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まえがき                                                                           (1998.8.31)


 この本は日本語の文法の本です。
 日本語というと、万葉集や源氏物語などの古代の言葉も、日本の各地で話されている方言も、みなすべて日本語ですが、この本で扱えるのは現代日本の東京の言葉だけです。
 そうする理由は、現代東京方言が言語学的に他の方言より重要だというわけではありません。現在の共通語になっているため、日本語教育で中心的に教えられる方言であり、また現代の文章語の基本になっているということによります。

 文法とは、文を作るための法、つまり規則のことです。
 日本語ができるということは、日本語を聞き、話し、読み、書くことができるということですが、その人の頭の中には、日本語を正しく理解し、使うためのさまざまの知識がつまっています。文法の規則もその中の一つです。

 この本は、現代日本語の文法をできるだけわかりやすく、体系的に説明しようとする本です。
 この本の大きな特徴は、日本語教育を強く意識した文法書だということです。日本語学習者が日本語の文法を少しずつ身につけていくためにはどんな文法記述が必要なのだろうか、ということを考えながら書きました。つまり、日本語教育のための実用文法でもあることをめざしました。
 そのため、日本語教科書によくみられる、いわゆる「文型」の積み上げ方式にしたがって文法事項を説明していくことにしました。学習がやさしい、基本的な文型から、だんだん複雑な文型へと進みます。また、最初の予備的な説明は別として、初めから「文」を扱います。

 この本は、読者として、日本語教育に関心のある、まとまった文法の知識のない人、を想定しています。例えば、中学・高校で国語の文法(国文法・学校文法)をいちおうは習っていても、わかった気がしなかった、そしてまた、英語の時間に英文法を習い、その用語をいくつか記憶しているが、国語の文法との共通点および相違点がよくわからない、というような人です。
 これまでにもいくつかの優れた文法書が出版されていますが、それらを読んでも難しくてわからなかった人、あるいは記述が短くて物足りなかった人、そのような人たちにも満足してもらえるように、と思って書きました。

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