃はいろいろいたずらをして、よく親父に張り飛ばされた。
   顔・頬・向こうっ面を 札で 容赦なく
[はりめぐらす] 人ガ ものヲ 所ニ
 ・交通事故のあった所のまわりには、ロープを張り巡らしてあった。
 ・さくらの木の下に幕を張り巡らし、その中でお茶の会をやっている。
      網・網の目・アンテナ・糸・垣根・金網・国旗・支店網・針金・伏線・幕
   電線・ロープ・罠を 至る所に ここかしこに 縦横に 広く 偽装が~れる
<スル動詞>
[貼付(ちょうふ・てんぷ)する]  人ガ ものヲ ものニ
 ・履歴書には写真を貼付すること。
  ・印紙が貼付されていないと、受け付けられません。
[添付(てんぷ)する]  人ガ ものヲ ものニ
  ・メールに図表を添付しましたので、ご覧下さい。
  ・申込書には必ず受験料の領収書を添付すること。

[51]塗る 染まる・染める 染みる

◇ぬる
  「塗る」は、ものの表面に、主に液状のものを広くつけること。面をヲ格またはニ格で表し、つけ
るものをデ格またはヲ格で示す。形容詞/名詞が結果を表す文型がある。
   人ガ ものヲ ものニ ぬる
    壁を塗料で塗る  塗料を壁に塗る  口紅・おしろいを 塗る
    床を青く/真っ青に 塗る
 慣用表現で「(人の)顔に泥を塗る」は、人に恥をかかせること。
・複合動詞:「ぬり-」の形のものが多い。「塗る」という元の意味が保持されているものが多い。
  「塗り上げる」は、全部塗ること。
 「塗り替える」は、(前に塗ったものを)新しく塗り直すこと。(大きく)変えること。
    壁を真っ白に塗り上げる  壁を青く塗り替える  記録・勢力図を 塗り替える
 「塗り重ねる」は、一度塗った上にまた塗ること。「塗り固める」は、(厚く)塗って固めること。
 「塗り込む」は、たっぷり塗ること。「塗り込める」は、中に入れるように塗ること。ある所にも
  のを固定するように厚く塗ること。上から塗ってそのものを見えなくすること。
       色を塗り重ねる  壁を塗り固める  クリームを肌に塗り込む  
    土台のひびにセメントを塗り込める  壁に石やガラスを塗り込める
 「塗りたくる」は、やたらに塗ること。「塗りたてる」は、おしろいなどをやたらに塗ること。
       絵の具を顔に塗りたくる  おしろいで真っ白に塗り立てる
 「塗りつける」は、しっかりつくように塗ること。ひゆ的に、罪や責任を他人のせいにすること。
       塀にペンキを塗りつける  責任を人に塗りつける(=なすりつける)
 「塗りつぶす」は、元の色などが見えなくなるまで全部塗ること。ひゆ的に、一面が全部そればか
  りになること。
       キャンバスを真っ黒に塗り潰す  紙面は選挙結果で塗りつぶされていた
 「塗り直す」は、もう一度塗ること。「塗り残す」は、まだ塗っていないところがあること。
    古くなった屋根を塗り直す  隅を塗り残す
◇そまる
 「染まる」は、(色が中にしみこんで)色が付くこと。ひゆ的に、好ましくないことの影響を受け
てしまうことをいう。原因となるものまたは結果を表すニ格をとる。形容詞を受ける。
   ものガ ものニ そまる
        布が 色・染料に 染まる  血に染まったシャツ  夕日に赤く染まった山肌
    茶色に染まる(結果)  赤く染まる
   人ガ ものニ そまる
    悪に染まる  特定のイデオロギーに染まる
◇そめる
  「染める」は、ものに(色をしみこませたり、塗ったりして)色を付けること。結果をニ格で示す。
 形容詞を受ける。
   人・ものガ ものヲ (ものニ) そめる 
    布を茶色に染める  髪を赤く染める  夕日が雲をピンク色に染めている
    頬を赤く染める
  慣用表現で「手を染める」は、何かの仕事を始めること。
◇しみる
 「染みる」は、液体などが他のものの中にゆっくり広がるようにして入っていくこと。何かが刺激
して痛いように感じること。ひゆ的に、精神的なことにも言う。
・複合動詞
  「染み込む」は、内部まで深く染みていくこと。
 「染み出す」は、内部の液体が外に少しずつ染みて出てくること。「染み出る」も同じ。
 「染みつく」は、汚れや悪習が染み込んでとれなくなること。
 「染み通る」は、内部まで深く染みて広がっていること。


ぬる(塗る)五(ぬらない・ぬります・ぬって・ぬれば・ぬろう) 
[1]〔人ガ もの・所ニ ものヲ〕
 △ぬりたい  ぬりなさい  ぬりかける  ぬってしまう  ぬっておく  ぬってある
  ぬってはいけない  ぬらなければならない  ぬろうとする  ぬれ!
 △[すこし/たっぷり/べっとり/べとべとに/べたべた/じっくり/ていねいに]~。
 △[バター/色(いろ)/おしろい/ペンキ/絵具]を~。
 ・お嫁(よめ)さんは、顔(かお)におしろいをまっしろに塗っている。
 ・パンにバターを塗る時はこのバターナイフを使ってください。
 ・月一度ぐらいは、靴(くつ)に靴クリームを塗った方がいい。
 ・ニスを塗れば、このイスはできあがりだ。(このイスに)
 ・ここに緑(みどり)を塗りなさい。
 ・ここに赤い色(いろ)を塗ってはどうでしょうか。
 ・さあ、色えんぴつで地図(ちず)に色を塗りましょう。
 ・母が傷口(きずぐち)に薬(くすり)を塗ってくれた。
 ・大きなハケで障子紙(しょうじがみ)にノリを塗った。
 ・小さなハケでハゲに薬を塗った。
 ・おまえはものを盗(ぬす)んで親のかおに泥(どろ)を塗った。(=恥(はじ)をかかせた)
[2]〔人ガ (ものデ) ものヲ〕
 ・そこはこの蛍光塗料(けいこうとりょう)で塗ってください。夜、光るように。
 ・絵(え)の海の部分を青で塗るのではつまらない。赤で塗ろう。
 ・白いペンキで壁(かべ)を塗らせた。
 ・天気の良い時をえらんで壁を塗ります。(=壁を作る)
〔人ガ ものヲ い形-く/な形・名詞-に〕
 △[赤く/黄色(きいろ)く/茶色(ちゃいろ)く/白く/美しく]~。
  [黄色に/茶色に/緑(みどり)色に/ピンクに/きれいに]~。
 ・このお寺(てら)の柱(はしら)は赤く塗られている。
 ・天井(てんじょう)は空を思わせるように青く塗ろうと思う。
 ・ここの壁(かべ)は緑色に塗ってください。
 ・ホールの壁は色とりどりに鮮やかに塗られていた。

<複合動詞:ぬり->
[ぬりあげる] 人ガ ものヲ
 ・ホールの壁は一面に青く塗り上げられ、魚の群が描かれていた。
   表・パステル・極彩色・感情を
[ぬりかえる] 人ガ ものヲ 
 ・かべをしろく塗りかえることにした。
 ・彼女はこれまでの記録を次から次へと塗り替えていった。
   壁・看板・部屋・ペンキ・防腐剤・世界記録・勢力図を 次から次へと
[ぬりかさねる] 人ガ ものヲ
 ・ここの部分に薄く青を塗り重ねると、空と山の色がいい感じになりますよ。
 ・絵の具を何重にも塗り重ねて、対象の質感を出そうと試みた。
   色・絵の具・塗料・ニス・ペンキ・コールタールを
[ぬりかためる] 人ガ ものヲ 
 ・あの人の人生はウソで塗りかためられている。お父さんが社長だというのも、留学したことがあ
  るというのもみんなウソだったんだわ。
 ・穴の入り口はセメントで塗り固められ、入れないようになっていた。
   壁・内部・入り口・瓦を  漆喰で
[ぬりこむ] 人ガ ものニ ものヲ
 ・皮膚ががさがさになってしまったので、クリームをたっぷり塗り込んだ。
   薬・クリーム・化粧品・膏薬・軟膏を べたべた
[ぬりこめる] 人ガ ものニ ものヲ 
 ・かべに仏像が塗りこめてある。
 ・この部屋は、さまざまの色ガラスを塗りこめた壁が美しい。 
 ・キャンバス上の海の色に、この夏の私たちの思い出を塗り込めた。
   絵の具・コンクリート・土を 思い・心を 厚く 一色に
[ぬりたくる] 人ガ ものニ ものヲ 
 ・そんなにえのぐを塗りたくっては絵がだめになる。
 ・子供がパンにジャムを塗りたくって、うれしそうな顔をして食べている。
 ・口紅を赤く塗りたくった女たちが立っている。
   絵の具・白粉・油・クリーム・ジャム・石鹸・口紅・ペンキ・ポマードを
[ぬりたてる] 人ガ (ものニ) ものヲ 
 ・そんなに化粧品を塗りたてたって、元が元だからねえ、どうにもならないよ。
 ・看板を俗悪な色で塗りたてたホテルが並んでいる。
   漆を 看板を 俗悪な色で けばけばしく ごちゃごちゃ
[ぬりつける] 人ガ ものニ ものヲ
 ・体中に泥を塗りつけた人たちが集まってきた。変なお祭りだなあ。
 ・ずいぶん厚く絵の具を塗りつけた絵だね。絵の具代がかかったろうなあ。
   絵の具・オイル・白粉・口紅・石鹸・泥・バターを たっぷりと 一面に
[ぬりつぶす] 人ガ ものヲ 
 ・とちゅうまでかいた絵をぜんぶ白で塗りつぶしてしまった。
 ・ある詩人は、植民地となった国を、苦い気持ちを持って黒く塗りつぶした。
 ・ある朝事務所に行ってみると、私の名札は白く塗りつぶされていた。
   表面・地図・カレンダー・壁板・顔・名前・背景を ペンキで まっ黒に
[ぬりなおす] 人ガ ものニ ものヲ
 ・家の外壁を白く塗り直した。(外壁に白いペンキを) 
 ・汗で化粧が落ちたので、おしろいを塗り直した。
   白粉を 外壁・物置を 真っ赤に 
[ぬりのこす] 人ガ ものヲ
 ・今日は壁の一部を塗り残してしまった。明日塗るつもりだ。
 ・最後の作品となった塗り残されたキャンバスに、画家の無念の思いが表れているようだ。


そまる(染まる)  五(そまらない・そまります・そまって・そまれば)
[1]〔もの・人ガ ものニ〕
 △そまりそうだ  そまりかける  そまっていく  そまってしまう  そまってはいけない
  そまらないようにする  そまらせる  そまるな!
 △[少しずつ/いくらか/うすく/うっすらと/深く/あざやかに/まだらに/美しく]~。
  △[色/染料(せんりょう)/血(ち)/夕日/青い光]に~。
  [悪(あく)/悪い考え/危険(きけん)な思想(しそう)/偏(かたよ)ったイデオロギー]に~。
  ・白い布(ぬの)が鮮(あざ)やかな青色に染まった。
 ・朝早く起きて、朝日に染まったヒマラヤの山々をながめていた。
 ・血に染まった彼のシャツを見て、何が起こったのかと思ったが、たんなる鼻血(はなぢ)だった。
 ・国民が特定(とくてい)のイデオロギーに染まってしまうことは、大変危険なことだ。
 ・親は、自分の子どもが悪に染まらないように注意してほしい。


そめる(染める)  一(そめない・そめます・そめて・そめれば・そめよう)
[1]〔人ガ ものヲ〕
 △そめたい  そめてみる  そめてしまう  そめないほうがいい  そめようとおもう
  そめられる  そめるな! 
 △[少し/うすく/うっすらと/あざやかに/美しく/真っ赤(まっか)に]~。
  △[布(ぬの)/髪(かみ)/毛/爪(つめ)/歯(は)/空/山/景色(けしき)]を~。
  ・この布を青く染めて、浴衣(ゆかた)にしたいと思う。
 ・髪を染めるのはいいけれど、あんまりへんな色にしないでね。
 ・爪をピンクに染めた女性が食べにくそうにカニを食べていた。
 ・昔の女性は、結婚すると歯を黒く染めた。
 ・夕日(ゆうひ)が空を真っ赤に染めている。
 ・色とりどりに染められた秋の山を散策(さんさく)した。


しみる(染みる)  一(しみない・しみます・しみて・しみれば)
[1]〔ものガ ものニ〕
 △しみていく  しみてしまう  しみてはこまる  しみないようにする  
 △[少し/深く/うっすらと/ゆっくり/じわじわと/ひりひり]~。
  △[インク/におい/しょうゆ/雨/煙(けむり)/薬(くすり)/寒気(かんき)/恩(おん)]が~。
  ・シャツにしょうゆが染みてしまった。
 ・ダイコンにだしの味がよくしみていておいしい。
  ・タバコのにおいが服に染みてしまってとれない。
 ・乾(かわ)ききった地面(じめん)に久しぶりの雨が染みていく。
  ・足元(あしもと)の砂に海水が染みてきた。
  ・冷たいものが歯(は)にしみるようになってきた。歯医者に行かないと。
 ・薬が傷口(きずぐち)に染みてとても痛い。
  ・年をとった親(おや)を見ると、親のありがたさが身(み)に染みる思いがする。
  ・災害(さいがい)にあった時は、人の心の温(あたた)かさが心に染みた。
  ・今年は朝の寒気が特に身に染みる。年をとったせいだろうか。

<複合動詞:しみ->
[しみこむ] ものガ ものニ
 ・この大根、だしがしみ込んでいて、いい味だねえ。
 ・煮物は、長い時間をかけて、ゆっくり味をしみこませることが大切だ。
      味・汗・雨・愛情・思い・香り・悲しみ・寒気・苦労・心遣い・寒さ・匂い・水・汚れ・冷気
   ・酒が  毛穴から 靴の中へ 骨・体の芯まで 砂・全身・脳に
[しみだす] ものガ ものカラ
 ・母の作った煮物(にもの)をゆっくりかむと、じわーっと味が染み出してきて、たまらない。
  ・壁から水が染み出してきた。中の配水管に穴が空いてしまったらしい。
[しみつく] ものガ ものニ
 ・しょうゆをこぼしたら座布団に染みついてしまった。
 ・昔の貧しい金銭感覚が染みついていて、高いものが買えない。
      匂い・口紅の色が・苦労の跡・貧乏・思い出・習慣・保身の術が 心・身に
[しみとおる] ものガ ものニ
 ・風の冷たさが骨までしみ通ってくる。
 ・心の底までしみとおるような、いい味の酒だ。
   香り・悲しみ・恐怖・声・言葉・寂しさ・寒さ・優しさが 体・心・傷に

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